『アークナイツ:エンドフィールド』クローズドベータテストは、前回テストから“内容が激変”していた。1年を経て大きく見直された「旅情感」と「奥行き」

GRYPHLINEは1月17日より『アークナイツ:エンドフィールド』のクローズドベータテストを実施している。本稿ではクローズドベータテストのプレイを経て確認できた、昨年実施されたテクニカルテストからの変化を中心に紹介していく。

パブリッシャーのGRYPHLINEは1月17日より『アークナイツ:エンドフィールド』(以下、エンドフィールド)のクローズドベータテストを開始している。筆者は昨年の同時期に開催されたテクニカルテストにも参加していたため、1年間を経て『エンドフィールド』がどう変化したのか、その違いを中心に語っていきたい。なお、プレイ時間は25時間程度。テクニカルテストで倒しきれなかったボス「トリアンゲロス」を打倒し、その次のボスを打倒。第一章終了までの進行度となる。以降の文章では前回のテストを「テクニカルテスト」、今回のテストを「ベータテスト」と記載する。

アークナイツの名を関してはいるがわかりやすく入りやすい世界観

プレイヤーは「管理人」と呼ばれる伝説の存在。タロIIの危機が起こると呼び覚まされる存在だが、現在過去の記憶を失っている。管理人はエンドフィールドの監察官であるペリカという女性とともにタロIIの問題を解決する旅に出ることとなる。ここまでプレイした限りでは、テクニカルテスト時とはストーリーが変化しており、管理人の記憶を取り戻すよりはタロIIの住民を救うため周辺のトラブルを解決していくことを優先しており、騒ぎが一段落ついたところで管理人の記憶を取り戻そうという流れになっている。テクニカルテスト時に存在した『アークナイツ』プレイヤー向けのファンサービス要素は相対的に減少しているように思えたが、作中の用語や登場人物で『アークナイツ』を思い出させるところに変化はない。ただ、ストーリーに陰鬱さは感じられず、未開の大陸で懸命に生きる人達を手助けする善人一行、という印象が非常に強い。

テクニカルテストの際は英語版のみでのプレイだったが、ベータテストでは字幕およびキャラクターの会話も日本語となり、システム画面もすべて日本語化されている。このため、当然ながら大いにプレイが捗った。ストーリーを追いかけるだけなら英語でも大まかには追いかけられるが、システム周りの用語にはテクニカルテスト当時苦戦させられた記憶がある。

冒頭のイベントシーン。ストーリーが日本語で読める喜び。


テクニカルテスト時に感じた、「探索と戦闘に建築要素を加えて他のゲームとは異なる楽しみを作ろうとしている」狙いに変わりはないと思えた。ただし、当然それぞれの内容においてベータテストでは改良、追加された要素が大変多い。前回同様「探索」「戦闘」「建築」について説明していきたいと思うが、その中でも「戦闘」「建築」の要素は追加部分が多くなっており、必然的に説明する量が増えている。

エリア切り替えを意識させられずオープンワールドらしさが増した探索要素

探索についてだが、テクニカルテスト時はエリア切り替え式となっており、各エリアはそれなりに小さくまとまっている印象があった。一方ベータテストにおいてはかなり広い範囲をシームレスに歩くことができており、ほぼオープンワールドものと言っても過言ではない作りになっている。

フィールドを歩き、あちこちに存在する裂け目に入って経験値アイテムや武器の突破アイテム等を稼ぎ、アイテムを拾うという体験に大きな変化はない。ただし、テクニカルテストでは中央のマップにしかなかった拠点が「サブ拠点」という名目でエリアごとに存在しており、各拠点を発展させることで収集できるアイテムを増やしたり、マップに居る敵のレベルを上げたりすることができる。『原神』の世界ランクがエリアごとに存在する状態をイメージしてもらえばよいだろうか。

逆に言えば「マップが分割されている」と言う印象はこのサブ拠点の育成ぐらいでしか感じない。テクニカルテストに存在しなかった要素としては、帝江号(ディージャンごう)という母船が宇宙空間に存在しており、ここでアイテムの生産、交換を行うことが可能になっている。

