『グランブルーファンタジー ヴァーサス』の公式大会「GBVS Cygames Cup Special 2023」現地観戦レポート。賞金100万円を賭けた、読み合いと反応の極限
Cygamesは2月25日、『グランブルーファンタジー ヴァーサス(以下GBVS)』の大会「GBVS Cygames Cup Special 2023」の決勝ラウンドを開催した。「GBVS Cygames Cup Special 2023」は、Cygamesの主催による『GBVS』のダブルエリミネーション形式の賞金制大会である。決勝ラウンドには、2月11日実施の予選ラウンドを勝ち残った8名の選手が出場。優勝賞金100万円とプライドを賭けた、激闘が繰り広げられた。試合や大会については生放送がおこなわれていたため、すでに目にした方も多いことだろう。
また今回の決勝ラウンドは、同大会シリーズでは初のオフラインかつ有観客での開催となっていた。会場の「REDEE」へ選手や観客たちが集ったわけであるが、会場の様子はどうだったのか。今回弊誌では現地へ取材に行ってきたので、会場の写真や感想も添えつつ、大会の様子を改めて振り返ろう。
今回会場となった「REDEE」は、大阪府吹田市にあるデジタルコンテンツ体験施設だ。付近には、1970年に開催された大阪万博の跡地を利用した万博記念公園が存在。最近では「タローマン」で話題の芸術家・岡本太郎氏がデザインした「太陽の塔」が会場近くにあるいえば、少しは伝わるだろうか。「GBVS Cygames Cup Special 2023」は、そんな会場の一角にあるメインアリーナで執りおこなわれたのだ。メインアリーナはシアター風の空間となっており、座席の正面にステージと巨大スクリーンが設置されていた。スクリーンは横幅が大変広く、カメラに映りきらないほどのサイズで試合を観戦できたことも特徴だろう。またメインの大会以外には、『GRANBLUE FANTASY: Relink』の試遊コーナーや、『GBVS』のES大会が全3回実施。ES大会の前後にはフリー対戦もおこなわれ、プレイヤーたちが和やかな空気でアーケードコントローラーやパッドを握っていた。入場特典として配布されていた2枚のポストカードも含めて、大会の観戦以外でもいくつか催しが用意されていたわけだ。
メインアリーナでは、「GBVS Cygames Cup Special 2023」決勝ラウンドの前に、まずは「GBVS 企業対抗戦」決勝ラウンドが実施された。予選を勝ち上がってきたという企業チーム同士の対戦だ。対戦カードは、エクシング対ネットギア+三和電子チーム。配信でも映されていたとおり、先鋒/中堅/大将同士の3試合の末、最終的にはネットギア+三和電子チームが勝利を収めている。試合の内容としては、先鋒同士の対戦では、練習の成果が垣間見える微笑ましい対戦が繰り広げられていた。対戦カードが進むにつれて徐々にガチな空気が漂いだし、最終的には格闘ゲームをやっているプレイヤー同士の戦いに。トッププレイヤー同士の本戦とは一味違う、企業の威信をかけた戦いが繰り広げられていたのだ。
またその後の「GBVS 企業対抗戦」 エキシビションマッチでは、『GBVS』のディレクター福原哲也氏の率いるCygamesチームが、なぜか全員サングラスをかけて登場。Cygamesのクリエイターたちの操る筋肉(のキャラクター)が、ネットギア+三和電子チームへ襲いかかった。全試合BO1ということもあり、Cygamesチームとネットギア+三和電子チームのスピード感のある戦いも、見どころのある内容となっていた。また会場では、Cygamesチームの戦いも含めて、試合を暖かく見守る雰囲気が感じられた。
本番の「GBVS Cygames Cup Special 2023」では、企業対抗戦とは打って変わって、トッププレイヤー同士の熾烈な争いが繰り広げられた。本人たちにしか真偽はわからないものの、現在『GBVS』で一部のトッププレイヤーは、相手の投げを見てからの投げ抜けや技を見てからの無敵技など、反応速度の問われる高度なプレイを取り入れているのだという。そうした状況もあってか、今大会では互いに様子を探るような、緊張感のある対戦が多数展開。間合いを取り合い、一瞬の隙をうかがう。見ていても思わず息を呑んでしまう、地に足を付けた対戦がおこなわれていった。
