コロプラ新作『ユージェネ』先行プレイから見えてきた「ポテンシャル」と「課題」。投げ銭ビジネス導入の新作ゲームは、ゲームたりうるのか

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“これまでの常識を一新させる、時と場所を超えた「#ゼロ距離エンターテインメント」を提供する”。これは仮想アイドルによるライブ配信と、スマートフォン向け作品としてのゲーム要素を融合させた作品『ユージェネ』が掲げる至上命題である。しかし、「常識を一新」とは何を意味するのか。「時と場所を越えた」「ゼロ距離」とは何なのか。今回幸いにしてメディア向け試遊体験会に参加させていただいた。その模様をお届けしよう。


『ユージェネ』はLIVE×GAMEによって生み出された新ジャンル「LPG(Live Playing Game)」を謳うスマートフォンアプリである。配信予定日は4月21日。開発を手がけるのはコロプラだ。プレイヤーは3人のアスタリスタ……「瀬戸さくら」「田中・コズミック・天(ソラ)」「アニャ」と共に、謎の存在「アイズ」の襲来によって滅びゆく世界の再生を目指し奔走することとなる。

本作はオープンワールドで行われる「マップゲーム」と3人のアスタリスタによる「定期ライブ配信」という、まったく異なる要素を1つのアプリの中で完結させていることに大きな特徴がある。なお本稿では「マップゲーム」→「定期ライブ配信」の順に取り上げていく。筆者のプレイ時点では、ゲームが試遊版の内容であることにも留意してほしい。

ストーリーが展開されるマップゲーム


まずは「マップゲーム」から紹介していこう。ゲームが進行していくのはこちらのパートがメインとなっている。『ユージェネ』は世界を転々とするアスタリスタの3人が、一面砂漠と化した世界で、とある機械「ロイド」=プレイヤーを掘り起こすところからスタートする。

会話中には常にポップな字幕が表示され、これにキャラクターの生々しいモーションが合わさることでゲーム内にはシリアスなドラマではなく、VTuberが出演するバラエティ番組を彷彿としたノリと雰囲気が常に漂っている。ロイドとしての肉体を得て私が降り立ったのは、本作の舞台となる「#世界」(ハッシュワールド)。いわゆる多元宇宙のように無数の世界が存在しているが、すべての世界が謎の侵略者「アイズ」の脅威にさらされており、滅びの際に立たされている。

この「#世界」は我々の現実世界をモデルに制作されたオープンワールドであり、Google マップの地形標高をそのままフィールドデザインに利用。それだけではなく、インタラクション可能な簡易オブジェクトとして、現実のランドマークが(姿は異なるものの)現実の位置に存在している。筆者が遊んだ際は試遊版ということで無人の荒野だったのだが、今後は各地に市街地をイメージしたオブジェクトなどを設置していくという。GPSを搭載しているため、位置情報ゲームのような遊び方もできる。たとえば、北海道でアプリを起動すると、ロイドを瞬時に北海道に相当するエリアへ飛ばすことができる。当然ながら飛ばさない選択も可能。いわゆるファストトラベル機能に関しても導入する予定とのことだ。

さらにプレイヤーの分身であるロイドはパーツを組み替えることでカスタマイズができる。移動速度の上昇や専用エリアへの到達が可能となるなど、さまざまな恩恵を受けられるため積極的に試していきたい。


マップ中にはアイズの侵略地が、空間上に開いた穴として出現。アスタリスタをサポートする研究者「クレイ」による指示のもと、私は彼らを迎撃しに向かうことになった。いわゆるチュートリアルである。当該地点に到達すると、撃滅対象であるアイズが出現。写実的なマテリアルにそのままアイコニックな瞳が乗ったアイズの姿は、造形作品として最初からバランスが崩壊しており、見ているだけで気分が悪くなる。世界の異物であり、外部からの侵略者であることを我々へ端的に伝えてくるデザインである。

そんなアイズの撃退方法は、ジャイロ操作を使った簡易なシューティングゲームだ。赤くきらめく弱点に向け、パネルをワンタッチで光弾をぶつけていく。なおジャイロ操作とは、デバイスを直接動かすことでカーソルを動かす操作方式。たとえばスマートフォンを正面向かって右に傾けると、傾けた分だけカーソルも右に動く。直感的でスピーディーな操作が可能という特徴を持ち、『スプラトゥーン2』や『PUBG MOBILE』など、現在ではシューティングゲームを中心として、ターゲッティングを必要とする作品に採用されている。

