Steamで“Epic Gamesストアよりもゲームが売れる”理由を、元EGS時限独占ゲーム『Witchfire』開発者が分析。大事なのは「コミュニティ感」
Epic Gamesストアの時限独占タイトルであった『Witchfire』の開発者が、Steamの方がゲームが売れる理由についての見解を述べている。

PCゲーム市場においてはValveの運営するSteamが圧倒的なシェアを誇っているとみられ、ほかのプラットフォームでは購入しないというプレイヤーも少なくない。こうした状況について、FPS『Witchfire』の開発を手がけたAdrian Chmielarz氏が海外ゲーム系メディアFRVRのインタビューにて言及。Epic Games Store(以下、EGS)とSteamの違いを端的に表現した発言が注目を集めている。
『Witchfire』は、『The Vanishing of Ethan Carter』の開発元として知られるスタジオThe Astronautsが開発したローグライクFPSで、当初はEGSでの時限独占タイトルとして早期アクセス配信が行われていた(関連記事)。その後Steamでも早期アクセス配信開始され、現在までに累計50万本以上を販売するヒット作となっている。Steam版配信後には最大同時接続プレイヤー数が数千人規模に達しているほか(SteamDB)、本稿執筆時点で1万件を超えるユーザーレビューにおいて92%が好評とする「非常に好評」を獲得するなど、着実に支持を集めている。

Chmielarz氏はEGSでの独占契約について、「競争があること自体はとても良いことだ」と前向きに評価している。同氏によれば、開発初期にEGSの支援を受けたことで資金難から救われ、スタジオとしての独立性を維持できたという。過去作だけで新作を支え続けるには限界があり、EGSとの契約がなければ『Witchfire』の開発継続は困難だったと振り返っている。
この時限独占はスタジオだけでなく、EGS側や最終的なSteamユーザーにとってもメリットがあったと同氏は語る。EGSは一定期間の独占タイトルを確保でき、開発側は小規模なユーザー層を相手にゲームを磨き上げる時間を得た。その結果、Steam版ではより完成度の高い状態で作品を届けることができたという。
一方でChmielarz氏は、なぜ多くのプレイヤーがEGSでゲームを買いたがらないのかについても率直に言及している。その理由として挙げられたのが、Steamが単なる販売プラットフォームではなく「居場所」になっている点だそうだ。同氏は「EGSはショップであり、Steamはコミュニティだ」と語り、両者の決定的な違いを説明している。

Steamにはレビュー機能やフォーラム、ガイド、ワークショップ、アートワーク投稿、コメント欄、Steamポイントなど、ユーザー同士が交流できる仕組みが数多く用意されている。各ゲームごとに存在するコミュニティハブでは、開発者が想像する以上に活発なやり取りが行われており、プレイヤーは次第にSteamそのものに感情的な愛着を持つようになるという。
これに対してEGSは、レビューやフォーラムといった要素が乏しく、「買う以外にやることがない場所」になっていると指摘されている。そのためユーザーがプラットフォームに感情移入しにくく、結果として「心の拠り所」として選ばれにくい構造になっているそうだ。Steamを自分のホームと感じているユーザーにとって、Epic独占タイトルは「自分のライブラリを裏切る行為」のように受け取られてしまう側面もあると語られている。

また、EGSの進化の遅さについても言及があった。近年になってようやくフレンドへのギフト機能が実装されたが(関連記事)、これはSteamでは2007年から提供されてきた機能だ。Chmielarz氏はValveについて「決して現状に甘んじていない」と評価し、日々新機能を追加し続けている点を高く評価している。
こうした背景もあり、『Witchfire』は現在Steam上でより強い支持を得ているのだろう。2024年のSteam版配信開始以降、プレイヤー数は大きく増加し、正式版となる1.0リリースを控えた現在、ウィッシュリスト登録数は160万件以上に達しているという。かつてはEGS独占としてスタートした本作だが、最終的にはSteamでの人気が優勢のようだ。
EGSの支援を受けゲームを時限独占で配信していた開発者でさえ、Steamが優位であると率直に伝えているのは興味深い。とはいえ今年に入ってEGSでは、年間売上が100万ドル(約1億5000万円・現在のレート)未満のゲーム・アプリの販売手数料が無料化(関連記事)。また引き続きゲームの無料配布もおこなわれている。まずはユーザー・開発者の双方の利用者を呼び込む方針が続けられていることもうかがえ、独自の施策でSteamの圧倒的なシェアを突き崩せるかどうかは引き続き注目されるところだろう。
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