「フォンテーヌ」エリアを実装する新たなアップデートが導入され、大いに盛り上がりを見せている3Dアクションゲーム『原神』。これに合わせて、「テイワットでの果てなき冒険の旅」をテーマにした展覧会シリーズのフォンテーヌ編「影を訪ねて波を踏む また、フォンテーヌで」が東京・ラフォーレ原宿6階のラフォーレミュージアム原宿にて、2023年8月19日〜8月27日にわたり開催されるはこびとなった。今回特別に先行で展覧会を観覧することができたので、何が展示されていたのか、その模様をお送りしよう。

なお本展覧会に来場するにあたり、会場観覧の抽選受付が必要になっているが、申込みは既に終了している。同イベント終了後にはオンライン展覧会の開催も告知されているため、来場できなかった人は続報を待ちたい。



今回の展覧会は旅人の軌跡を辿る第一章「テイワット・世界」。フォンテーヌに関するコンセプトアートを展示する第二章「テイワット・フォンテーヌ」。アーティストによる工芸品が展示されている第三章「果てなき冒険の旅」の3章構成になっていた。そのため、『原神』をまだ本格的にプレイしていない人や、最新のメインストーリーに追いついていないのでメインストーリーの具体的な展開に関するネタバレは避けたいというユーザーでも楽しめるような配慮がなされている。(もちろん、コンテンツを遊んでいると更に楽しめること間違いなしだ)。

筆者は展示会に来る前、アップデートが実装されたとはいえ、実装されてまだ日が浅いこの状況で、楽しめる人は多くいるのだろうかと思っていたが、素直に感心してしまった。ちなみに、今回の展示にはスタンプラリーが用意されている。6つのミッションを4つまで達成することができ、達成した数に応じて15種類あるキャラクターカードを選んで交換できる。来場した際はぜひチャレンジしてみることをオススメしたい。

 


入場して最初に目に入ったのは「遺跡守衛」こと謎の国カーンルイアの侵略兵器「耕運機」の模型だ。ゲーム中でもよくみる起動前の姿で鎮座しているそれは、近寄って観ても鑑賞に耐えうるディテール、塗装の艶やかさを放っていた。このコーナーは耕運機をはじめとするカーンルイア製兵器の初期案やコンセプトアートが展示されており、たとえば「遺跡サーペント」がなぜヘビ型で、それがカーンルイアの兵器としてどのような効力を持つのか、兆載永劫ドレイクのメカニクスなどついて知ることができる。


さらに歩みを進めると、現在のバージョンに至るまでに旅したテイワットの国々に関する簡単な紹介が、ちびキャラクターのミニアートそばで記載されていた。私たちの旅は自由の国「モンド」に始まり、契約の国「璃月」を越え、永遠の国「稲妻」に至り、知恵の国「スメール」で波乱を迎えた。そしてサービス開始から来月で3周年を迎えようとするなか、正義の国「フォンテーヌ」が実装された。広大なテイワットの世界を走り回って、飛んで、跳ねて、時には泳いで。思えば遠くへ来たものだ。

 


思い出を振り返ったらいざ第二章へ。フォンテーヌのアートを紹介するコーナーへ進んでいこう。フォンテーヌは正義を信仰するという特異な文化をもつだけでなく、西欧風の町並みと水源の自然美が融合した水と機械工学の国でもある。都市であるフォンテーヌ邸には特徴的なデザインを持った機械群がインフラとして設置されており、近未来的かつ少しレトロな外観を備えている。第二章では水とアーキテクチャの融合により、きらめく水面のような美しさから深海のような暗部まで、さまざまな顔を見せるフォンテーヌの背景美術に関するコンセプトアート群が展示されている。

 

 

 


また、特徴的な魔物たちのメカニクスデザインについての資料も掲載されている。攻撃モーションに合わせた内部機構を説明する資料や、フィールド移動に関する資料は私からすると非常に興味深いものだった。第四章のキーキャラクターであるリネ&リネット及びフレミネの初期デザイン原稿、ゲーム中で鍛造(いわゆるクラフト)可能な武器の立体模型も展示されており、ぜひ近寄って細かな部分まで鑑賞してみることをおすすめしたい。

 


フォンテーヌの特徴である水中探索をイメージしたエリアでは、涼し気な照明のもと、文字通り水中を散策した際に見ることができるロケーションや、特殊な生物のコンセプトアートが展示されている。多くのモチーフや構図を通した空間美を特徴とする陸地のアートワークとは異なり、より印象を重視した表現が柔らかい水のようなタッチで描かれる。まるで絵本の中の世界のようだ。


展覧会の大詰めとなる第三章では、アーティストによる『原神』をモチーフとした芸術品や一枚絵、アップデートごとに用意されたキービジュアル集が展示されている。油絵や墨絵、日本の工芸品といった普段のビジュアルから解き放たれた表現で映し出される『原神』の世界は、それがミスマッチにならず綺麗に成立すること自体、『原神』というIPが持つ多様な可能性を象徴するものであると言っていいだろう。そして同時に『原神』の世界がさまざまな国の文化を吸収して成り立っているということの証左でもあるのだ。

 

 


廃材アートとして制作されたことで、材木に残る傷がそのまま年月の重みを感じさせる「アンドレアス」。ダンボール製の「正機の神」は緻密な美しさと素材由来の可愛らしい玩具っぽさが同居する。日本と稲妻が和の文化にて交差する「雷電眞」を描いた金屏風絵は、“ニッポン画”で著名な山本太郎氏と学生さんたちとの共同制作だということだ。展示スペースの奥にはフォンテーヌエリアの試遊体験が可能なエリアや、ちょっとしたパズルを楽しんだり、ぬいぐるみを使ったアトラクションが用意されている。出口には訪れた人たちがメッセージを残せるスペースもあり、すでに著名な声優さんたちの書き置きが残されていた。会場に行った方はぜひ一度目を通し、自身もまた『原神』愛を思い出として刻んでみてはいかがだろうか。展示会に合わせたグッズ販売も行われているため、こちらもチェックだ。


筆者の個人的な感想としては、正直、時間が足らなかった。45分の制限時間が設定されていたものの、仕事そっちのけでギリギリまで見入ってしまった。それだけ今回の催しが密度のある展示ということであり、充実した鑑賞体験を得ることができた。『原神』とプレイヤーが歩んできた道のり、そしてこれから歩んでいくであろう未来を感じさせる内容であった。そして、何回も展示を観たいと思ってしまったのもまた事実である。本展示会は完全抽選制の形を採っているが、会期終了後にはオンライン展覧会の開催も告知されている。現地に行けなかった方や、筆者のように体験のリピートを望む人は、首を長くして開催を待ちたいところだ。

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