数の暴力を質で圧倒する爽快ハイスピードフライトSTG『有翼のフロイライン Wing of Darkness』、BitSummit 7 Spiritsプレイレポート


日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit 7 Spirits」が6月1日から2日間、京都市勧業館「みやこめっせ」を会場に開催された。国内外から珠玉のインディーゲーム開発者が集うほか、任天堂やソニーなど大手企業も出展し大いに盛り上がりを見せていたが、本稿ではそんな「BitSummit 7 Spirits」会場に出展されていた作品の中から、国内のインディーゲームディベロッパーProduction Exabilitiesが手がける『有翼のフロイライン Wing of Darkness』を紹介する。また、今回はProduction Exabilitiesから快くイベント出展用の試遊版ビルドをお借りしたので、記事の最後に掲載されている動画も合わせてご覧いただきたい。

『有翼のフロイライン Wing of Darkness』は、フロイラインと呼ばれる少女たちの戦いを描く、ハイスピードフライトシューティングゲームだ。舞台となるのは、突如「ブランカー」と呼ばれる未確認飛行物体が顕現した世界。「ブランカー」に対して唯一まともに渡り合える専用装備ヘルトシステムに適合した少女たちが「ブランカー」と戦う使命を背負って、その身を兵器として空を舞う。主な登場人物は、6人姉弟の長女で、故郷や友人など身近なものを守るためフロイラインとなったクラーラ・エルンスト。軍人家系に生まれた3人兄妹の末っ子で、士官学校を飛び級し実直で融通が利かない性格のエーリカ・レールツァーの2名。3Dで表現された空を駆け、敵を撃ち落とすフライトシューティングパートと、カットシーンで少女たちの日々を表現する日常パートの2パートで構成されており、戦闘と日常の両面から物語が紡がれるそうだ。

「BitSummit 7 Spirits」に出展されていた試遊用のバージョンでは、フライトシューティングパートのチャプター1から3がプレイ可能となっていた。ゲームプレイが始まって最初に感じたのは、スピーディーに展開される空戦がとにかく気持ちよく遊べること。プレイヤーが操るクラーラ・エルンストは、LTに割り当てられていたブーストを噴射させれば即座に加速し、画面の中を縦横無尽に駆け巡る。これは戦闘が始まっても同じで、ミサイルはボタン長押しでロックオンされ、対象を補足するのにも時間がかからない。プライマリー兵装とセカンダリー兵装として装備出来る装備群も、どこを狙えば当たるのか表示してくれる上、時間経過に伴って弾薬が回復するので、残弾に気を配らずトリガーハッピーになれるのもポイントが高い。機体性能が高いためか、全体的にレスポンスがよく、思った通りに画面の中を動いてくれるので、とにかく気持ちよくプレイできることが印象的だった。

そんな操作性の上で敵と戦うのだから、大きな敵を秒殺したり、多数のフロイライン混ざりの編成相手に上手く立ち回った時の爽快感はかなりのもの。並み居る敵を寡兵で圧倒し、数ならぬ質の暴力を見せつけて回ることの他に何がいるだろうか。気持ちいいだけではなく、開発者が想定している難易度だというノーマルでも、無計画に敵の前に飛び出すなど、あまりにも迂闊な行動を取れば撃墜されるリスクはしっかり用意されていて、緊張感を損なわないようになっている。

また、ミッション前のロードアウトからミサイルを含む装備群が選択可能だ。プライマリー兵装は、オーバーヒートしにくいが威力が低いマシンガンの「ステープラー」。近距離専用のショットガン「ドラケン」。高い威力を誇る遠距離用のバトルライフル「ジャベリン」の3種類。セカンダリ兵装は、高い威力を誇るがオーバーヒートしやすい滑空砲「ストライカー」。範囲が広いロケットランチャー「アヴェルス」。高い発射レートを誇るガトリング砲「ソウ」の3種類。ミサイルことターシャリ兵装としては、補足数が多く威力が低い「クラビア」と、威力が高いが補足数の少ない「ゲシュテーバー」の2種類。プレイヤーの好みやチャプターに合わせて選択できるように、それぞれ個性的な装備が実装されている。

ミッション中に展開されるクラーラとエーリカの掛け合いも印象的だった。チャプター1の終盤、震えた声で自らを鼓舞しようとするクラーラに対し、冷静に自分一人で十分だったと振り返るエーリカ。対象的なクラーラとエーリカ───二人の少女が戦闘を経てどのような関係を築き、どんな物語を紡ぎ出すのか、ゲームプレイを通じて描かれる物語にも注目したい。 

前述のとおり、『有翼のフロイライン Wing of Darkness』はProduction Exabilitiesが開発中のゲームである。今年1月にインディーゲームのパブリッシングを行っているソニーのレーベル「UNTIES」と協業体制を発表し、PC版に加えてPlayStation 4版のリリースも予定されている作品だ。今回のプレイレポートでは主に爽快なゲームプレイについて触れてきたが『有翼のフロイライン Wing of Darkness』の持つ魅力はゲームプレイだけではない。

PVなど動画から確認できるハイクオリティなグラフィックや、カットシーンで構成された少女たちの日常紡ぎ出すパートも『有翼のフロイライン Wing of Darkness』の魅力だ。「BitSummit 7 Spirits」の会場でProduction Exabilitiesのプロデューサー凪良一二三氏にお話を伺ったところ、『有翼のフロイライン Wing of Darkness』では、PS2時代の国産タイトルが持っていた魅力を目指し、グラフィックやゲームプレイは勿論全てに拘って制作を進めているとのことなので、完成版のクオリティには大いに期待が持てるだろう。また、現在の進捗状況は全体の4割から5割程度。アセットやボイスなどを含め素材が揃ったところだといい2019年内のリリースを目指して、開発が進められているそうだ。

※ チャプター1の動画では、Xbox360のコントローラーを手に、録画設定を見直しつつ何度も繰り返しプレイした為、本作のスピード感ある爽快なゲームプレイが確認出来ると思う。チャプター3の方では大型機がかなり頑丈で、チャプター1ほど爽快なプレイとは行かなかったが、ハードモードを選べばかなり手応えるのあるゲームプレイが味わえるのではないだろうか。なお、筆者の私物PCで撮影しているため、トレイラーやイベント会場で試遊させてもらった記憶に比べ、少々グラフィックの低下が見られる点には留意していただきたい。