「動画のせいでアプリのファイルサイズ大きい問題」向けミドルウェア「CRI-VOD」がこっそりイベントに出展されていた。詳細を訊いた

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先月6月30日、グランフロント大阪内コングレコンベンションセンターにてGame Tools & Middleware Forum 2023(GTMF 2023・大阪会場)が開催された。本イベントはゲーム開発向けのツールやミドルウェアなどのソリューションに特化している。4年ぶりの開催となった本イベントだが、30社以上が参加し、大いに盛り上がりを見せていた。

本イベントを主催するCRI・ミドルウェアもブースを出展していたが、中でも注目を集めていたのが初出展となる「CRI-VOD」(仮名)だ。なんでも現在リリースに向けて研究開発中の製品とのこと。今回はこのCRI-VODについて、開発本部第3開発部の山崎怜氏にインタビューを行った。


──自己紹介をお願いします。

山崎怜(以下、山崎)氏:
CRI・ミドルウェアの山崎です。こちらのCRI-VODの開発を担当しています。

──CRI-VODはどのようなミドルウェアなのでしょうか。

山崎氏:
簡単に言いますと、動画のストリーミング再生を行うゲーム/アプリ用のミドルウェアになります。動画データをサーバーから読み取って、少しずつ再生していく形式がストリーミング方式なのですが、それをゲーム内に取り込むことができるミドルウェアです。

──CRI-VODの特徴をいくつか教えてください。

山崎氏:
最近は4K解像度などサイズの大きい動画が出てきていて、それをアプリとして配信するとなったときに、アプリの容量を圧迫してしまいます。サーバーから動画を取得することによって、アプリ内に動画ファイルを格納する必要はなくなり、結果としてアプリ容量を削減できます。このように、ネットワークから動画をとってくることで容量を削減する、動画再生ミドルウェアという形になっています。

サーバーから動画を取ってくる特性上、ゲームアプリに新しい動画を載せたいとなった場合にも、動画を入れ替えればいいだけなので、アプリのアップデートが不要になります。それによって、手軽に動画コンテンツを常に最新のものに更新できるのも特徴です。

基本的な機能に関しては、再生、停止はもちろん搭載しておりますし、細かい制御も可能です。動画のシークバーを動かしたり、ループ再生、1.5倍速や2倍速再生にも対応することが可能です。また、モバイルで動画を見ているときにトンネルに入って、通信環境が悪化してしまうと画質が落ちてしまう、あるいは途切れてしまう経験をされたことがあると思います。これは動画再生を止めたくはないけど、画質を高画質には保てないという状況で、その場合には特別な処理が必要になるのですが、このCRI-VODではそちらの機能にも対応しております。通信環境が劣悪な環境にも対応することが可能で、実際にNintendo Switchなどモバイルのプラットフォームにおいても採用いただいております。

後ろ側にある映像は、CRI-VODでストリーミングされているもの


──劣悪な通信環境に対応する特別な処理というのはどのようなものなのでしょうか。

山崎氏:
動画配信をする場合はあらかじめいろんな画質の動画をサーバーに置いておきます。通信環境が良く、高い画質の動画が再生できるとなった場合には一番綺麗な動画を再生して、通信環境がちょっと落ちてきたら、2番目の画質のものを再生して、それでも厳しかったらどんどん落としてっていう仕組みを使っています。ABR(Adaptive BitRate)という機能で、そちらの機能もミドルウェアの方に搭載しておりますので、開発者の皆さんは特にそこを気にせず使っていただくことが可能です。

──ネットワーク動画再生は結構パケットを食うイメージを持っているのですが、そちらはどうでしょう。

山崎氏:
ストリームに関して発生する通信に関しては、モバイルでYouTubeを見る感覚とほとんど一緒です。もちろん画質を上げてしまうと、通信も食ってしまいますし、それによってお客様の通信料も高くなってしまいますが、そこは既存のストリーミングサービスと同じです。
動画ファイルの形式としましては、広く使われているHLS(HTTP Live Streaming)の環境を使うことができます。現在YouTubeなど大手で使われている規格と同じものです。圧縮ももちろん行われていますし、そういったところで今までCRI・ミドルウェアが開発した圧縮技術というのは、ふんだんに盛り込まれています。

──……CRI-VODが開発されたことで、CRI Sofdec®のニーズが減少したりはしないのでしょうか。

山崎氏:
CRI Sofdecも実は同じチームで開発していますので、大丈夫です(笑)CRI Sofdecとはまた毛色が違うというか、役割が少し変わっているので。CRI Sofdecはいろんな方に使っていただいていますが、新しく今後出していくCRI-VODもいろいろな方に使っていただきたいなと思います。

──ありがとうございます。実際にこのミドルウェアが使われている採用例について教えていただけますか。

山崎氏:
たとえば、DMMさんでPlayStation 4向けのVRアプリタイトルに採用いただいております。デモの方でもご覧いただけるように、球体でくるくると回っている動画があるのですが、あれがVRの360度動画になっております。VR内にフルハイビジョン以上の画質の動画を組み込めるわけですね。

Nintendo Switch 向けの「ABEMA」アプリでも採用いただいております。先ほど見ていただいたPCで表示しているデモは、既に撮影が完了している動画をサーバーから取ってきているのですが、Nintendo Switchの方ではライブ配信を再生しております。想像しやすいところでいうとYouTubeライブのような仕組みで、順次動画が更新されているのをCRI-VODミドルウェアで再生をするという仕組みになっています。


──開発のきっかけを教えてください。やはり先ほど仰っていたように、動画の高画質化に伴う個々のモバイルゲームのアプリ容量の肥大化がスタートにあるのでしょうか。

山崎氏:
CRI Sofdecをご利用いただいているタイトルでも、CRI SofdecのAPIで直接URLを指定することはできないか、という注文を受けることがありました。そういったニーズに対して、それに関してはCRI-VODで対応できますと言えるように開発を行っているような形になります。

──実績としては今すぐ出せないものもあるけど、ゲーム系のソフトウェアにも採用され始めているという認識で大丈夫でしょうか。

山崎氏:
はい、そうです。

──ありがとうございます。CRI-VODの今後の展開について教えていただけますか。

山崎氏:
こちらは研究開発中の製品になります。製品名も仮名でして、名前も変わる可能性もございます。これからマニュアルでしたり、SDKの部分をしっかり整えていきながら、皆さんに使っていただける状態を目指して現在準備しておりますので、お待ちいただければと思います。

──ありがとうございました。



[執筆・編集: Junichi Matsui]
[聞き手・編集: Ayuo Kawase]

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