『ポケモン スカーレット・バイオレット』先行プレイ感想。オープンワールドとフリーシナリオの導入で「あなた」だけの冒険を実現する


遠い昔の時代を舞台にした『Pokémon LEGENDS アルセウス』の発売からおよそ9か月。11月18日に、現代を舞台にしたシリーズ最新作『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』が発売される。『Pokémon LEGENDS アルセウス』では従来の本編タイトルにおける遊びをベースに、広大なフィールドとTPSおよびアクションを組み合わせることで、シリーズらしさを維持しつつ新機軸を打ち出すことに成功した。そしてこの流れは途切れることなく続いていく。本作では従来のコマンドバトルとポケモンの育成という遊びをベースに、オープンワールドとフリーシナリオを中心としたシステムを導入。ゲームプレイがシームレスな形になっただけではなく、自分らしい物語を紡ぐことができるようになるという。その試みは果たして実を結んだのか。このたび本作の一部を先行してプレイする機会に恵まれたため、作品の内容を含めて紹介していきたいと思う。

『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』は11月18日の発売が予定されている『ポケモン』シリーズ最新作だ。対応プラットフォームはNintendo Switch。パルデア地方を舞台に、オレンジアカデミー/グレープアカデミーの学生である主人公は「宝探し」をテーマにした課外授業を校長から言い渡され、自分だけの宝物に巡り合う旅に出発する。

※今回筆者は『ポケットモンスター バイオレット』をプレイしている。

フリーシナリオを体験

『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の最大の特徴は、オープンワールドと、それに伴うフリーシナリオの実装である。本作には3つのストーリーラインが用意されており、それぞれ、ジム戦とチャンピオンテストを通じポケモンバトルのプロ認定を目指す「チャンピオンロード」。学校の問題児集団「スター団」に立ち向かう「スターダスト★ストリート」。強大なヌシポケモンとの戦闘を通じて秘伝スパイスを追い求める「レジェンドルート」となっている。すべて課外授業の一環という扱いであるため、どのストーリーから攻略を始めても良いし、1つのストーリーをどれだけ進めても構わない。また「チャンピオンロード」に関しては、8つあるジムのうち、どのジムから攻略を始めても大丈夫であることが明らかになっている。今回の試遊体験では3つのストーリーラインに対しワンポイントずつのアプローチを体験することができた。チャンピオンロードは1つのジム戦。スターダスト★ストリートは1人のボス戦。レジェンドルートは1匹のヌシポケモン戦を体験した。

ゲームを起動してまず筆者の視界に入ってきたのは、美しくも従来とは異なる特色を持ったパルデア地方の風景であった。古来よりの建造物と未来的な設備が絶妙に入り交じるパルデア地方の姿は、『ポケットモンスター ソード・シールド』の頃からさらに写実的な風景美を強調している印象を受ける。昔からのコマンドバトルを維持しつつ、オープンワールドやフリーシナリオといった新しい挑戦を試みた本作らしいビジュアルデザインと言えるだろう。違いに感動しつつ視線を動かしてみると、さまざまなポケモンたちが悠々とフィールドを闊歩している。

オープンワールドを導入している作品が抱える共通の課題として、筆者は「広大なフィールドをいかに楽しんで移動してもらうのか」があると考えている。多くの作品ならば、いわゆる「おつかい型」と呼ばれる形のサブクエストを大量に用意することで移動を強制したり、ランドマークとなるオブジェクトを大量に設置することで世界の観光をしてもらうという解決策を用意するのだが、本作はポケモンをシンボルとして数多く点在させることでこれを解決している。

見知らぬポケモンを発見すると捕まえたくなってすぐ近寄ってみてしまう。捕まえずとも観察するためにあちらこちらへ移動したくなる。探索で捕まえたポケモンを眺めようと図鑑を開けば、インターフェースデザインが大きく変化していることに驚く。雑誌の表紙のようなポートレートがアイコンとして本棚風、電子書籍風に並ぶ外見は現代的でオシャレだ。画面右下に映るミニマップには、周囲に出現するポケモンが大まかにアイコンで表示されている。さらに本作はポケモンを一匹、ボールから外に出して連れ歩くことが可能。好きなポケモンのモーション見たさでさらにウロウロしたくなる。ピカチュウに限り、はじめて連れ歩きが実装された『ポケットモンスター ピカチュウ』からフィールド中のさまざまなポケモンをじっくり観察できる『Pokémon LEGENDS アルセウス』までに至る時の流れを感じさせる仕様である。

