2Dアニメーションツール「OPTPiX SpriteStudio」Unity向けプラグインが、5倍高速化したらしい。詳細を開発者に訊いた

2Dアニメーションツール「OPTPiX SpriteStudio」におけるUnity向けプラグインが、5倍高速化したという。詳細を開発者に訊いた。

昨今のゲームではアニメーションやカットシーンなど、多数の演出がゲームプレイを彩り、リッチな体験を成り立たせている。「OPTPiX SpriteStudio(以下SpriteStudio)」は、超汎用の2Dアニメーション作成ツールと謳われており、2Dのキャラクタアニメーションやエフェクト、UI周りの動きなどが作成可能。『真・女神転生Ⅴ Vengeance』など多数のタイトルで採用されており、昨今の表現を支えているツールの一つとなっている。

6月28日に大阪で実施されたGTMF 2024の会場では、そんな「SpriteStudio」の新しいUnity向けのプラグインが展示されており、従来のプラグインよりも約5倍の高速化を実現したのだという。弊誌では会場にて新しいUnity向けプラグインや直近のアップデートについて伺ってきたので、本稿ではその内容をお届けしよう。


──まずは自己紹介をお願いいたします。

遠藤 義輝氏(以下、遠藤氏):
CRI・ミドルウェアの遠藤と申します。SpriteStudioの開発マネージャーを務めておりまして、機能の検討から現場に近いところ、ユーザーのサポートまで製品全体を見ています。

──改めて、SpriteStudioの概要を伺わせてください。

遠藤氏:
SpriteStudioは、超汎用の2Dアニメーション作成ツールです。2Dのキャラクターアニメーション、パーティクルエフェクト、UIの演出、画面のレイアウト作成やカットシーン作成など、さまざまな用途にお使いいただけます。ゲームでは、キャラクターのアニメーション制作が多く、エフェクト機能も使われています。『真・女神転生Ⅴ Vengeance』ではUIの演出で活用していただいていますし、幅広く使われている印象ですね。SpriteStudioを使えば、ウィンドウが可愛らしく動くなど、他タイトルとは一味違ったUIを作ることができます。

──近年のアップデートでは、どういった機能強化が進められてきたのでしょうか。

遠藤氏:
最近はUI関連のアップデートとして、テキストを表示する機能や、UIの小気味よい動きを簡単に付けられるイージングの機能などを強化してきました。あとは直接UIとは関わらないのですが、サウンドにも手を入れています。キャラクタアニメーションの特定のタイミングでSEを鳴らしたい、プレビューをツール上でできると良いなという要望をずっと頂いていたので、そのあたりの機能も追加しました。

あともう一つ、近年注目を集めているゲームエンジンGodot Engineに対応しました。「SpriteStudioPlayer for Godot」というプラグインをオープンソースで、GitHub上で公開しており、誰でも利用可能な状態となっています。SpriteStudioでは、その他のツール・プラグインもGitHubで公開しています。

以前よりGitHubでいろいろ公開しておりまして、GitHubでの「SpriteStudioPlayer for Godot」の公開もそうした流れの中の一つとなります。


──今回SpriteStudioでは、Unity向けの新しいプラグインが発表されていました。同プラグインはどういったものなのでしょうか。

遠藤氏:
Unity向けの新プラグインでは、旧プラグインと比べて大幅な高速化を実現しています。新しいプラグインは、元々プロダクトとして計画されていたものではなく、久田というスタッフ(久田 友海氏)がこうしたらもっと速くなるんじゃないかと趣味で開発していたものになります。

社内のコンテスト企画がありまして、そこに久田が趣味で作っていたSpriteStudioのプラグインを出してきたのですが、眠らせておくにはもったいない出来だったので、製品化を検討していきました。それが今回正式発表となった形です。

同プラグインでは、約5倍の大幅な高速化が実現されています。ベンチマークとして、60fpsを維持したままボーンとメッシュで組まれたキャラクターを何体まで出せるか計測したところ、従来の約5倍のキャラクターが表示できました。

──どういった工夫により、高速化が実現されたか伺わせてください。

遠藤氏:
大きくふたつあります。まず旧プラグインでは描画処理のメッシュを作成する部分が、シングルスレッドで動作していました。新プラグインでは、マルチスレッドに対応し、処理が並列実行されることで高速化されています。

もうひとつ、UnityにはBurst*1という機能があります。Burstは、単に使えば速くなるものではなくコンパイラの一種ですので、Burstでコンパイル、動作するようにコードを工夫する必要があります。これにしっかり対応したことで、マルチスレッド化とあわせてかなり速くなったのです。Unityエディタ上の動作も高速化されていますし、競合製品に負けない速さをもっています。今後も改善に取り組んでいきたいと思っています。

*1
UnityのJob Systemに対応したコンパイラ。アプリケーションパフォーマンスを引き出し高めるコードが作成できるという。

──ありがとうございました。

SpriteStudio」は、個人・インディーゲーム開発向けには無料で利用可能だ。

[聞き手・編集:Ayuo Kawase]
[執筆・編集:Keiichi Yokoyama]

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