国内ゲーマーは1年にどれくらいゲームを買うのか?購入の決め手は?「ライト層・ミドル層・コア層」別の数値いろいろ、市場調査セミナーを取材
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株式会社HIKEは1月22日、無料オンラインセミナー「サルガクチョウサ発表会」を開催した。本セミナーでは、猿楽庁によって2024年に実施された「モバイルゲーム市場における課金にまつわるユーザー調査」および「コンシューマゲーム市場におけるプレイ状況及びプレイ環境にまつわるユーザー調査」の結果に関する解説が行われた。このうち本稿では「コンシューマゲーム市場におけるプレイ状況及びプレイ環境にまつわるユーザー調査」について紹介していく。
株式会社HIKEは、アニメやゲーム、音楽などの事業を手がける企業だ。HIKEに属する猿楽庁は、エンターテインメントコンテンツのチューニングや検証事業を担う職人集団である。長官・小島尚也氏と匠・多田功一氏のもと、ゲームのモニタリングやバランス調整、プレイテストなどを行なうことでユーザーの満足度向上を図っている。近年では、『エルデンリング』や『呪術廻戦 ファントムパレード』などといった作品の制作のサポートに携わってきた。
そんな猿楽庁が独自に調査・分析をしているゲーム市場レポートが、「サルガクチョウサ」である。この調査は、ゲーム市場について消費者視点、開発者視点、そして長きにわたってゲームの動向を追っている猿楽庁ならではの視点をもって行われている点が特徴だ。前回のモバイル編に引き続き、今回は後編としてコンシューマーゲームに関するアンケート調査の結果を取り扱う。
調査対象となったのは、直近1年間に家庭用ゲーム機またはパソコンにおいて、コンシューマーゲームおよびサブスクリプションでゲームを1本以上入手したことがある全国の10代から60代の男女1000人だ。また、1年間あたりのゲーム購入、あるいはサブスクリプションに使う金額が年間1万円以下をライト層、1万円以上5万円以下をミドル層、5万円以上をコア層として分け、アンケート結果の分析を行った。回答者のうち各層の割合は、ライト層が54%と過半を占め、次いでミドル層が36%、コア層が10%であった。
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ユーザーがゲームを遊ぶのに好んで用いるハードは、前年と同様に全ての層でNintendo Switchが最多回答となった。割合としては、ライト層で約41%、ミドル層で約33%、コア層で約24%のプレイヤーがNintendo Switchを選択している。リリースから4年が経つPlayStation 5の普及も進んでいる一方で、特にライト層やミドル層ではPlayStation 4が根強い支持を集めているようだ。他方、それぞれの層でPC(Windows)の回答が増加傾向にあることにも注目したい。近年では世界的にPCゲーム業界が著しい成長を見せており(関連記事)、日本においても例に漏れず人気を伸ばしているようだ。
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直近1年間でコンシューマーゲームを購入、またはサブスクリプションで入手した本数のグラフを見ると、ライト層とミドル層では1〜6本までの回答が多く、コア層では7〜20本の回答が多くを占めている。しかしミドル層では7本以上、コア層でも21本以上という回答の割合が前年と比べやや増加している。つまり、ミドル層・コア層は前年より多くのゲームを購入する傾向があった ようだ。この結果には、昨今インディーゲームのような比較的低価格のゲームが多くリリースされているほか、サブスクリプションサービスが普及していることが少なからず影響していると考えられる。
ユーザーが好んでプレイするゲームジャンルは、全ての層においてRPGやアクションRPG、アクションの人気が高い。これらのジャンルはいわゆる「大作」に限られず、インディー タイトルなどの安価な作品も多くリリースされている。プラットフォームや価格帯を問わず、さまざまなユーザーを魅了しているのだろう。
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購入のきっかけとしては、「好きなジャンル」であることを理由とする意見が例年通り多かった。すなわち、RPGやアクションRPG、アクションは安定して幅広く支持されてい るといえるだろう。なおライト層とコア層では、「好きな世界観/ストーリーである」ことをきっかけとして挙げる割合が前年までと比べてやや増加している。
また世界観やストーリーに魅力があることは、全ての層で多くのプレイヤーがゲームに期待している要素でもあるようだ。さらに、ゲームシステムやキャラクター性といった点も期待を集めやすく、ビジュアルから受ける印象よりもゲームの内面における魅力が評価される傾向にあるとのこと。一方で、作品にオリジナリティがあることは他の要素と比べて重視されていないことから、独自性があるだけではなく、システム面において面白く作り込まれたゲームを提供することが重要であるといえよう。
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直近1年間に購入、あるいは入手したコンシューマーゲームを全てプレイしているという回答の割合は、コア層において半数近くにまで上った。一方、ライト層とミドル層では、持っているもののプレイはしていないゲームがあるというユーザーが大半であり、いわゆる「積みゲー」の存在が際立っている。クリア状況に関しては、全ての層において「約9割〜7割はクリアまで進んでいる」という回答が最多であった。なお、コア層では前年と比べてクリア率が上昇している傾向も見られる。