また、全体的に上下構造を強く意識したフィールドデザインがなされているという印象を受けた。フィールドを歩いていると崖や谷が多く視界に入り、たいてい崖上/崖下にはポケモンが生息している。ポケモン目当てで移動すると新たな地形を発見、そのまま探索を促すという仕組みになっている。お陰様で取材の目的を忘れそうになるほど探索にのめり込みかけてしまった。ちなみに、フィールドの移動自体は非常に快適である。本作ではパッケージを飾る伝説のポケモン「コライドン/ミライドン」に跨がり自由自在に高速で移動することが可能。平地はもちろん、崖を登ったり水面を移動することもできる。『Pokémon LEGENDS アルセウス』の仕様とは異なり、1匹のポケモンですべての地形をシームレスに移動可能である。平地を駆けるポケモン、滑空できるポケモンと入れ替える必要はない。


探索の楽しさから正気に戻り、さて3つあるうち、どのストーリーラインから手を付けようかと迷っていたところ、筆者はポケモンセンターにたどり着いた。未来的なデザインをした建物であるため、大自然の中でも一目でわかる。ポケモンセンターではポケモンの回復や、併設されたフレンドリィショップにて どうぐの買い物ができるほか、わざマシンを作ることができる。本作のわざマシンは消費型に戻ったものの、「LP(リーグペイ)」というポイントと「ポケモンのおとしもの」と呼ばれる、戦闘などの報酬で手に入る材料を使って作ることができる。製作可能なわざマシンは、3つあるストーリーラインの進行状況によって増えていく。わざの内容を表現した写真がタイル状に並ぶインターフェースがカッコいい。

このほか、ポケモンセンターではどのストーリーを攻略すれば良いか迷っているプレイヤーに対し、現時点で攻略に適したものをマップにマーキングしてくれる。オープンワールドゲームをはじめ、プレイの自由度が高いゲームは一般的になったものの、目的が曖昧という状態に対し、困惑してしまうユーザーも多い。中には本作からオープンワールドやフリーシナリオという仕組みに触れるユーザーもいるだろう。ゲーム慣れしていないユーザーにとって、こういった配慮はありがたいものだ。

せっかくなので筆者も指示を仰いでみたところ、「レジェンドルート」の攻略をオススメされた。ヌシポケモン・ガケガニとの戦闘である。早速現地に向かってみれば、通常の数倍を誇るサイズをもった、異様な大きさをしたガケガニが壁に貼りついてモサモサと動いているではないか。まさに圧巻。迫力に少し気圧されながら、戦闘に挑むことになった。オープンワールドならではの、シームレスな戦闘突入演出がカッコいい。筆者はガケガニ のタイプがいわタイプであることを知っていたため、まずはこちらも新しく発見されたポケモンであるウミディグダで応戦することにした。だが「岩壁のヌシ」の二つ名は伊達ではなく、すさまじい攻撃力で攻め立てる。それでもタイプ相性で追い詰めた……と思いきやガケガニのとくせい「いかりのこうら」が発動。HPが半分以下になると、防御と特防のステータスが1段階下がる代わりに、攻撃と特攻、素早さのステータスが1段階上昇するとくせいである。


さすがに強化されたヌシポケモンの攻撃には敵わず。次鋒リキキリンに残りHPを押し込んでもらうことにした。炸裂するリキキリンの攻撃。キリンリキの進化形は伊達ではない。だがあと一歩というところでガケガニは撤退を選択。眼の前からすばやく逃げてしまった。今回の試遊ではここまでしか体験出来なかったものの、製品版ではさらなる戦いが待ち受けていることだろう。

次に筆者が向かったのは、スター団のほのお組「チーム・シェダル」のアジトだ。アジトは崖に囲まれた窪地にあり、ならばミライドンに乗って裏から侵入しようとしたのだが「カチコミをするならば正々堂々、正面から」と注意を受けて自動的にアジト正門近くへ飛ばされてしまった。「たのもー!俺はボスのメロコに用がある!」。門を叩けど彼女からの返事はなく。代わりにしたっぱが言うには、「ボスに会いたければ制限時間内に指定された数のポケモンを倒せ」とのこと。本作の新システム「レッツゴー」を用いて、アジト内にいるしたっぱのポケモンを次々と倒していく。