決勝ラウンドの出場者8名のうち、今大会の主役はとろろ選手とgamera選手の2人だった。とろろ選手はパーシヴァル使いのプレイヤーだ。2022年に開催された大会では「EVO 2022」の『GBVS』部門や「GBVS Cygames Cup 2022 Summer」、「GBVS Cygames Cup 2022 Autumn PS部門」などで準優勝を果たしてきた。結果は残しているものの、大きなトーナメントでの優勝歴はなく、初の優勝を目指して勝負に挑んだことだろう。
ウィーナーズ側からの開始となったとろろ選手は、苦しい展開の接戦も制し、グランドファイナルへと勝ち進んでいった。ウィーナーズファイナルでは、お魚さん選手からとろろ選手対策と思われるウーノの飛び出す試合もあったが、パーシヴァル1本で勝利。堅い守りとジリジリと詰めるような攻め、相手の動き出しを狩る攻撃などが印象的だった。
もう1人のgamera選手は、ジータを中心に他のキャラクターも使う『GBVS』では言わずと知れた強豪プレイヤーだ。2022年の戦歴では、「GBVS Cygames Cup 2022 Spring」にて準優勝し、「GBVS Cygames Cup 2022 Autumn PS部門」では7位。「EVO 2022」『GBVS』部門のグランドファイナルでは、ウィナーズ側で勝ち上がっていたとろろ選手を不利なルーザーズ側から破り、優勝を果たしている。なお決勝ラウンドでは、試合間に選手たちのちょっとした紹介もされていたが、gamera選手は対戦したいプレイヤーとしてとろろ選手を挙げていた。
ルーザーズ側からの挑戦となったgamera選手は、対戦相手に応じてキャラクターを変えながら勝ち進んでいく。たかし選手のジータに対して同キャラ戦を避けてのゾーイ、わっふる選手のシャルロッテに対しては有利なカタリナ、ひのきの棒選手のナルメアとお魚さん選手のベリアルに対してはジータを使用。サブキャラクターでの傍目にはサブだとわからない高い練度、ヒット確認や防御で見せる高い精度、時折通す読みの鋭さが印象的で、相手を寄せ付けない強さすら感じさせた。
グランドファイナルは、そんなウィナーズで勝ち残ったとろろ選手のパーシヴァルと、ルーザーズ側から上ってきたgamera選手のジータによる対戦となった。形式だけ見れば「EVO 2022」グランドファイナルの再現となる。最初のラウンドでは、画面中央でしゃがんで様子を見合うなど互いに堅牢な立ち回りが目立つ。そんな中、gamera選手が再三の投げからとろろ選手の防御を崩し、ラウンドを手にする。
しかし第2ラウンドでは、ジータの無敵技ライジングソードが外れたところから、とろろ選手が逆転勝利。第3ラウンドでパーシヴァルの投げ技イクスゼーレがヒットし始めると、とろろ選手が試合そのものを制して、初優勝を遂げた。最終的なスコアは3対0。結果だけなら一方的にも見えるが、薄氷の試合を勝ちきった上で、雪辱を晴らす結末となった。
大会の主な内容としては以上であるが、会場では現地だからこそ見れたものもあった。前述のとおり、会場には非常に横幅の広いスクリーンが設置されていた。試合中、画面中央にはゲーム画面が大きく表示されており、余った両サイドに選手たちの様子が大きく展開。配信画面では小さなワイプだった選手たちの感嘆や悲哀が、会場の画面ではより大きく映されていたのだ。当然ではあるが、ステージ上では選手たちがその場で戦いを繰り広げており、会場の前方ではアーケードコントローラーの音も響いていた。そうした会場ならでは臨場感は、現地観戦の醍醐味だっただろう。個人的には、選手たちの息を呑むような緊迫した戦いと、明暗の分かれた試合後の姿が記憶に残っている。
『GBVS』は、PlayStation 4/PC(Steam)向けに発売中。後継作『グランブルーファンタジーヴァーサス -ライジング-』は、PlayStation 4/PlayStation 5/PC(Steam)向けに2023年発売予定となっている。また『GBVS』では、3月31日より実施される「EVO Japan 2023」で大会が実施予定となっており、今回のような熱い戦いがまた見られるかもしれない。