クリアしていないゲームをやめるまでのプレイ時間は、前回の調査よりも全体的に長くなっているようだ。ライト層では「30分〜2時間程度」、ミドル層では「5〜10時間程度」、コア層では「10〜20時間程度」との回答が前年と同様に最多であった。ゲームを多くプレイするユーザーであるほど、長い時間をかけてプレイをやめるかどうか判断しているようだ。
未クリアのゲームをやめた理由としては、ライト層では忙しさを指摘する声が最も多かった。他方、ミドル層とコア層では別のゲームを入手したことによる心移りが最多回答であった。また、全ての層において「プレイ途中で満足したから」という回答よりも、「プレイ途中で面白さが感じられなくなったから」の回答割合が大きいことは注目に値する。すなわち、ゲームを実際プレイしたことで内容に物足りなさを感じたり、内容に飽きてしまったりするユーザーが多いのだろう。
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こういった理由からプレイを途中でやめたゲームや、すでにクリアしたゲームであっても、時が経って再びプレイしたくなるときはあるものだ。再度プレイするきっかけとしては、「なんとなくプレイ意欲が湧いた」ことや「プレイ時間が確保できた」ことのほか、アップデートやDLCの追加、世間での話題性などを理由として挙げる 回答が多かった。このアンケートでは回答が幅広く分布していることから、どのような形であってもプレイの再開を促すような働きかけをすることには一定の効果があると考えられる。
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直近1年間にプレイしたゲームの満足度の調査もおこなわれた。グラフを見ると、 約9割〜7割の作品に満足しているというユーザーが最も多いようだ。満足感を得られた要素としては、「世界観/ストーリー」と「ゲームシステム/難易度」が有力である。先述したとおり世界観/ストーリーなどゲームの内面を購入のきっかけとするプレイヤーが多い ことから、プレイヤーの多くがあらかじめゲームに期待していた要素にしっかりと満足できていると考えられる。
ライト層では、1つのタイトルをプレイし終わるまで他のゲームには手を出さないというユーザーが半数を占めた。一方で、ミドル層とコア層では複数のタイトルを同時進行で遊ぶ割合が高い傾向にあるようだ。そのため、プレイを中断、あるいは再開しやすいゲームには需要があるといえよう。
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直近1年間にプレイした中で最も楽しめたタイトルを訊く投票も実施。 最も多い票を獲得したのは、『ファイナルファンタジー』シリーズであった。この結果は、ナンバリング最新作である『ファイナルファンタジーXVI』およびリメイクシリーズの続編『ファイナルファンタジーVII リバース』がリリースされたことによる影響が大きいだろう。また2位に『ゼルダの伝説』シリーズ、3位に『スーパーマリオ』シリーズが選ばれているように、長年続いているシリーズ作品が上位入りを果たす傾向にあるようだ。一方で、シリーズタイトルではない『エルデンリング』が6位に、『ユニコーンオーバーロード』が14位にランクインしていることは注目に値する。さらに、一昨年から話題を集めてきた『スイカゲーム』も根強い人気を得ている 。独立した作品でも開発元の実績や話題性次第で 、人気 シリーズ作品に対抗できるほどの支持を受ける ことができることもうかがえる 。
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なおゲームの体験版をプレイする目的としては、全ての層で面白そうなゲームを探すためであるという回答が最も多かった。次いで、購入予定のゲームの内容を確認する目的でプレイする割合が高いようだ。すなわち、体験版の提供は購入の判断に関わる重要な施策 になっているとみられる 。一方で、各層のユーザーの20% 以上は、ゲームの購入希望に関係なく目についた体験版をプレイしているようだ。
ほか、リリースされるタイトルのプレイ時間が作品によって大きく異なる中で、ゲームの購入数自体は増加しているようだ。しかし多くのタイトルがリリースされている現在、ユーザーが期待しやすい世界観やゲームシステムといった点をマーケティングでいかにアピールできるかが 、 重要になっているだ ろう。またユーザーがプレイを楽しんでいるタイトルとしてはシリーズ作品が多くを占めるが、『スイカゲーム』や、直近では『Balatro』のように新規作品であっても爆発的な人気を得ることがある。SNSやインフルエンサーも活用しつつ、プレイヤーを満足させて口コミを広げられるかは人気を得るための鍵となりそうだ。またゲームを購入するきっかけづくりとして 、体験版を用意する重要性も高まっている と考えられる。特にSteamでは、各種フェスのタイミングで体験版を宣伝することも施策のひとつだろう。
なお、次回の「サルガクチョウサvol.9」のテーマは『Steam市場における、ゲーム購入にまつわるユーザー調査』 とのこと。先に述べたように、ゲームをプレイするハードとしてPCの需要が高まっている現在、時宜を得たテーマであるといえよう。引き続き、調査レポートに注目したい。