『メタファー:リファンタジオ』&『ペルソナ5 X』発表会レポート。住職の本良敬典氏による「リアル回転説法」パフォーマンスやLyn氏による生歌披露など”アトラス”らしさ満載の華やか披露会


時は9月25日、 東京ゲームショウ2024開幕の数日前。この日、品川プリンスホテルでは『ペルソナ5:The Phantom X』の発表会、および『メタファー:リファンタジオ』の完成披露会となる「ATLUS TGS2024 MEDIA BRIEFING」が行われていた。この度筆者はご招待をいただき、参加する運びとなったため、会場の様子をお伝えしていきたい。

会場となったのは品川プリンスホテル内のクラブeXだ。メディア関係者を迎え入れるのはスーツ姿のセガ・アトラス社員の方々で、エントランスには赤いカーペットと高級そうな内装と、まるで『龍が如く』に出てきそうな会員制クラブやコンサート会場といった様相。だが、あくまで行われるのはゲームの発表会。エントランスホールに飾られた、今後発売予定の関連グッズや、フィギュアの原型がそれを物語っていた。


メインステージは赤い照明と共に『ペルソナ5』のBGMが流れており、準備万端の様子。筆者は開始までの待ち時間のあいだ、事件の香りのする妖しい雰囲気に二階の緞帳裏やステージの下からゲストが出るんじゃないか、などと妄想していた。だが、自分は仕事で来た身であり、遊びに来たわけではない。会場の空気に呑まれぬよう息を整えなおし、イベント開始まで今日の段取りを確認していた。


前半行われたのは『ペルソナ5:The Phantom X』(以下、『P5X』)の発表会だ。『P5X』は『ペルソナ5』の世界観を下地にしつつ、新たなストーリーやキャラクター、システムを取り入れた新作RPG。主人公は学園生活を送りつつ、世界から失われつつある欲望を取り戻すべく「シャドウ」との戦いに身を投じてゆく。現在は海外向けにスマホ/PC向けにサービスが展開されている。

まずステージに登場したのは司会の松澤ネキ(松澤千晶)氏。『P5X』を意識したであろう赤と黒のドレスが印象的だ。そして松澤氏に続いて登壇したのが『P5X』のスタッフ。ペルソナシリーズ統括プロデューサーの和田和久氏、『P5X』チーフプロデューサーの宇田洋輔氏、開発プロデューサーの松永純氏、運営ディレクターの酒井祐太氏、そして『P5X』に登場するルフェルの声を担当する野中藍氏の5人だ。イベントでは 『P5X』の日本展開の決定も発表された。対応プラットフォームはiOS/Android/PC(Steam/Google Play Games)を予定している(関連記事)。ちなみに、後日開催された東京ゲームショウ2024では日本ゲーム大賞2024のフューチャー部門を受賞している。

発表会ではストーリーや登場人物、キャンペーンのアナウンスなど、情報の大部分は宇田氏が紹介し、部分的に松永氏と酒井氏が担当するという形が取られた。宇田氏からは緊張感こそ伝わらなかったものの、話し終わるたびにホッとしたような表情をしているように思えた。人前で話す機会が多いであろう和田氏が、合間でコメントを挟む余裕を見せたことも、そう感じられた理由の一つかもしれない。『P5X』のチーフプロデューサーとして、今回の発表会は宇田氏の大舞台ともいえるだろう。その重圧を想像すると、心の内で宇田氏を応援しないわけにはいかなかった。

発表会を締めくくったのは、『ペルソナ5』シリーズにおける楽曲のボーカリストを務めるLyn(稲泉 りん )氏によるライブパフォーマンス。『P5X』の楽曲である「Ambitions and Visions」「Wake Up Your Hero」と『ペルソナ5』の「Life Will Change」が披露された。力強い声からくるパワフルな歌唱は圧巻の一言だ。舞台袖の登壇者席では、発表会をつつがなく終えられた解放感だろうか、登壇していた開発メンバーは曲に合わせて手拍子をしていた。

ライブパフォーマンスが終わると登壇者の全員が退場し、後半に向けて準備が開始された。開場に合わせて海外メディアや一般参加者も続々と入場し、ほとんどの席が人で埋まっていった。


