時間操作×弾幕STG『Chronal Chain』はスロー、時間停止、巻き戻しと“やりたい放題”。しかしシビアで爽快だった、TGS2025試遊レポ

時間操作×弾幕STG『Chronal Chain』TGS2025試遊レポートをお届けする。

「あと一撃でボスを倒せたのに」「ほんの数ミリ避けられたら」……そんな後悔を、ゲームで経験したことがある人は多いだろう。Anarch Entertainmentの手がける『Chronal Chain』は、その“もしも”をやり直せる弾幕シューティングだ。対応プラットフォームはPC(Steam)。

プレイヤーは時間を操り、敵の攻撃をスローにしたり、世界を停止させたり、あるいは時を巻き戻すこともできる。聞けばまるで“チート”のようだが、実際に触れてみると、爽快感とともに焦りがある。時間を止めても、死ぬときは死ぬ。無敵の力を与えられたはずなのに、なぜか苦しい。その「万能感と焦燥感の連鎖」に、本作の真髄がある。

今回、弊誌は東京ゲームショウ2025で『Chronal Chain』を試遊する機会に恵まれた。本稿では試遊で感じた、爽快でシビアな弾幕体験をお届けする。

強力だけど万能ではない。時間を操る3つの力

『Chronal Chain』は弾幕シューティングゲームだ。ソロプレイに対応。舞台は遥か遠い未来。荒廃した世界にぽつんと佇む都市では、千年以上のあいだ不死の女王が支配していた。女王の圧政を止めるべく、二人の英雄が自由を取り戻すための戦いに身を投じる。

本作では、時間そのものを操るアーティファクト「Chronal Chain」を使った、3つのアクションを駆使して弾幕を突破していく。それぞれの能力は強力だが、どれも明確なリスクを抱えており、「時間操作が前提」の絶妙な難易度設計が貫かれている。

まず、ゲーム中もっとも多用するのが「スローダウン」。これは時間の流れを遅くし、敵弾を避けやすくする効果を持つ。高密度な弾幕をすり抜ける感覚は心地よく、初心者にとっても頼もしい存在だ。しかし、発動中は能力発動に必要な「カイロスゲージ」の増加効率が落ちる。つまり、使えば使うほど次のチャンスが遠のき、追い詰められやすい構造になっている。そのため敵の攻撃が比較的優しい瞬間はスローを解き、早くカイロスゲージを貯めるといった状況判断が必要だ。プレイヤー側で弾幕の速度を切り替えながら進むという構成が、通常のシューティングゲームとは違う独特のリズムを生んでいる。

次に「ストップ」。これは時間を完全停止させる能力だ。発動中は自機が動かない限り一切敵の弾も動かないので、手を止め、じっくりと次の動きを考えることも可能。スローダウンでは対応しきれない入り組んだ弾幕や、画面端に追い詰められたピンチで発動し、針の糸を通すように回避。そのまま復帰して敵を撃破するなど、本作の醍醐味といえる全能感のある体験が得られる。

また、ストップは被弾時にも発動し、攻撃を無効化したうえで時間を止められる。発動条件を満たす限りは何回でも発動できるため、いわば自機のバリアにもなっているのだ。一度被弾しても呼吸を整えて続きができる、初心者救済的な意味合いもある。だが、ストップ発動時はカイロスゲージを一定量消費し、発動中は動くたびにカイロスが減っていく。0になると強制解除されてしまうため、後先考えずに使っているといきなり通常の速度に戻って被弾してしまうこともある。

被弾時は「パラドックス」という危険値が増加。パラドックスがカイロスより高いとストップが発動できないため、被弾するたびに一撃死のリスクが上昇していく。弾幕を止める快感の裏で、ゲージの残量とパラドックスの上昇に怯える──“止まった時間の中で焦る”という、奇妙な感情が芽生える。敵弾を凍らせて優位を取れるが、使いすぎれば自分の存在が破綻する。まるで時間を止めた“責任”を問われているような、シビアな感覚だ。

そして、プレイヤーの使える中で最強の能力が「リワインド」だ。敵や弾幕の位置を巻き戻すことができるのだが、発動中は自由に動けるうえに、弾に当たっても被弾しない。完全に弾幕に囲まれた絶体絶命の状況すら“なかったこと”にできるという、チート的な能力だ。時にはおあつらえ向きに超高密度の弾幕が出てくることもあり、リワインドを小刻みに多用すれば、瞬間移動のようにスマートに回避できる。まさに時を操る実感を得られる、高揚する瞬間だ。

一方で、リワインドはもっとも扱いが難しい能力でもある。巻き戻し中もステージ上の弾幕は動き続けるため、動いた先が安全とは限らない。巻き戻しすぎれば、先ほど避けた弾幕に再び襲われることになる。順行と逆行、常に2つの時間軸を考えながら動く複雑な思考が求められる。また、発動中はパラドックスが増加していく。パラドックスが高まるほどストップ発動のハードル=一撃死の危険性が高まり、100%に達してしまうと強制解除になる。眼前に迫った死を回避できるが、背後に別の死が音を立てて迫ってくる——そんな緊張感に縛られる。

