“ソロ参戦”でも「FFXIV ファンフェスティバル2024 in TOKYO」は楽しめたのか。男ひとり、10周年記念イベントに行ってきた素直な感想
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「ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル in TOKYO」(以下、ファンフェス)が、2024年1月7日から8日にかけて行われた。『ファイナルファンタジーXIV』(以下、FFXIV)の新生10周年を祝うため、東京ドームを2日間丸ごと貸切って講演や催しを行う大規模なイベントだ。本稿ではその様子と、「ソロ参戦」でも同イベントを楽しめたのかどうかを、写真を交えつつお伝えしたい。
東京ドームを埋めつくすファンたち
『FFXIV』は2010年にサービスを開始するも紆余曲折あり、リメイクに近いかたちで2013年に「新生版」が公開。そこを新たな起点として去年に10周年を迎えた。それを祝うべく、2023年にはラスベガスとロンドンで、2024年には今回取材した東京でのファンフェスが執り行われた。
筆者の友人やフレンドも今回のファンフェスに参加していた。しかし、そうした友人らはすでに一緒に行く人が決まっていたうえに、こちらはイベントの様子をお届けするための仕事として来ている。まだ薄闇残る早朝に、文化祭を1人で回る孤独な男子高校生の気分で会場を前にした。
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入口はまるで人気歌手のライブ会場の様相だ。手荷物検査とチケット確認が着々と行われ、人の列は東京ドームへと吸い込まれていく。会場外は物販コーナーや「リアルトレジャーハント」などの催し、『FFXIV』関連の装飾でファンフェス一色になっていた。広場を埋め尽くすほどの人数が集まっているイベントが、いちゲームのものだと気付かされる。エントランスにはトレイラー映像が流れ、ドーム内には巨大な「月の監視者」やモーグリが設置されており、『FFXIV』のイベントに来たという実感が強まっていった。
基調講演が始まる頃には、席のほとんどがファンで埋めつくされていた。
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新ジョブのピクトマンサーなどの新情報発表は大盛り上がり。会場中から歓声が上がり、ボルテージは最高潮だ。とはいえ、筆者にとって新情報以上に興味深かったのは、『FFXIV』プロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏の巧みなプレゼン術だ。掴みはよく、聞き取りやすい速度でハキハキと喋り、体の向きや視線を適度に変える。観客から「へー」「えー」といった反応を自然と引き出し、まるで会場や配信コメント全体と会話をしているかのような滑らかさ。まさにプレゼンの教科書、お手本を目の当たりにしているようで、新情報そっちのけで観察をしてしまうほどの魅力があった。
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ひとり参加というのは気楽なもので、同行者に気を遣う必要もなく自由気ままに散策ができる。基調講演が終わりドーム内の通路をふらふら歩いていると、メッセージボードが目に入る。各色の水性ペンが取り揃えられており、ElementalやManaなど、それぞれのデータセンターとサーバーごとに自由に書き込める欄のある巨大な壁だ。海外データセンターの欄もあり、海外ファンの書き込みもちらほら見ることができた。こうしたメッセージボードもリアルイベントならではだろう。せっかくなので一筆書かせていただいた。
近くには歴代ファンフェスで使われた衣装や、ゲーム内装備を再現したマネキンなども展示されており、その多さに『FFXIV』の歴史の長さを垣間見ることができた。また、2日目の坂口博信氏の登壇を終えたあとには、坂口氏の着ていたカッパの着ぐるみもいつの間にか飾られていた。案内の看板もなく不気味にたたずむカッパに、道行く人が「今も中に人が入ってそうで怖いね……」と言っていたのを覚えている。
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謎解きゲーム、フォトスポット、竜の目バッティング。ソロ充できる数々のアクティビティ
ファンフェスでは、たしかにソロでは楽しめない催しもあった。複数人での参加が前提のコーナーだ。ゲーム内フレンドとの待ち合わせスポット「リアルコンテンツファインダー」がその最たる例だろう。そうしたコーナーでは、挨拶や歓談の声が聞こえてくる。そんな楽しげな様子は、輪に入れない“ぼっち参加者”にはつらいものがある。楽しいイベントに来てるのに、孤独を感じさせなくてもいいじゃないか!と心の中で八つ当たり。しかし、ソロで楽しめるコーナーも多いことだろう、切り替えが大事だ。
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ソロ充してやる。そう心に固く誓い、始めたのが謎解きゲーム「アジムステップを駆ける星」。参加者に配布されるクロスワードと羅針盤を使い、LINEに届くメッセージを手がかりに東京ドーム内外でパズルを解くアクティビティだ。
