『メタファー:リファンタジオ』はアトラス式コマンドバトルRPGの集大成となる作品だった。「マサカド様」コラボ等盛りだくさんの「アトラスフェス」内覧会レポート

 

自社ブランドリリースから今年で35周年を迎える株式会社アトラス。これを祝して、ファン向けのオフラインイベントである「アトラスフェス」が、東京・ベルサール秋葉原にて開催された。今回特別に内覧会に参加することができたので、『メタファー:リファンタジオ』の試遊レポートと、ブース内で何が展示されていたのか、その模様をお送りしよう。


今回催されたアトラスフェスの内覧会は、前半と後半の2部構成となっており、前半は35周年を記念したセレモニーが、後半は新作タイトルである『メタファー:リファンタジオ』の試遊ブースとコンセプトアートの展示を中心としたブースの紹介となっていた。

まずは今回のアトラスフェスの目玉とも言える『メタファー:リファンタジオ』のファーストインプレッションをお送りしたい。アトラスの新作タイトルである『メタファー:リファンタジオ』のブースで、15分という制限時間付きではあるが本作の体験版を試遊することができた。筆者の簡単なインプレッションとしては、「アトラス式コマンドバトルRPG」の集大成となる作品という印象を受けた。

『メタファー:リファンタジオ』はアトラスのスタジオ・ゼロが開発を手掛けるタイトルであり、『ペルソナ3』以降の『ペルソナ』シリーズの制作に携わったクリエイターが中心となって開発されているという。

今回体験できたのは、仲間との会話イベント及びボスとの戦闘だったが、上記作品の影響は強く感じられた。会話イベントでは、ペルソナシリーズにおける「コミュ」や「コープ」に近い「フォロワー」いうシステムを体感出来た。主人公の支援者である「フォロワー」との絆を深めると、特殊な効果が得られるようになったりするほか、主人公たちのいわゆる「ジョブ」のようなシステムである「アーキタイプ」を開放することができる。ペルソナ3以降のシリーズ同様、本作には攻略にあたっては何日までというような日限が設定されており、イベントを発生させると作中時間が経過する。どのように攻略チャートを組み立て、旅を進めていくのかが鍵となる。

ボスとの戦闘については『真・女神転生III-NOCTURNE』から登場し続けているターンベースの戦闘方式「プレスターンバトル」を軸とした内容となっていた。「プレスターンバトル」とは、「敵の弱点属性をつければこちらが有利となり、逆に弱点をつかれると不利になる」ゲームルールである。弱点をつくたびにターン内における自分の行動回数が一回ずつ増え、逆に敵に有利な行動をとると、行動回数は減ってしまう。これは敵側の行動においても適用される。端的に言うと弱点を突き続ければ自分のターンが伸び、弱点を突かれ続けると敵のターンが伸びるという仕様である。本作ではこのルールのもと、主人公たちそれぞれのアーキタイプに備わったスキルを用いて戦っていく。中には複数の行動権を一気に消費することで発動可能な大技「ジンテーゼ」も存在し、戦略の構築が攻略の鍵となる設計となっている。


試遊した範囲では、「ジンテーゼ」は強力な行動であるものの、プレスアイコンを複数消費するものになっていた。ジンテーゼでも、弱点を突くことが出来れば、大プレスアイコンの消費は半分に抑えることができるため、非常に重要となりそうだ。また戦闘中の味方の配置は前列、後列という隊列の概念も存在し、位置は戦闘中に入れ替えることができる。前列に配置した味方は被ダメージが大きくなる代わりに近接攻撃の威力が増加し、後列に配置した味方は被ダメージが低減するが近接攻撃の威力も弱くなる。近年の『真・女神転生』シリーズや『ペルソナ』シリーズでは恒例になりつつある「プレスターンバトル」を継承しつつも、独自の要素に昇華させようとする試みが伺える内容となっていた。

今回体験できた戦いは、いわゆる「取り巻きを倒すことで本体との戦闘を有利に運ぶ」タイプのボス戦ではあったものの、油断するとすぐにゲームオーバーになりかねない、刺激たっぷりな体験であった。相変わらずインターフェースの操作感はバッチリで、画面の勢いに対しスローテンポになりがちなコマンドバトルの窮屈さを絶妙にカバーしている。ちなみに、「アーキタイプ」はゲームを進めたりイベントをこなすことで、その姿を様々な方向に進化させていく。もちろん扱えるコマンドも変わる。RPGとして、プレイヤーごとに異なるプレイスタイルを強調させる仕組みといえる。

試遊の他にも、イベント会場であるベルサール秋葉原の地下一階のフロアには『メタファー:リファンタジオ』のコンセプトアートを中心としたブースが展示されており、内覧会ではこちらを見学することもできた。場内の中心には主人公が最初に覚醒するアーキタイプ「シーカー」の巨大な像が立っており、周辺には本作のコンセプトアートが展示されている。本作には「ニンゲン」と呼ばれる、不気味な敵が登場するのだが、一切の調和の無い破滅的な有機物としてのビジュアルデザインが特徴である。ヒエロニムス・ボスの絵画を参考にしたそうだ。一方主人公たちのアーキタイプは機械的、無機物のようなビジュアルを特徴としており、強い相関を感じさせる。

