『魔界戦記ディスガイア7』で、過去作から取り入れたものとか変えたものとは何か。発表記者会見で語られた言葉

日本一ソフトウェアは8月23日、『魔界戦記ディスガイア7』を発表した。この発表に先立ち、新情報を発表する記者会見が都内某所の和を意識した施設にておこなわれた。本稿ではその模様をお届けする。

日本一ソフトウェアは8月23日、『魔界戦記ディスガイア7』を発表した。2023年1月26日に発売予定。対応プラットフォームはNintendo Switch/PlayStation 4/PlayStation 5。この発表に先立ち、新情報を発表する記者会見が都内某所の和を意識した施設にておこなわれた。登壇したのは、日本一ソフトウェア元代表取締役社長である新川宗平氏(8月18日に社長を辞任)と、『魔界戦記ディスガイア7』作品ディレクターを務める美濃羽俊介氏だ。シリーズ20周年の記念タイトルになる本作について、一体何が明らかになったのだろうか。本稿ではその模様をお届けする。なお、本会見は2022年8月5日におこなわれた。

今度の『ディスガイア』は和風で弩デカく常識破壊


まず会見において大きなトピックとなったのは、『魔界戦記ディスガイア7』について、現段階における発表可能な内容の説明会である。説明会は本作のディレクターを務める美濃羽俊介氏が主導となっておこなわれた。美濃羽氏は『魔界戦記ディスガイア』シリーズファンであることを理由の1つとして日本一ソフトウェアに入社。好きな汎用キャラは「魔法剣士」と「呪術師女」。過去にはプログラマーとして『魔界戦記ディスガイア4 Return』『魔界戦記ディスガイア5』に関わっている。海外展開に関する業務も経験している。氏いわく、「自分はファン上がりのディレクターであるため、自分が思う最高のディスガイアを作りたい」とのことだ。


『魔界戦記ディスガイア7』の舞台になるのは和をイメージした魔界。金の亡者であるはぐれ武士「フジ」と、金持ちオタク少女「ピリリカ」の凸凹コンビによって日ノ本魂を取り戻す物語が描かれる。作品のキーキャラクターとして何人もの「クセモノ」たちが登場することが発表されている。これまで「和をイメージした魔界」はシリーズ内に登場することはあったものの、重点的に掘り下げられる機会には恵まれなかった。美濃羽氏によると、直近の作品はさまざまな世界を渡り歩く物語を展開したため、今回は1つの魔界にフォーカスした作風を採用したそうだ。


『魔界戦記ディスガイア7』における新システムについては、まず「弩デカ魔ックス」が発表された。これはフィールド外に弩デカいユニットを配置することで、ユニットごとに異なる効果をフィールド全体に発動できるというものだ。分かりやすく強いシステムとして、初心者向けの要素である。会見では具体例として、フィールド全体を攻撃する能力や、フィールドのユニットすべてにプリニーの能力である「投げると爆発する」特性を付与するなどといったものが紹介された。当然ながら「弩デカ魔ックス」は敵も利用してくる、というより基本的に敵が利用してくるのに対し、こちらが対応するという形式になっているという。そのためフィールド効果を塗り替えるべく、こちらも弩デカいユニットを出してユニット同士、盤外のダイナミックな戦闘をおこなうシステムも用意されているようだ。


次に発表されたのは「武器技」の復活と「アイテム転生」の実装だ。「武器技」とは数種類ある武器を使い続けていくと覚えることができる強力なコマンドのことである。前作ではオミットされた要素だったが、ファンの要望を受けて復活することになった。これに合わせてさらなる強化要素「アイテム転生」が実装。強化したアイテムを転生(『魔界戦記ディスガイア』シリーズにおけるレベルリセットを意味する用語)させることで、武器に備わっているステータスや特性などを引き継ぎながら異なる武器種に変換させることができるようになる。たとえば、剣と槍の武器種を同時に持った装備を作り、剣と槍の武器技を1つの武器で両立させることができるようになるとのことだ。


自動戦闘システムの仕様変更も発表された。前作で賛否を呼んだ新要素「自動戦闘システム」は、今作では「魔ソリン」という数値を消費しておこなう形式となり、攻略過程を完全スキップすることも可能(攻略した結果と報酬だけが表示される)。魔ソリンは自動戦闘を使用せずステージをクリアすれば一定数増える。この変更に合わせて、ステージ報酬の仕様も変更。魔心エディットは強化された。ステージの報酬には特定の条件を満たして攻略することで追加報酬を獲得できるミッションが登場している。(たとえば特殊技を10回以上使用してクリアなど)この追加報酬をすべて回収できるように魔心エディットはより複雑なコマンドを入力できるようになっている。美濃羽氏いわく、可能な限り自動戦闘における作業感を取り除き、達成感が生まれる内容にしたかったとのこと。ちなみに、本編の攻略難易度は『魔界戦記ディスガイア5』を基準に調整しているという。