私はこの操作を採用した作品群をある程度プレイしているため特につまずくことはなかったのだが、試遊会参加者のなかには苦戦している方もチラホラ見受けられた。たしかに筆者もはじめてこの操作を体験したときは悪戦苦闘したものだ。慣れるまで時間がかかるかもしれないが、一度コツを掴んでしまえばもう戻れない快適さを誇る方式である。


サクッと2度にわたりアイズを撃破。彼らを倒すと報酬として「#のカケラ」が手に入るほか、アイズが取り付いていた対象がある程度復元される。彼らを倒し続け復元が完了すると、「エール」というアイテムとしてライブ配信内で使用することが可能となる。

なお、本作には俗に言う「スタミナ制」が採用されており、プレイヤーが一度のプレイを通じ、フィールド内で移動できる距離には限界がある。スタミナの回復には時間経過や課金アイテム消費のほか、先述した現実に存在するランドマークのアイコンに触れることで一定値回復することが可能。開発者によると、アイコンに触れて絶えずスタミナを回復することができれば、フィールドの北端や南端(すなわち現実で言う北海道や沖縄)へ一気に到達することができるという。また、本州から外に出る際の移動に関しては特殊なギミックを用意しておきたいとのことだ。

チュートリアルの終わりと共に、マップゲームはこれにて終了。スタッフの誘導によって試遊体験はアスタリスタによるライブ配信へと移行した。

アスタリスタと直接交流できるライブ配信

 
ライブ配信にはメニュー画面から移行することができる。ライブ配信は毎日「コアタイム」(夕方〜夜)に一回放送され、1つの枠の収容人数に関しては現状10万人程度。放送枠の数を増やすこと関しては、サービス運用後に検討していくとのことである。つまり、毎日ある程度決まった時間にゲーム内にてライブ配信が行われるわけだ。

今回の試遊体験会では「アニャ」がメインアクターとして登場。始まったのは2種類のゲームを使ったバラエティーショーだ。視聴者は用意された競技型のゲームをプレイし、それに合わせてアニャが「みんな頑張って!」とリアクションを取ったり、アニャ自身がゲーム内容に干渉することで番組が進行していく。プレイヤーはリアルタイムでコメントをうち込むことができるほか、ゲームを通じて「Liveポイント」を入手することができ、1回の放送でどれだけポイントを獲得できたかを競う、ランキングも用意されている。

そして「Liveポイント」は、マップゲームパートで修復した「エール」をステージに投げ入れることで獲得することも出来る。というより、「Liveポイント」を稼ぐ手段としてはこちらがメインとなる。「エール」をステージへ投げると、コロプラによる独自のリアルタイムレンダリング技術により、まったくの遅延なく即座に番組へと反映される。たとえば郵便ポスト型のエールを投げ入れると、番組内のステージにポストがそのまま出現。アクターが「〇〇さんポストありがとう」と送られてきたエールに対してリアクションを行う。イメージとしてはYouTubeで言う「スーパーチャット」や、Twitchで言うところの「ビッツ」といったプライズ、ようするに「投げ銭」を想像してもらえば分かりやすいだろう。

「エール」はアイズの撃破報酬である「#のカケラ」を消費して投げ入れることができるほか、ゲーム内課金を通じて専用の「エール」を送ることもできる。「エール」にはそれぞれステージ内に表示される確率が設定されており(エールを送ったこと自体はコメント欄を通じて画面に表示される)、当然ながら課金して投げる「エール」のほうが、確率も得られるLiveポイントも高い。なお、課金額には上限がないため、注意書きは表示されるもののご利用は計画的に。「Liveポイント」を集めると、最終的には限定ライブへの参加や限定アイテムの獲得が可能となる。


さて、アニャが用意してくれたゲーム第一弾はりんごをモチーフとしたもぐら叩きだ。りんごが出現する速度は意外と速く、中には見た目そっくりな爆弾が混じっており、誤タップすると減点のペナルティを受ける。「見た目の割に結構難しいな…」と迫る制限時間を前に焦る筆者のそばで、「ゲームだけじゃなくて私も見て!」と、参加者へたっぷりの愛嬌をふりまくアニャ。彼女の可愛げな声に思わず視線がブレる私。間違って爆発する爆弾。爆発しまくる爆弾。振るわない点数。…………ううっ……参加者を応援してくれたアニャに向け、さまざまなエールが飛び交うなかで、私はそっと画面右下のプレゼントボタンを押し、「コスチューム変更のメニュー」から彼女にウマの被り物をかぶせたのだった。