「レッツゴー」は、連れ歩いているポケモンを主人公が指さした方向に向かわせる機能のことだ。向かった先に道具があれば拾ってくることもあるし、野生のポケモン がいれば 「おまかせバトル」をしてくれる。これは簡単に言うと自動戦闘である。ポケモンを倒すことができれば道具や経験値を得ることができる。近くにたくさん野生のポケモンが複数いる 場合は連続して戦闘を行ってくれる。本作は『ポケットモンスターソード・シールド』や『Pokémon LEGENDS アルセウス』に引き続き、手持ちのすべてのポケモンに経験値が与えられる仕様になっている(戦闘に出たポケモンに対しては多めに入る)。そのためレベリングが快適になっている。「レベリングが面倒くさい」という意見はJRPGが苦手なジャンルであるという理由としてメジャーなものだ。同時に、「即座に面白さの核に届く」ゲームデザインが流行を見せている昨今においてレベリング=下準備の時間を減らす本作のデザインは現代的な仕様だと言えるだろう。

今回筆者がカチコミをかけたのはほのお組チーム・シェダルということで、アジトに登場するポケモンたちはすべてほのおタイプで統一されていた。このミニゲームはあらかじめ選んだ3匹のポケモンでしか挑戦することはできなかった。可能な限りタイプを揃えて挑みたいところである。指定数のポケモンを倒すと、ようやくメロコが登場。メラメラとした意匠を全身にまとった「スターモービル」の背中に乗って私の前に現れた。ほのおに絡めた熱いセリフと、パンクなビジュアルが最高にカッコいい。なんでも部下をかわいがってくれたお礼として、バトルをプレゼントしてくれるという。ロックな専用BGMが激しくかき鳴らされるなか、チーム・シェダルのボス、メロコとの戦いが始まった。


正直なことを言えば、みずタイプで手持ちを揃えれば楽勝だと考えていた。だがすぐにその考えは過ちであったことに気づく。みずタイプに関してはメロコ側で対策がなされており、半端なみずタイプのポケモンでは力負けしてしまう。流石はチームのボスを張っているだけのことはある。だがこちらも負ける気はさらさらなかった。本作の新戦闘システムであるテラスタルを発動したのだ。テラスタルは簡単に言えば、戦闘中に1度だけ、ポケモンのタイプをテラスタイプに変更できるシステムである。 なお、変更先のテラスタイプがもとのタイプと一致している場合、それと同じタイプのわざがさらに強化される。

たとえば筆者は「こおりタイプ」であるハルクジラを「みずテラスタイプ」に変更した。変更できるテラスタイプはポケモン1種類に対して18種類用意され、同じポケモンでもテラスタイプは1匹ごとに違う。バトルのあいだ永続的に変更先のタイプのままになるため、相手の技を有利な形で受けるだけでなく、いつタイプが変更されるのかという選択の圧力を相手に押し付けることができる。また「テラバースト」という、テラスタイプと同じタイプに変化する技もある。もともとポケモンと同じタイプの技は強化される仕様があり、よってタイプ変更中ならば強力な威力を発揮する技である。筆者はHPの高いハルクジラをみず テラスタイプに変更し、どっしり構えつつ、テラバーストを連打。メロコの正面突破に成功した。

戦いの後には勝利した証であるバッジとわざマシンが獲得できた。ジム戦と似た仕様である。「スターダスト★ストリート」は学校というモチーフを活用した、シリアスなストーリーが展開されそうだ。

最後に向かったのは花と芸術の町、ボウルタウン。キマワリをイメージした像があちらこちらに立っているのが特徴だ。ポケモンジムのジムリーダー・コルサに挑むべくここにやってきた。だがその前に、ジムテストというミニゲームをクリアする必要があるという。スター団のアジトにおける実戦的なミニゲームとは異なり、こちらは3D空間や町のイメージを利用したレクリエーション的な側面が強い。ボウルタウンのジムテストは、町に散らばったキマワリを指定数集めてこいというものだ。本当にいろんな場所に隠れているため、自然と町の観光をすることになるのが面白い。サクッとテストをクリアしたら、くさタイプ使いのコルサに挑戦だ。

やはりジムリーダーだけあって一筋縄ではいかず。テラスタルを使った変幻自在の戦法を用いプレイヤーを惑わせる。だが相手はくさタイプ。筆者の相棒ホゲータが文字通り火を吹いた。タイプ一致のテラスタルによりほのおタイプの技の威力が劇的に向上。策を上から押しつぶす活躍を見せてくれた。なお本作は野生のポケモン戦に限り、オープンワールド作品ということで、戦闘中でもカメラをある程度自由に動かすことができる。『Pokémon LEGENDSアルセウス』からの機能ではあるが、いろいろな角度からポケモンのモーションを観察できるのはそれだけで楽しい。特にテラスタル中のポケモンはこういうときでしか観られないので、マジマジと見入ってしまう。トレーナー戦においては専用のカメラワークが用意されており、真剣勝負の場にふさわしい、臨場感ある演出を楽しめる。