全体マップ画面。反映、安定などの表示が発展度合いを表している。
帝江号からタロIIを望む。


新システムの導入と操作系の変化で快適になったが複雑にもなった戦闘

戦闘システムについてはテクニカルテストと大きく異なるものとなっていた。あるキャラクターを操作している間、他のパーティーメンバーが自動的に戦ってくれることに変化はないが、スキルの使用時長押しでのスローモーション発生と方向指定、スキル使用時のキャラクター切り替えがなくなった。各キャラクターのスキルが1~4キーに割り振られており、スキルゲージはパーティで最大3つまで蓄積されたものを使用する。そのためどのスキルをどういう順番で使うかが重要となる。

また、各キャラクターに存在するゲージが貯まると必殺技を使用することが出来、これはスキル用のキーを長押しすることで利用可能となる。テクニカルテスト時は「近距離キャラから遠距離キャラに切り替えてスキルを使っているのに近接戦闘をせざるを得ない」という状況にしばしば追い込まれていたが、ベータテストではそのようなことはなかった。ただ、スキル発動が1~4キー、キャラ切り替えがQキーで順次切り替えるというキーアサインのため、しばしば「スキルを発動しようとしてQキーを押しており望まぬキャラ変更が行われる」状態になっていた。正式リリース時はキーバインドの変更が可能になっていると嬉しい。

加えて戦闘には失衡と呼ばれる新要素が追加された。通常攻撃の最後は重攻撃と呼ばれるものになっており、これを当てると敵に失衡値が蓄積される。ほか、戦技効果で物理異常状態を与えることでも失衡値は貯まる。失衡値が一定数貯まった敵は失衡状態になり、大ダメージを与えることができる。

また、一部のスキルや必殺技はアーツと呼ばれる属性付与要素があり、属性を付着させた状態に重ねて同じ属性を付与させることをアーツ爆発と呼び、これによって追加ダメージを与えることができる。もしくは別の属性を付着させることでさまざまな効果を発動させることが可能であり、これはアーツ異常と呼ばれる。ほかにも条件を満たすことで追撃技を発動することができ、失衡とアーツと追撃技を駆使して効果的に相手にダメージを与えるのが戦闘のコツとなっている。

敵のHPバーにある緑の葉のような模様がアーツ属性付与状態
同じ属性の必殺技を当てた後。アーツ自然爆発が発生している。


これらの新要素導入の結果、テクニカルテストに比べて戦闘の速度と快適さは明らかに上昇したと感じた。ただ、属性について覚えることが多くなってしまったため煩雑さを感じるかもしれないが、それらを駆使しないと戦闘に勝てないということもないので、すべてを一度に覚える必要はない。回復アイテムはテクニカルテスト時の「任意に利用できるがクールタイムが存在する」形ではなく、各キャラクターに装備した回復アイテムを体力が減ると自動的に利用するようになった。クールタイムは以前ほど長くはないが、1戦闘で最大3つまでしか装備できないため、結局回復アイテムを連打しながらゴリ押しはできないことに変わりはない。

今回の戦闘では自分は回避に集中していても、近くにいる仲間に指示を出すことで仲間がスキルを使ってくれることが最大の特徴だと感じた。そのため、テクニカルテストで苦労したボス「トリアンゲロス」に初挑戦で勝利できている。トリアンゲロス戦そのものの難易度がベータテストでは下がっているような気もするが、いずれにせよテクニカルテスト時に厳しいと思った難易度が低下しているのはありがたいことだ。

トリアンゲロスの攻撃が回避しやすく、ダメージ量も減っていた印象を受けた


新しさを感じる武器ガチャシステム

キャラクターと武器の入手について、テクニカルテスト時はポイント交換での入手だったが、ベータテストではガチャからの入手となっていた。80連で最高レア確定だがピックアップ排出率は50%というこれもどこかで見たようなシステムである。ベータテストでもガチャの確率に忖度はなく、筆者はピックアップ外のキャラがすり抜けてきて心が折れそうになった。