本作では課金要素として、専用エールのほかにも「生着替え」と称し、その放送限りのリアルタイム着せ替えが可能(Liveポイントも入手できる特典あり)。学生服から部屋着まで、羽を生やしたり被り物をさせたりと、多様なコスチュームが用意されている。変更内容は他プレイヤーから見えないため、ひっそりといろいろな衣装の組み合わせを楽しむことができる。流石に天使の羽が生えたウマ頭は絵面が最悪なため、早々にアイドルらしい衣装へアニャを戻すことにした。変更にはまったくの遅延がなく、コロプラの技術力に改めて驚かされた。

次に始まったのは、ジャックと豆の木をモチーフにしたあみだくじゲームだ。くじはところどころ線が欠けており、アニャが参加者のコメントに応じて線を埋めていく。ファンとのコミュニケーションをメインに据えたゲームである。「どれにしようかな~」とアニャが思案するなか、私は先のもぐらたたきゲームの結果のせいで、大の大人にも関わらず若干拗ねており、「どうせ俺のコメントは読まれないんだ」と斜に構えながらライブ中のAR要素を試すことにした。デバイスを通して現実空間上にキャラクターモデルを召喚するアプリは数あれど、『ユージェネ』はリアルタイムで不規則に動き続けるモデルを出現させるという点によりほかとは一線を画している。


「なん…何だこれは! 近い近いッ!!」単に背景が変わるだけではない、アニャとの距離がステージと観客席のような通常の状態とは異なり、目と鼻の先ていどの距離までぐっと近づいた。ここまで近づいてなおモデルがまったく崩れないのは素晴らしいの一言である。

流石に筆者が過去経験したVRゲームや大規模なARライブの体験にはおよばないものの、手元にあるスマホ越しにアニメ調のキャラクターが存在し、私達に向けてパフォーマンスを行っているという状況は、背景が持つリアリティとキャラクターそのものの非実在性が混ざり合い、興味深い経験を筆者へもたらした。

そもそも古来より偶像を通じた神秘体験を得るには、非現実な存在と同じ目線に立ってコミュニケーションを行うには、彼らに合わせた「非現実的な空間」が必要だった。その歴史は儀式を行う簡易な祭事場を原点とし、神殿や寺、神社といった専用の建築物から、ライブ会場、現在はVR空間やストリーミングという、そもそも「現実に存在しない場所」へと至り、偶像だけでなく参列者も「肉体が会場に在る」必要がなくなった。だがここに来てコロプラが行った、「私達に合わせた空間上」、それも目前の日常にアスタリスタを降臨させるという行為は、上記の潮流とはまったくの逆を征くものだ。

これが意味するところは、単に彼女らが持つ神秘性を大いに剥奪し、共に世界を救う戦友に近しい存在とするためだけではなく、コロナ禍を通じ、仮想に侵食されたことで生まれた「新たな現実」が持つ不完全性を、埋め合わせる体験の提供である。リモートワークやデリバリー、無観客イベント、テレビ電話を通じた遠隔飲み会。本来ならば人間が持つ五感同士の繋がりによって遅延なく即座に情報をやり取りできるはずが、間に関係のない他人や「仮想」という枠組みを挟んだことで十全なコミュニケーションや満足行く体験が出来なくなっている。それが常態化している現状がある。

つまり、会いたい人に直接会えないことが「新たな常識であり現実」になった。だからこそコロプラは毎日一定の時間に直接会える存在を用意したのだと思われる。コロナ以前でなら「独りという状況を解消する」以上の意味を持たなかっただろうが、現在であれば「旧来のリアル」を提供するという役割を持たせることが可能となる。これが過去への執着とみなされるか、作品が掲げる命題通り、常識をアップデートするための一助になるかは時代が決めることだろう。だからこそ本作の行く末を見届けなければならない。私は強くそう思った。


ゲームが終わったら次は歌唱パフォーマンスの時間。本作の主題歌を可憐に歌い上げるアニャに合わせるかのように、色とりどりのエールが会場一面に咲き乱れる。開発側としては今後複数人での番組放送のほか、新規楽曲の発表および配信などを予定しているという。ゆくゆくはアスタリスタ自体の人数を追加したり、VRにも対応したいとのこと。なお過去に行われた配信は1週間程度アーカイブとして視聴可能にするようだ(Liveポイントの入手は出来ない)。