パズルの途中で「リアルコンテンツファインダー」付近で参加者同士で4人人パーティーを作るよう指示されたが、1人でも攻略ができるよう設計されていた。筆者が選んだのは当然後者である。「何が悲しくて見知らぬ人とかりそめの友情を築かねばならないのだ」と妙な意地を張ってみた。複数人パートを1人でおこなったぶん手間はかかったが、「パーティーメンバーの前で○○のエモートをしよう!」と進捗のメッセージが届くのを見て、ほっと胸をなでおろした。ふたたび1人パートが続き、ヒントも充実していたため、最後まで比較的スムーズにクリアすることができた。おかげで、ささくれた気持ちも少し楽になった。
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会場内にはさまざまなフォトスポットが点在していた。大きな一枚絵、「余輩のナーマになれるスポット」から新ジョブヴァイパーの武器を持って写真を撮れるコーナーなど。それぞれの拡張から少なくとも一つはシチュエーションが選ばれており、ファンへの気配りを感じ取ることができた。こちらは不思議と複数人で来ても単独で写る人が多く、なかにはコマンダーシャークのぬいぐるみと共に撮影している方もいらっしゃった。同じぬいぐるみ好きとして軽く声をかけたかったが、突然話しかけられても相手が困るだろうな……と躊躇してその場を立ち去ってしまった。それもまた人生。
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東京ドームの外にも別会場があり、「竜の目バッティング」と「ストラックアティン」が開催されていた。アルフィノが竜の目を投げる映像に合わせてボールが飛んでくるバッティングと、『新生エオルゼア』に登場するリットアティンの絵にボールをぶつけるピッチングが楽しめた。こちらは大人気で、11時ごろに受け付けを済ませても1700人待ちとなっていた。
さらに会場内でも、両方遊ぶために計2時間近く待つはめになった。バッティングとピッチングそのものは楽しかったが、それほど待つ価値があったかと聞かれるとなんともいえない。とはいえ、列に並ぶのもイベントの醍醐味といえなくもないだろう。順番待ちの間も、快打やストラックアウトが連続で起きると小さな歓声が上がっていた。少なくとも話のタネにはなりそうだ。
「アスラ討滅戦」先行体験とグラウンドアクティビティ
イベント2日目には、メディア向けに「アスラ討滅戦」を試遊する機会をいただいた。パッチ6.55で実装された、『FFIV』に登場するアスラをモチーフとした新コンテンツだ。8人1組に分けられ、さっそくパーティー編成とUIの編集の時間をいただけた。そして、コンテンツが始まると挨拶するのはヒカセンの本能のようなもの。「よろしくお願いします!(Lets do it!)ここに来るのは初めてです。(This is my first time here.)」とゲーム内の定型文辞書を使って挨拶するも、周りには『FFXIV』未経験のメディア関係者もいたようで、ひとりで空回りをしてちょっぴり気恥ずかしい思いをした。
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「アスラ討滅戦」ではボスの詠唱名を見て動きを判断する『暁月のフィナーレ』でよく見かけるギミックが続き、HP半分ぐらいまでは善戦。しかし、その後に繰り出される連続攻撃(6回ぐらいあっただろうか)をパーティーが避けきれずに全滅してしまった。予想していたより手応えのある内容で、実装後のプレイでもパーティー半壊や全滅が怖いところだ。
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「アスラ討滅戦」試遊後には東京ドームのグラウンドを見て回ることができた。ファンフェスの協賛企業ブースでは最新のゲーミングPCで試遊ができるほか、ぬいぐるみが手に入るくじ引きなどが行われており大盛況だ。また、ファンフェスのお約束となっているキャラクターの着ぐるみもときおり登場。なんとも愛らしい姿にファンはメロメロになり、筆者も含め多くの人々がスマホ片手に写真を撮っていた。
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グラウンド内にはほかにも「イフリート討滅ダイスチャレンジ」や床のスクリーンに現れる模様を避ける「YOKERO -タイタン討滅戦」などのアクティビティもあった。「YOKERO」は事前予約制だったため参加できなかったが、ダイスチャレンジは遊ぶことができた。列に並んで順番が来たところで人数を聞かれ、1人と伝えると「1名様の待ち列はこちらでして……」と違う列に案内された。4人1組で遊ぶため人数調整として複数人と1人の列が分かれており、案内を見逃していたようだ。そんな殺生な……。
結局、すぐに3人組とマッチングして挑戦。見事成功し、『FFXIV TTRPG』に使われるダイスを全員で山分けすることができたのだ。こんな一期一会も悪くないのかもしれない。イベントでも“野良PT”がサポートされているのは、ソロ参加者への配慮だろう。
