国産アドベンチャーゲーム『UNREAL LIFE』。あたりまえの日常の中、失ってしまった記憶を少女が取り戻す

いつもと同じ信号と電柱、アパートが立ち並ぶ町。ときどきカラスがゴミをあさったりもする、そんな日常の風景。だけどある日突然、なにもかも記憶を失ったしまったなら?いつも目にする風景は、一転して迷宮に変わり、プレイヤーは未知の世界へと放り出されてしまう。

いつもと同じ信号と電柱、アパートが立ち並ぶ町。ときどきカラスがゴミをあさったりもする、そんな日常の風景。だけどある日突然、なにもかも記憶を失ったしまったなら?いつも目にする風景は、一転して迷宮に変わり、プレイヤーは未知の世界へと放り出されてしまう。Tokyo Indie Fest 2017に展示されていた開発中のアドベンチャーゲーム『UNREAL LIFE』では、いつも目にしていたはずの日常風景が、記憶を失うことでまったく見たことのないもの変わることを追体験させる。

ひとりの少女が路上で目を覚ました。自分が誰で、なぜここにいるのかがわからない。何も思い出せないままでいると、誰かが自分にしゃべりかけてくる。自分のことを知っているのだろうかと声を聴いてみると、なんとしゃべりかけてきたのは信号機だった。話を聞いてみると、どうやら自分には何かに触れるとその物体が持つ記憶を見ることのできる、いわゆるサイコメトリーの能力があるらしい。信号機は、その能力を使って失った記憶に関係するものを見つけ、記憶を思い出していくことを勧める。

少女はその言葉どおりに町を歩いていく。どこにでも当たり前にあるような電柱やアパートに、自分の記憶に関わるものが見つかるのかどうかもわからない。なにかヒントがあるかもしれないと落ちている靴を見つめると、その靴が持っている記憶が自分の中に流れ込んでいく。果たしてこれが自分の記憶なのかどうか。信号機と見つけた記憶について話しながら、自分は何者だったのかを探していく。

『UNREAL LIFE』の特徴は本作のテーマ通り、記憶を取り扱うことだ。ある物体をサイコメトリーして取り出した記憶は、アイテムのように“靴の記憶”や“電柱の記憶”としてストックされる。目を閉じて見つけた記憶をセットすることで、信号機がその記憶について教えてくれたり、調べる場所が変わっていく。今回のデモの範囲だが、見つけた記憶が自分のものなのかそうではないかどこか曖昧になってしまう点を、筆者は面白いと感じた。

制作されたhako生活氏にいくつかお話をうかがってみたところ、繰り返し語ってくれたのは「日常がある日突然非日常になってしまう」ことを重視しているということだった。 グラフィックを見ていただくと『Strange Telephone』にとても似ており、そのあたりについて聞いたところ、実際に作者のyuta氏と連絡を取り合う関係だという。制作に使用しているゲームエンジンも同じLove2Dを使っているということもあり、開発の情報を共有しながら制作しているそうだ。Twitterで知り合ったとのことで、制作中の『Strange Telephone』で電話機のグラハムと異世界を探索していくという構想をみたとき、『UNREAL LIFE』の信号機を相棒にする構想に偶然似ていたことから連絡するようになっていったという。本作でもyuta氏はスペシャルサンクスとしてクレジットされるそうだ。

バグの中を冒険していく異色のアクション『BUGTRONICA』

また参考になった作品も伺うと、ios向けの無料作品であるバグの世界を冒険していく2Dアクションゲーム『BUGTRONICA』を挙げてくれた。こちらからは日常から非日常的に飛び込む世界観に影響を受けたことを話していただいた。

ほかにも、特にインスパイアを受けたものには、日本のオルタナティブロックバンド「The Back Horn」を挙げてくれた。同バンドは「機動戦士ガンダム00」の主題歌を担当したり、映画監督の黒沢清の作品「アカルイミライ」で印象深いエンディングテーマを歌い上げるなど、強い物語性を持つ作風から数多くの映画に楽曲を提供している。hako生活氏はこういった楽曲を好んでいるそうだ。

『UNREAL LIFE』はまだ制作の初期段階であり、完成はまだ先になるという。お話をうかがった中で「普段生活している日常を繰り返していて、急に変なことが起こったほうがワクワクする」という言葉が印象深かった。プレイヤーの日常が急に変わってしまうという体験が追求された出来になることを期待して、完成を待ちたい。

Hajime Kasai
Hajime Kasai

ブログ「GAME SCOPE SIZE」を運営。その他のメディアにも寄稿しています。

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