会場は大盛りあがりのすえ、アニャの「またね」という言葉と共に筆者の試遊体験は幕を閉じた。


改善が必要な点がチラホラ


今回『ユージェネ』を遊んだプレビューとしては、現実を転用した広大なオープンワールドや、近寄っても粗さが見られないキャラクターモデル、リアルタイムレンダリングを使用した遅延なしの放送など、個々の技術面でかなり光るものがあると感じた。一方で試遊版ということもあってか、ゲームそのものにはブラッシュアップが必要な段階にあると感じられた。

特に筆者が問題に思うのは、体験会時点における本作のゲームバランスである。『ユージェネ』における基本的なゲームフローは、マップゲームでアイズを倒し、報酬をエール(投げ銭)に変換してライブで消費。「Liveポイント」を獲得し、ランキングの掲載や限定コンテンツを目指すというものだが、「Liveポイント」の獲得量で考えると、マップゲームを遊ばず、番組内のゲームに参加せずとも、その場でじゃぶじゃぶと課金したほうが、課金額の制限もないため圧倒的に効率がよい。つまり試遊時点でのバランスではゲーム部分から得られる報酬の多くを「プレイせずとも」課金で代替可能になっている。その結果、ゲーム部分に触れる必要性を見いだせない参加者が出現し、本作が掲げるLIVEとGAMEの融合、LPG(Live Playing Game)という、消費者に向けた商品コンセプトが崩壊する可能性がある。

また、設定の大部分を占めたゲーム部分をプレイしなくてもよいのなら「アスタリスタ」の3人が「アスタリスタ」である理由も薄くなる。あくまで『ユージェネ』が株式会社コロプラの番組チャンネルではなく1ゲームであると名乗るのであれば、ゲームに「非課金者向けの救済措置」以上の地位を与え、すべてのプレイヤーに遊んでもらえるようなバランス調整を行ってほしい。

この「ゲーム部分を遊ぶ動機づけ」の問題に際し、開発側は特定エリアでしか手に入らないエールの存在や、普段よりポイントが多く報酬がもらえるアイズを不定期で登場させるなどして解決を図ろうとしているようだ。しかし前者に関してはそもそもエールが持つ、「投げた結果が必ずしもステージ上に反映されるわけではない(課金エールのほうが表示される確率が高い)」=必ずしもアスタリスタから反応をもらえるわけではないという仕様が存在する限り解決には至らないのではと考えられる。後者に関しても課金の方を得にするしかない以上、報酬を増やすにしても限界があり、あまり意味はないのではないか。

ライブの内容に関しても気になる点があった。それはミニゲーム中アスタリスタたちがゲームの参加者ではなく司会者、出題者の立場に居たことだ。本作はさまざまな点で“ゼロ距離感覚”でのコミュニケーション(#ゼロ距離エンターテインメント)を売りにしているのだが、番組が始まったとたん既にアスタリスタとの立場上の距離が出来ているように感じた。プレイヤーたちとは異なりゲームを遊んでいない立場にあることで、アスタリスタが放送中、エールの贈呈具合や、放送内容と関係のない話題を話すしかなく、手持ち無沙汰になっている感覚もあった。

「想像していたものと違うだけでは?」と言われてしまえばそうかも知れないが、“ゼロ距離感覚”のコミュニケーションを売りにしているのだから、もっとプレイヤーとアスタリスタの距離が縮まるような、たとえばアスタリスタとプレイヤーが競い合うようなミニゲームなどをたくさん用意してほしいと思う。


日常の舞台が仮想に置き換わりつつある今、現実を模した世界で冒険し、毎日直接会える存在を提供する。なるほどこれが“時と場所を超えた「#ゼロ距離エンターテインメント」”の正体か。まだ改善が必要な状況であることは否めないが、常識を一新させるポテンシャルを秘めた作品であることもまた確かである。現在『ユージェネ』は本サービス開始に向け事前登録キャンペーンを実施中。鬼が出るか蛇が出るか。株式会社コロプラが送る未知の体験に、あなたも飛び込んでみてはいかがだろうか。『ユージェネ』は4月21日配信予定だ。

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