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また、過去のイベントにて展示された造形物も並べられていた。どれも見事なものばかりだったが、グラウンドには入場制限がかかっていた。せっかくの展示物を見に来る機会が限られていたのは、本イベントの惜しいポイントの一つかもしれない。
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1日目と2日目を締めくくるコンサート
2日間ともステージでの講演やショーが続き、目が離せなかった。開発チームの裏話、声優陣による生アフレコ、一般参加者によるコスプレ披露会「ミラプリコレクション」。余興で行われていた「ドマ式麻雀大会」で、アルフィノ役立花慎之介氏の一回戦敗退による優勝(?)を記念して行われた、Still Love Her (失われた風景)の生カラオケといった珍場面など。多くの印象深いシーンがあった。
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そのなかでも特に人々の心に残ったのは、やはり両日の締めを飾った『FFXIV』のBGMのアレンジ曲を演奏したコンサートではないだろうか。1日目のコンサートはピアニストのKeikoこと大嵜慶子(おおさきけいこ)氏と歌手のAmanda Achen氏による演奏だ。Achen氏のソプラノボイスが光る「Flow」からKeiko氏の「目覚めの御使い」のピアノソロまで、落ち着いたしっとりした演目であった。まるで1日目の終わりを飾りながら、2日目のエネルギーを残してくれているかのような、包み込んでくれる優しさのあるコンサートのようだった。
2日目は『FFXIV』の作曲を担当している祖堅正慶氏の率いるバンド、PRIMALSによるライブ演奏。1日目と打って変わって、全てのエネルギーを出し切ると言わんばかりのアクセル全開のロック。声出しもOKだったため、多くのファンたちが腹の底から大声を上げてサイリウムを振っていた。ロックコンサートなど無縁の筆者は、ノリノリで立ち上がるアリーナ席の人々を見て「へぇー、経験者はこういう風にノるんだ……参考になるなあ……」と思いながらも、座ったまま心ゆくまで楽しんでいた。
曲目は主に『暁月のフィナーレ』内のボーカル曲から選ばれ、1日目にも舞台を飾ったAchen氏や劇中歌を歌うJason C. Miller氏などがゲスト出演したほか、“大物演歌歌手”と称して吉田直樹氏が歌を披露するサプライズもあった。ライブ中にゲーム内レイド、機工城アレキサンダーの時間停止ギミックが発生して会場が一体となり「ギミック処理」する一場面も。
懐の深さを感じて次の10年に思いを馳せる2日間
ライブ後のエンディングでは主要スタッフから感謝が述べられ、最後に吉田プロデューサーがマイク無しで「ありがとーーー!!!」と絶叫。かくしてファンフェスは大盛況のなか終幕を迎えた。
ファンフェスに参加して一番強く感じた点はコミュニティの懐の深さだ。『FFXIV』のユーザーの中核は2、30代の男女と言われている。しかし、会場内ではそれ以外の老若男女や親子連れ、車椅子での参加者も少なからず見かけた。服装もコスプレ、ペア散開マクロを模した一風変わったTシャツ、ハイデリン&ゾディアークの刺繍ジャンパー、ごく普通の服装のなど人それぞれだ。ルールに縛られることなく、さまざまな境遇の人が思い思いにこのイベントを楽しんでいるように感じられた。
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かくいう筆者も、イベントに仕事でひとりで来ている身。最初は楽しめるか不安だったのが正直な気持ちだ。運悪く人混みに揉まれてしまい、気疲れして近くの席にしばらく座り込んでしまう場面もあった。それでも最終的には、数々のイベントやアクティビティを通して2日間を思い切り楽しむことができた。
最後のエンディングを終える頃には、大人数の中のただのいちユーザーではなく、大きな生き物の細胞の一部として呼吸しているような、そんな感覚を覚えた。誰もがコミュニティの一員として迎え入れられる、そんな素地があると思わせるようなイベントだったと胸を張っていえる。大げさに聞こえるかもしれないが、そんなエネルギーがファンフェス全体を包んでいた。
また、イベント中は裏方として働く多くの人々を目の当たりにした。機材を扱う人、急病人を運ぶ人、コーナーを取り仕切る人などなど。そうしたスタッフたちの血と汗のおかげでファンフェスの運営は成り立っていた。その点は強調しておきたい。
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帰り際にメッセージボードをふたたび見ると、1日目の始めと比べてぎっしりとメッセージが書きこまれていた。本稿を通して『FFXIV』コミュニティ層の厚さとファンフェスの雰囲気が伝われば幸いだ。
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2023年に新生10周年を迎えた『ファイナルファンタジーXIV』。2024年夏には新拡張の『黄金のレガシー』も配信される予定だ。これだけ大がかりなイベントを成功させたとなると、今後の展望への期待も高まることだろう。10年後にも今と同じか、それ以上に発展した姿を見せてくれると信じたい。
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