これら3つの能力が絡み合うことで、本作のプレイ体験は極めてユニークなテンポを持つ。プレイヤーは時間を操りながらも、常に“時間の支配”から逃れられない。危機を脱するはずの能力が、使いすぎれば新たな危機を呼び寄せる。万能と表裏一体の不自由さ。 それが『Chronal Chain』のゲームデザインを貫くテーマである。

リスクと快感が連鎖する「チェインカウンター」の中毒性   

『Chronal Chain』を象徴するもう一つのシステムが、「チェインカウンター」だ。ストップ発動中に敵弾をギリギリで避けることでカウントが上昇し、解除時にその数に応じて大ダメージを与える。複数の敵を一掃することもできるその仕組みは、いわば“リスクを取るほど強くなるパリィ”のようなものだ。

弾幕が激しければ激しいほど、カウンターの爆発力も上がる。だが同時に、敵の弾に近づくリスクも増す。ギリギリを攻めるほど快感が増し、欲を出すと一瞬でやられる。このバランスが絶妙で、プレイヤーはいつのまにか「避ける」ではなく「ギリギリを攻める」ことを求めてしまう。安全よりもスリルを取りたくなる設計が、本作の独特なテンポを決定づけている。

息の止まるようなピンチで時を止め、ギリギリでチェインカウンターを発動。敵を一掃し安堵の息が漏れる。一連の体験はまるで危機と快感を繰り返す“呼吸”のようであり、いつしかこのリズムが癖になってくる。この「プレイヤーの精神とゲームのテンポが同期する感覚」こそが、本作の中毒性の正体だろう。

“危機と快感”が反転し続けるプレイ体験

『Chronal Chain』を遊んでいると、プレイヤーは常に危機と快感の境界を行き来する。被弾やリワインドを繰り返してパラドックスゲージが100%に達したとき、プレイヤーはスローダウン以外の能力を封じられる。だが、その極限状態でカイロスゲージを100%まで貯め、ストップを発動できれば死の淵から生還し、そのままチェインカウンターで反撃に転じることもできる。いつやられてもおかしくない焦りと、一転して攻勢をかける爽快感。2つの感情が常に反転しながら連鎖していく。

そして、ストップとリワインドを併用すれば、さらに異様な緊張が生まれる。時間停止とリワインドの無敵を重ねれば、弾幕を安全確実に回避し、別の未来へと滑り込める。しかしそれは、カイロスとパラドックス双方を大量に消費する“超ハイリスクハイリターン”の行為。少しでも手順を誤れば、ゲージが尽き、即座に時間の支配権を失う。だがこの操作が成功したときの感覚は格別だ。まるで時間という鎖を力ずくでねじ曲げているような陶酔に包まれる。この“ヒリヒリとした緊張と快感のループ”こそが、『Chronal Chain』のプレイ体験を形づくっている。

強大な力の後にリスクが迫りくる、“バタフライエフェクト”的感覚

『Chronal Chain』の軸にあるのは、強力な時間操作能力で危機を脱する快感と、後から重くのしかかってくるリスク。少しの行動の積み重ねが大きなチャンス、あるいは決死のピンチにつながる「バタフライエフェクト」のような感覚だ。

試遊版では、最初から難易度選択が用意されており、シューティングゲーム初心者でも挑戦しやすい設計になっている一方で、上級者向けには高密度の弾幕を前に“時間管理”を極める高難度プレイも用意されている。現時点ではキャラ選択はなく、敵キャラクターや背景はシンプルだが、一般的な弾幕シューティングとは一線を画す時間操作のシステムは、現時点でもクオリティが高く、大きな可能性を感じさせた。

『Chronal Chain』は、時間操作という万能の力を与えながら、プレイヤーの少しの油断を許さない。時間を止め、巻き戻し、また進めながら、自分自身の限界を測る。その過程で感じる焦燥と快感の連鎖が、プレイヤーの心を縛り上げて離さない。ブラッシュアップを重ねた正式リリース時にはどのような時間を味わうことができるのか、期待したい。

『Chronal Chain』はPC(Steam)向けに2026年12月発売予定。ゲーム内は日本語表示に対応する。正式リリース時には5つのステージ、武器性能の異なる2種類のキャラが実装予定だ。

なお、5月におこなわれた本作のKickstarterキャンペーンはすでに目標金額を達成しているものの、引き続きリワード(特典)の選べるプレッジ(支援)が可能だ。気になる人はキャンペーンページをご確認いただきたい。

Yusuke Sonta
Yusuke Sonta

『Fallout 3』で海外ゲームに出会いました。自由度高めで世界観にどっぷり浸れるゲームを探して日々ウェイストランドをさまよっています。

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