武器ガチャについては一味違うシステムとなっている。多くのゲームでは限られた予算内でキャラを引くか武器を引くかと悩まされることが多いのだが、こちらはキャラガチャを引いた時に得られるポイントを消費して武器ガチャを回すことになっている。本家『アークナイツ』には「資格証」というシステムが存在しており、ガチャを引いた際に得られるポイントでアイテムやガチャチケットと交換可能なのだが、そのシステムを応用したような仕組みだ。ある程度の強さの武器はガチャを回さずともポイント交換で入手することも可能だが、最高レアの武器はガチャから出ないと入手できないものもある。この武器ガチャの仕組みは大変おもしろいとは思ったが、反面「キャラガチャをたくさん回さないと武器ガチャも回せない」という仕組みでもある点は懸念にも思えた。

何回か引いてしまった後だが80回ですり抜けた場合120回でピックアップ確定。
ガチャを引いた画面。下にある数字を貯めて武器ガチャを引く。
武器ガチャ画面。ポイントを貯めて武器を交換してもガチャを引いてもよい。


俯瞰画面の導入と豊富なチュートリアルでわかりやすくなった建築要素

「集成工業システム」と正式に名付けられた建築については。テクニカルテストに比べてそのシステムを発展させる必要性が増している。マップのレベルを上げ、収穫できるアイテムを増大させるためだ。施設の種類も大幅に増加した。メインの拠点はストーリー進行と条件を満たすことで発展していくが、サブ拠点の発展のためにアイテムを納品する必要があり、そのアイテムが集成工業システムでしか作れない。結果、各拠点に工場を作成してアイテムを生産することになるのである。

また、テクニカルテスト時に存在しなかったと「鉱石を掘って自動的に施設に運んでくれる装置」や「採集した植物から種を採取し、栽培する装置」「ベルトコンベアを分岐させる装置」と言った利便性を高める設備も存在しているため、ゲームを便利にするためにも設備を増設し、アイテムを作っていくことになる。生産施設の建設だけではなく、荒廃した施設に電源が切れたギミックがあるので電線を引っ張ってきてそこに繋がないといけない状況や、ジップラインと呼ばれる設備を設置することで、大回りしていた谷間などをショートカットして渡ることも可能だ。

ジップラインで谷の向こうのサブ拠点へ移動中。


加えて、テクニカルテストでは3D画面での操作だけだった建築作業だが、ベータテストからは俯瞰画面で操作が可能。これにより建築操作は大変わかりやすくなっている。なお、最初から作成できる施設は基礎的なのもののみとなっており、新規建造物に関してはフィールドに落ちているレシピを拾い集める必要がある。レシピを入手し、開放するとチュートリアルが開くので大変わかりやすい。筆者は工場ゲーム系のプレイ経験はないが、すっとシステムは理解でき、「この防具を作るためにこの設備を作って次にこれをおいて」といった仕組みを組み立てるのについ熱中してしまい、ストーリーを進める手がしばしば止まってしまった。

俯瞰視点でわかりやすくなった建築画面。


大ボリュームを予感させる作りのコンテンツ

総じてテクニカルテストとの比較としては「世界を旅する感覚がより強くなった」「複雑化したが戦闘難易度自体は下がっている」「建築をやる必要性が増したがチュートリアルが懇切丁寧」という印象であった。

オープンワールド的なアクションRPGに建築ゲームの要素を導入しているため、結果的にプレイ時間の増加につながっているが、やりたくないことをやらされている感は少ない。また、『アークナイツ』プレイヤー向けにはエンドフィールドとのつながりも含めて色々と考える要素があり深く楽しめるが、それらの既存プレイヤー向け要素は強く押し出されてはいない。そのため、このゲームからプレイを始めても問題はないのではないだろうか。シンプルに広い開拓地を技術の力と人助けの精神で助けていく明るく前向きなゲームとして楽しめる。『アークナイツ』を知らないという人にもぜひ一度タロIIでの冒険を体験して欲しい。そう思わされるベータテストだった。

『アークナイツ』を最新章までプレイしていれば印象に残ること間違いなしの花畑。


アークナイツ:エンドフィールド』は、PlayStation 5/PC/iOS/Android向けに配信予定だ。

怪しい隣人
怪しい隣人

主にスマホゲームを中心に、サービス終了したゲームの情報を収集したり、開始早々ダメなことになっているゲームの情報を紹介するのが趣味です。サービス終了ゲーム死亡リストは1500件を超えました。年々ゲームが複雑になり、ダメさを判定するのに時間がかかるのが最近の悩みです。

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