後半に行われたのは『メタファー:リファンタジオ(以下、メタファー)』の完成披露会だ。『メタファー』は完全新作のファンタジーRPG。舞台は8つの種族が暮らすユークロニア連合王国だ。国王が凶刃に倒れ、勃発した王位争奪戦に主人公は参加することとなる。敵の弱点を突くとプレスターンバトルや、バトルスタイルに合わせて変更できるアーキタイプ、仲間との交流やランダムイベントが発生する鎧戦車(がいせんしゃ)による遠征などが特徴だ。本作は「女神転生でもペルソナでもない」と銘打たれて制作されており、ワールドツアーと称して世界各地でイベントをしたり、テレビCMを打つなど開発にも宣伝にも力が入っている作品だ。

完成披露会のオープニングを飾ったのは、本良敬典氏によるライブパフォーマンス。本良氏は長現山妙常寺の現役住職であり、『メタファー』に使われる一部BGMにおいて経文を読み上げるような歌唱を提供している。また、本良氏はジャズバンド“南無ジャズ・エクスペリメント”のボーカルでもあるとのことで、実力は折り紙つきだ。住職とは思えない気迫に、会場には張りつめた緊張感が漂っていた。ライブ後には「きちんとお唱えできてよかった」とコメントし、丁寧にお辞儀して去るなど、打って変わって穏やかなお坊さんらしい振る舞いをしていたのが印象的だ。


ライブ終了後にはMCのマフィア梶田氏と磯村知美氏の二人が、そして続いて本作のディレクターを務める橋野桂氏、キャラクターデザインの副島成記氏、音楽を担当する目黒将司氏の三人が登壇。マフィア梶田氏と磯村氏が三人の聞き手になる形でトークは進行し、いずれも過去に『ペルソナ』シリーズや『真・女神転生』シリーズといった人気シリーズに関わってきたベテランスタッフだけあって、『メタファー』に込められたクリエイティビティにまつわるさまざまな話が飛び出した。マフィア梶田氏による15分ほどの実機プレイもあり、こちらの様子はアトラスの公式YouTubeチャンネルで放映された生放送から確認されたい。そしてイベントでは『メタファー』体験版が当日に配信開始することも発表された(関連記事)。突然のサプライズのような発表には、会場も盛り上がりを見せていた。


イベントの締めくくりにはふたたび本良氏が歌唱を披露。さらにライブ中には、後日のTGS会場にも訪れた公式コスプレイヤーの方々もステージに上がってポーズを取っていた。美男美女が練り歩くなか、険しい顔をしたお坊さんがステージ上で回転しながらお経を唱えるという、かっこいいながらもシュールな光景だ。SNSでは『女神転生』シリーズに登場する悪魔「だいそうじょう」に本良氏のパフォーマンスをなぞらえて、「リアルだいそうじょう」「リアル回転説法」だとする声も上がっていた。


スタッフが締めの挨拶をし、公式生放送の映像が終了したあとには、”偶然会場を訪れていた”という平成ノブシコブシの吉村崇氏がサプライズ登場。あっという間に会場の注目を集めて場を盛り上げていた。フォトセッション後にはなぜか代表質問として吉村氏へのミニインタビューも行われたため、質疑応答の一部を紹介しておきたい。

──本作では主人公が王様を目指す選挙に巻き込まれるというストーリーです。吉村さんがお笑い芸人の王を決める選挙に出るとしたら、どんなマニフェストを掲げますか?

吉村崇氏:

今は吉本興業が凄くクリーンになっていますので、私が王であるならば昔の吉本興業に戻したいですね。(ギャラの)9:1を復活させようと思います。悪の王として君臨して、暗黒のお笑い界に戻します。マニフェストは吉村9、タレント1。これです。

──本作では主人公が国民の支持を得るために世界中を旅します。吉村さんの中で思い出に残っている旅はありますか?

吉村崇氏:

世界はめちゃくちゃロケで行きました。ガスマスクをつけて有毒ガスの出る台湾の温泉街に行ったり、ニュージーランドの有毒ガスが発生してるところだったり……。ニュージーランドのところは歩ける場所で、落ちたら230℃の場所だから落ちないでくださいと注意されたり。そんななかでもアフリカのマリ共和国。ここはやっぱり刺激的でしたね。クルーが渡航して入った瞬間に外務省から注意喚起が出たり、パスポートにマリ共和国のスタンプがあるのが珍しすぎて、日本の空港でスタッフに驚かれたり。まさに「お笑いの旅」として、思い出に残ることばかりです。


まだ国内向けの展開が発表されたばかりの『ペルソナ5:The Phantom X』と、10月11日に発売が迫る『メタファー:リファンタジオ』。両作の展開には今後も注目してゆきたい。