魔心エディットを利用したシステムとして、育てたユニットを魔心エディットで戦わせるオンライン対戦機能が実装されることが決定。『魔界戦記ディスガイアPORTABLE 通信対戦はじめました』や『魔界戦記ディスガイア4』の”界賊デュエル”以来の対戦機能である。プレイヤーの対戦成績に応じてレートが変動し、一定期間内に好成績を収めた者はランキングに掲載される。参加することで貰える報酬もあるようだ。今作は3Dモデリングのノウハウが社内に蓄積されたことにより、シリーズ最多45体の汎用キャラクターが3Dで実装されることになっている。好きなキャラクターで上位入賞を目指したり、SNSを通じて育成論を共有するなど、「やり込み」の魅力やユーザーコミニュティの盛り上がりがより高いものになると予想される。

シリーズ20周年と「ディスガイア魂」


会見のなかでは、新川宗平氏より直々に『魔界戦記ディスガイア』シリーズのこれまでの足跡を簡単な形で振りかえるコーナーも用意された。『魔界戦記ディスガイア』が2003年に発売されてから、『魔界戦記ディスガイア7』の発売で20周年を迎える『魔界戦記ディスガイア』シリーズ。作品の興りや、シリーズに込めたコンセプトが改めて語られた。

まだ日本一ソフトウェアの開発ラインが1本しかなかったころ。2002年1月31日『ラ・ピュセル 光の聖女伝説』が発売された。最高レベル9999や、アイテムレベルの実装など、後に『魔界戦記ディスガイア』シリーズへ受け継がれる「やり込み」というプレイスタイルの原点と呼べるような個性を持った作品であった。しかし新川宗平氏いわく、売上自体は芳しくなかったという。当時は開発ラインが1本ゆえ、同時並行で作品を複数作れない。ゆえに次作で失敗はできなかった。そこで開発陣が取ったのは、攻めの姿勢だった。「何が売れるのかさっぱり分からない。だったら徹底的に好きなもの、良い作品を作ろう」と。


舞台をなんでもアリの魔界にして主人公を魔王にすれば、設定上、どんなにユニークなシステムを盛り込んでも作品全体の違和感がないだろうと考えた開発陣。結果、シミュレーションRPGの常識をぶち壊す数々の要素を特徴とした日本一ソフトウェアの代表作『魔界戦記ディスガイア』が産声を上げた。その姿、まさに破壊的。レベル9999と驚異的なステータスによって生まれる億超えダメージ。敵味方のユニットを掴んでブン投げる「持ち上げ&投げ」。武器と防具に底なしの成長の概念を付与する「アイテム界」。ゲームの設定をいじくり回す「暗黒議会」。決死の覚悟で作られた掟破りの異端児は、「良いものを作ろう」という開発陣の作品に込めた思いが無事ユーザーに伝わり、発売から1ヶ月で13万本以上を売り上げた。当時の日本一ソフトウェアにとっては快挙であった。その後も口コミを通じ国内で順調なセールスを記録。アトラスUSAを通じて海外でもパブリッシングされ、こちらでも好評を博した。


こうして生まれたシミュレーションRPGタイトルの雄『魔界戦記ディスガイア』。退路を断って無我夢中に思いを込めた。他の会社が挑戦しなさそうなゲーム体験をユーザーに提供するべく奮闘した。この「チャレンジ精神」と「サービス精神」はシリーズコンセプトの根幹たる「ディスガイア魂」として後作に受け継がれている。事実、シリーズ全体としては現時点で国内累計出荷本数は220万本。全世界累計出荷本数は500万本以上というロングセールスを達成している。

なお、現在ナンバリングタイトルとしては『魔界戦記ディスガイア PC』『魔界戦記ディスガイア22 PC』がSteamより発売中。『魔界戦記ディスガイア Refine』『魔界戦記ディスガイア4 Return』『魔界戦記ディスガイア5』『魔界戦記ディスガイア6』がNintendoSwitch/PlayStation 4/PC(Steam)に対応して発売中。『魔界戦記ディスガイア6』についてはPlayStation 5版も別途発売中。新川宗平氏いわく、新作発売までにぜひ遊んでみて欲しいとのことだ。

以上が今回の会見内容である。『魔界戦記ディスガイア7』はまだまだ謎が多いものの、確かに「ディスガイア魂」を感じさせてくれるものだった。新たな情報公開の機会が待ち遠しいばかりだ。シリーズ20周年記念タイトル『魔界戦記ディスガイア7』は2023年1月26日に発売予定。対応プラットフォームは、Nintendo Switch/PlayStation 4/PlayStation 5となっている。

Takayuki Sawahata
Takayuki Sawahata

娯楽としてだけではなく文化としてのゲームを知り、広めていきたい。ジャンル問わず死にゲー、マゾゲー大好き。

記事本文: 276