国産長編ホラーノベル『死月妖花~四月八日~』が、なぜか中国で人気に。リメイク版『祀月耀花~四月八日~』、開発者インタビュー

『死月妖花~四月八日~』というゲームを知っているだろうか。同作は、ゲーム創作サークル「New++」のさつき氏が手がけた、フリーの長編ホラーノベルゲームである。共通点のある不可解な殺人事件や辺境の集落にまつわる大きな謎が、緊張感のあるストーリーとともに展開。想定プレイ時間は50時間以上と長いものの、巧みな緩急や次々に明かされていく真実、フローチャート上へ小分けにされた読みやすい仕組みによって、時間を忘れてストーリーを読ませる力をもっている。もしサスペンスADVが好きなら、メインキャラクターの誰かが殺されるところまで、遊んでみて欲しい。

そんな『死月妖花~四月八日~』は、なぜか中国で人気なのだという。京都で7月18日から開催された「BitSummit the 13th」の会場ではリメイク版『祀月耀花~四月八日~』が試遊展示されていたが、筆者が日本語で遊んでいる横では中国のプレイヤーが遊んでいた。

日本語の長編ノベルゲームでありながら海を超えて人気の本作について、開発者のさつき氏に話を伺ってきたので、その内容をお届けしよう。

──自己紹介をお願いします。

さつき氏:
ゲーム創作サークル「New++」のさつきと申します。新卒の頃にはゲーム業界でプランナーをやっていました。6年ほど在籍したあと、まったく別の業界へ転職して、今はフルタイムのオフィスワーカーとして営業企画的なことをしています。

──改めて『死月妖花~四月八日~』について伺わせてください。

さつき氏:
2019年にリリースした、長編のホラーノベルゲームです。一部イラストやテストプレイを除いて、1人で3年半かけて制作しました。

──どういったきっかけから制作されたのでしょう。

さつき氏:
ゲーム業界から離れたあと、自分が携わっていたゲームの実況動画を「ニコニコ動画」で見る機会がありました。その動画にいいコメントが付いていて、もう一度ゲーム開発をやってみたいなと思ったんです。しかし、私はプランナーだったのでプログラムもイラストも作れず、自分で開発できるものは何なのか考えて思いついたのがノベルゲームでした。そうして制作を始めました。

──『死月妖花~四月八日~』は、なぜか中国で人気があるそうですね。なにかきっかけがあったのでしょうか。

さつき氏:
私もよくわかっていません。以前から中国のbangumiというレビューサイトで高い評価を頂いていて、ダウンロード数おおよそ6万のうち半分ぐらいが中国からになっています。X(旧Twitter)のフォロワー数も、今はもう中国の方が多いですね。

──そもそもフリーゲームですし、中国語版があるわけでもないですよね。

さつき氏:
日本語話者の方々がレビューをしてくださったり、口頭で翻訳した動画があったりするようです。私が中国に対してプロモーションなどをしたわけでもなく、プレイヤーさんの口コミで広がっていった感じですね。日本でも、もともとフリーゲームのレビューサイトや「フリゲ2019」などで高く評価いただいていたので、それなりにいいものを作れたんだろうと感じていたんですが、それが中国でも受け入れてもらえたんだと思っています。

──リメイク版『祀月耀花~四月八日~』の制作では、どんなことを目指していますか。

さつき氏:
フリーゲーム版では、ゲームの作りやシナリオのロジックなど一部に粗が残っていました。設定が矛盾してしまっている部分や、設定の掘り下げ不足なところも結構あったんです。まずはそうした粗を直したいと思っています。それと、せっかくリメイクするからには、フリー版をやった人こそ楽しめるものにしたいので、新規要素も用意しています。あとは、『死月妖花~四月八日~』の方は割とノリで作った部分がありました。下品な表現やネタが割とあったので、そこは商業版らしくきちんと修正していきたいと思います。

──最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。

さつき氏:
ノベルゲームはジャンルとしては影が薄いところもあると思うんですが、だからこそまだまだ進化させる価値があると思っています。ゲームである以上は、ただシナリオがいいだけでは不十分と考えています。フリー版では、ただのノベルゲームを拡張させて、あまりノベルゲームを遊ばない私自身でも楽しめるものを目指して作ったつもりです。商業版ではそれをもっと改良していていますので、ぜひ遊んでみてください。

またリメイクは、フリー版を遊んでくださったみなさんのおかげで進んでいます。感想やレビューをくださり、ありがとうございました。フリー版をずっと超えるものを目指して、期待に応えられるように作っていますので、フリー版を遊んだ方もぜひ楽しみにしていてください。

──ありがとうございました。

リメイク版『祀月耀花~四月八日~』は日本語および中国語(簡体字)に対応し、PC(Steam)向けに開発中。フリーゲーム版『死月妖花~四月八日~』は、フリーゲーム夢現にてPC向けに公開中だ。

Keiichi Yokoyama
Keiichi Yokoyama

なんでもやる雑食ゲーマー。作家性のある作品が好き。AUTOMATONでは国内インディーなどを担当します。

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