バトルに勝利すると、記念にジムバッジとわざマシンを獲得できた。残り7つのポケモンジム、そしてチャンピオンテストではどのようなテストとトレーナーが待ち受けているのか楽しみである。

試遊体験の最後のプログラムまでに時間があったため、私は主人公の着せ替えやピクニックを楽しむことにした。本作では衣服の着せ替えとフェイスメイクをワンボタンかつその場で行うことができ、同じくワンボタンで使用可能なカメラアプリと合わせて、好きな姿で写真撮影を楽しめる。気に入った風景を撮るのもいいし、連れ歩いている相棒と自撮りするのも楽しい。お気に入りの写真はプロフィールに設定だ。主人公の衣装については町のブティックで購入することにより増やすことができ、ヘアメイクは美容室で行うことになっている。


ガーリッシュおよびボーイッシュなファッションスタイルを採用していた『ポケットモンスター ソード・シールド』とは異なり、本作ではユニセックスなスタイルが特徴になっている印象だ。おそらく私が製品版をプレイした場合、ポケモンバトルで稼いだお金はココに消えることになりそうである。ちなみに、本作では旅の途中で出会ったトレーナーと自動で戦闘が始まることはない。だが特定の地域におけるトレーナーをすべて倒すとポケモンリーグからご褒美がもらえる仕組みになっている。倒すメリットは用意されているということだ。

町で衣服と食材を買い揃え、広くなだらかな景色のいい場所でいざピクニックだ。ピクニックは手持ちのポケモンと触れ合い、和やかな時間を過ごすことができるシステムである。その場にテーブルと椅子を広げてサンドウィッチを作ったり、ポケモンの体を洗ったり、おもちゃで遊ぶことができる。ピクニック用品のコーディネートは好きなようにアレンジ可能。もちろんピクニックの間にカメラアプリをシームレスな形で起動することもできる。『ポケットモンスター ソード・シールド』を遊んだことがあるプレイヤーであれば、三人称視点で行えるポケモンキャンプをイメージして貰えればわかりやすいだろう。また、ポケモンたちとピクニックをしていると、ポケモンのタマゴが見つかることがあるようだ。

ピクニック中に遊べるサンドウィッチづくりのミニゲームは、なんとも懐かしい、知育玩具的な楽しさがある。サンドウィッチづくりはレシピ通りに作るものもあれば、自己流で作ることもできる。使った具材に応じて食べた時に得られる効果が異なり、特定のタイプのポケモンに対してメリットが得られる内容になっている。たとえば、エスパータイプのポケモンがゲットしやすくなる具材の組み合わせが存在する。また、町中の飲食店で食べられる料理ではサンドウィッチと同様の効果が得られる。欲しい効果に対する具材が揃っていないときはこちらを活用したい。

海の見える丘で筆者オリジナルBLTサンドを作り、ポケモンと戯れひたすらに写真撮影。主人公のきせかえもフィルタによる加工も簡単にできて無限に楽しめてしまう……。ハラバリーはゴムっぽい体表の質感を持ちながら全体的にプニッとしていてかわいいし、ソウブレイズはどこから眺めてもカッコいい。キリキザンが好きな筆者にとって、ソウブレイズの見た目は琴線に触れるものがあった。ハルクジラはやはりデカく、そしてホゲータはほげーっとしている。リキキリンとウミディグダがそれをじっと見つめていた。


このまま時間が止まればいいのになあと思うものの、現実は非情である。体験会は最終プログラムである通信機能「ユニオンサークル」を活用したテラレイドバトルへ移行。テラレイドバトルとは、制限時間の中で4人で協力し、テラスタルしている野生のポケモンに挑む、新しいバトルである。味方や自分のポケモンが倒れてしまった場合は、一定時間経つと復活する。無事に時間内で倒すことができればもとのタイプと異なるテラスタイプを持つポケモンを100%ゲットすることができる。基本的にはフィールド中に点在する光り輝く結晶に触れると挑むことが可能であり、結晶の色は出現するポケモンのテラスタイプに対応している。