今回の試遊は15分という制限時間が存在したため、本作のほんの一部しか体験できなかったものの、短いプレイ体験からもインターフェースや戦闘システムなどは同社の既存タイトルからの影響が如実に現れている内容であるという印象を強く受けた。一方で、本作の売りとなる物語体験に関しては既存タイトルのそれと方針がかなり異なっているように感じられた。ネタバレの観点から詳しい内容に言及することはできないが、筆者としては、学生生活ジュブナイルという枠組みを廃したこのシステムフォーマットが何を表現するのか、『メタファー:リファンタジオ』という表題は一体何を指し示す言葉なのか、非常に興味深いところである。


また内覧会で行われたセレモニーについても紹介したい。セレモニーの前半では、自社ブランドスタートから35周年を数える「アトラスの益々の繁栄」 と「東京の平和と繁栄」、そして「アトラスフェスの大成功・安全を願う」祈祷が行われた。さまざまな作品を通して東京を散々破壊し尽くしてきたアトラスだからこそ、平和祈願をすることに意味があるのだろう。これを取り仕切るのは神田神社である。秋葉原の近くに鎮座していることもあり、さまざまなサブカルチャーとのコラボレーションを行ってきたことで知られるほか、アトラスの代表作である「真・女神転生」シリーズにおいて、さまざまな形で登場している「平将門命」を祭神として祀っている神社である。シリーズにおいても度々作中の舞台として登場している。

海外からの観光客が行き交う秋葉原の往来の側で、厳かな雰囲気のもと行われた儀式はなんとも不思議な感覚を覚えた。この「形式を重んじつつも、独自性でもって既存の常識を打ち壊す破壊的な勢い」こそ、アトラスお手製の作品から感じられるパワーであり、社風なのかもしれないと私は思った。


儀式が終わったあとは、会場に展示された「平和祈願 巨大お守り」のギネス記録認定が行われた。世界最大のお守りとして認定された記録は「2.6mx1.9m」。とにかくデカい。ちなみに中身の御神璽はそれなりの大きさだった。そもそもお守りをデカくする試みなど、筆者としては色々とツッコミどころはあったが、ここは「アトラスらしい」の一言でまとめようと思う。

このあとは今回の特別ゲストである野田クリスタル氏によるトークショーが展開された。「『ペルソナ5』が大好き」「新島真に恋をした」とのこと。また、自身が地下芸人出身であることに触れつつ、「当時の尖った自分であれば、巨大お守りの中に入ってイベントをめちゃめちゃにしていたかもしれない。私の中の悪魔が、それを抑えてくれている」とも語った。自身もゲームを創るクリエイターとしては、(昨今の作品におけるコンテンツボリュームに照らし合わせる形で)アトラスのゲーム開発体制が気になるとのことだった。最初はなんとも厳粛な雰囲気のもと始まったセレモニーではあったが、野田氏の小粋なトークによって、会場の空気は「フェス」らしい和やかなものになっていた。


セレモニーが終わったのちは、アトラスフェス内に展示されている各種ブースの見学に移ることができた。「ATLUS HISTORY」ブースでは、1989年から2024年までの歴代アトラス発売作品のパッケージや、週刊ファミ通、電撃PlayStationとの歴代コラボ表紙イラストが展示され、「アトラスフェス」の名に違わないブース内容となっていた。この他にも、元祖プリクラシリーズ「プリント倶楽部2」の筐体や、ヒーホーと喋るジャックフロストの巨大な頭、会場内スタンプラリーなどの体験型アトラクションが用意されていた。

そして内覧会の締めとして、筆者は『真・女神転生V Vengeance』体験版プレイにも参加。新たなエリアである「ダアト:新宿区」を散策することとなった。新宿御苑がベースになっているフィールドのようで、花のようなナルキッソスが群れになって咲いていたほか、オブジェクトにもその名残が見られた。先程の試遊同様、15分の制限時間があるため、なにか無いかと彷徨っていたところ、デカいマーラを発見。近寄ってくる。やばい。プレッシャーがやばい。逃げたところでイベントが発生し、物語に関する情報が開示された。

本作の追加シナリオ「復讐の女神篇」では、作品の中盤以降、オリジナル版とはまったく異なる展開が待っているそうだが、それを匂わせる内容であった。このあと筆者はマガツカに挑戦。本作では新要素として、シナリオに登場するキャラクターを「ゲスト」として使用でき、今回は新キャラクターである「尋峯ヨーコ」をパーティメンバーに加え戦った。彼女は俗に言う魔法アタッカーであり、ただただ強い。本来なら苦戦する難易度のマガツカ戦を難なくクリアすることができた。ゲストキャラクターを前提としたパーティ構築というのもなかなか楽しめそうである。


これにて筆者のレポートは終了となる。アトラスと言えば、今年はヴァニラウェアとの共同開発である『ユニコーンオーバーロード』が発売早々に話題となり、『ペルソナ3 リロード』が人気を博した。DLCの大型コンテンツとして『Episode Aegis』の発売が9月に控えている。そして今月には『真・女神転生V Vengeance』が発売され、『メタファー:リファンタジオ』は10月発売である。2024年はまさにアトラスの年。今後を楽しみにしつつも、この怒涛の勢いに押しつぶされぬよう、1ファンとして気合を入れなおそうと誓ったフェス体験であった。