テラレイドバトルの特徴はターン制でありながら、他プレイヤーの技を待つ必要が無いことだ 。野生のポケモン→プレイヤーA→B→C→Dという順番制ではなく、野生のポケモンに対して4人同時にバトルが進行するまたテラレイドバトル限定のコマンドとして、味方全体の攻撃・特攻アップ、味方全体の防御・特防アップ、味方全体の回復という3種類の「おうえん」を計3回まで使うことができる。複数人に対応したサポート用の技をポケモンに覚えさせていなくともプレイヤー間で簡単な連携が取れる良い工夫である。やがてポケモンを追い詰めると 、相手のポケモンの周りにエネルギーが集まり、シールドのようなものが発生。通常の攻撃ではHPを削りにくくなってしまう。そこでプレイヤーがテラ スタルを発動し、高い威力を持ってシールドを壊さねばならない。


試遊体験会ではかなり簡単にポケモンを倒せてしまったため、歯ごたえについては感じなかった。一方、『ポケットモンスター ソード・シールド』のマックスレイドバトルと比較すると、他プレイヤーのターン待ちが存在しない分、スピーディーにバトルが展開された印象を受ける。何度もテラレイドバトルに挑む必要がある場合、時間経過によって受けるストレスは以前より軽減されていることだろう。製品版ではゲームが進行するにつれ、強力なテラスタルポケモンが登場することが予想される。

オープンワールド化した意義


以上が今回の試遊体験の内容である。現時点における筆者の総合的なインプレッションとしては、オープンワールドであること自体がメインのゲームというより、フリーシナリオがメインという印象である。フリーシナリオやマルチプレイを通じたプレイヤー同士のリアルタイムの交流を実現するためのツールの1つとして、オープンワールドを採用した作品という感覚を覚えた。

というのも今回の試遊範囲において、オープンワールドを通じ、世界のディテールや、住民とポケモンの生活感を表現しきれているという印象はあまり受けなかった。たとえば、パルデア地方最大の都市であるテーブルシティにある飲食店、服飾店には「店内」の概念が実装されておらず、買い物はUIだけで完結している。自由に入れる民家もなかった。ポケモンと共に生活するNPCは確認できるものの、都市の大きさの割には少ないように思える。またハードウェアの性能の都合からか、主人公から近い距離こそ美しく映るが、遠景の描画は荒い。

一方、フリーシナリオを実現するという点において、本作が採用したオープンワールドという形は効果的に作用しているように思える。フリーシナリオ、ひいてはプレイヤー=主人公である形を採用したRPGにおいて重要なことは、プレイヤーひとりひとりの行動が異なるように仕向けること。自分だけの物語を描けるようにすることである。これまでの『ポケットモンスター』シリーズにおける、プレイヤーごとの差分を演出するための要素といえば、最近こそプレイヤーのきせかえ機能が実装されたものの、手持ちのポケモンのラインナップがメインであり、間にミニゲームが挟まりこそすれ、殿堂入りまでの筋書きはおおむね共通していた。だが本作では、最初からすべての場所に行けるオープンワールドとフリーシナリオの組み合わせによって、プレイヤーごとの個性をより演出することが可能になる だろう。友人や家族とのマルチプレイの際には連れ歩いた相棒をかたわらに、どのストーリーから手を付けた、どの地域にあるどの場所にいった、といったプレイスタイルの話に華が咲くこと請け合いである。

個人的に懸念していたストーリークリアまでのプレイボリュームについても大丈夫そうだ。本作ではおまかせバトルの実装に伴い、レベリングが非常に簡単にかつ早く済ませることができるようになっている。つまり、これまでの準備段階にかけていた時間が短縮されることで、クリアまでの時間もまた大きく短縮されてしまうものだと考えていた。自分にとってポケモンとは育成にかける時間とバトルがセットになっている感覚もあり、そこが削がれるのは体験としてどう変化するのかという心配もあった。だが3つのストーリーラインにおいて、それぞれここまで歯ごたえある戦いを楽しむことができるのであれば、体験のボリューム、量と質ともに問題はないだろう。下準備が楽になることで、多くの新しいプレイヤーだけでなく、復帰プレイヤーも見込めると思われる。まだ見ぬ強敵、新たに発見されたポケモンたちに出会うことが本当に楽しみである。

『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』が今回新たにオープンワールドとフリーシナリオの組み合わせを中心としたシステムを導入したことは、伝統を引き継ぎ、未来へと繋いでいくために意義のあることなのだと私は確信している。『ポケットモンスタースカーレット・バイオレット』は、Nintendo Switch向けに11月18日に発売予定だ。


また同時に、本作の発売に合わせて、ホリデーシーズン向けの新グッズやポケモンカフェに新メニューが登場する。こちらもぜひチェックして頂きたい。




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