「VR元年」と呼ばれた2016年もあと残り1か月と少し。今年は「Oculus Rift」「HTC Vive」「PlayStation VR(以下、PSVR)」といった主要なVRヘッドマウントディスプレイ(以下、VR HMD)が発売され業界を賑わせた。VRタイトルは大手のみならずインディーデベロッパーからも発売され、個性豊かなラインナップが揃いつつある。そこで浮かびあがったのが「どのタイトルが多く売れているのだろうか」という疑問だ。VR専用タイトルは、デバイスの普及数の関係上、通常の売上チャートではなかなかお目にかかることができない。現在公開されているデータをもとに、先に挙げた3つのVR HMDごとの売れ筋タイトルを見ていきたい。なお、HTC ViveとOculus Riftのデータは、非公式であったりややあいまいであったりするので、参考程度に考えてほしい。
PlayStation VR
PSVRタイトルの売上ランキングは、各月にPlayStation公式ブログにて公開される。今回はPS VRがローンチされた10月の売上データを参照する。アメリカのPlayStationストアでは、『Job Simulator』がトップとなっている。同作はHTC Viveでもリリースされており、オフィスを暴れまわることができる自由度の高さから好評を呼んでいたが、PSVR版もヒットを記録したようだ。ヨーロッパのPlayStationストアでもっとも好調なVRタイトルは『Batman Arkham VR』。アメリカでも2位を記録していた『Batman』シリーズのVR作品。やはり版権モノは強しといったところだろう。
10月のPlayStationストアのランキング(アメリカ)
1. Job Simulator
2. Batman: Arkham VR
3. Until Dawn: Rush of Blood
4. PlayStation VR Worlds
5. Here They Lie
10月のPlayStationストアのランキング(ヨーロッパ)
1. Batman: Arkham VR
2. PlayStation VR Worlds
3. Until Dawn: Rush of Blood
4. Here They Lie
5. Tumble VR
興味深いのは、『Until Dawn: Rush of Blood』と『Here They Lie』のホラー作品2タイトルがアメリカとヨーロッパの両方で上位にランクインしていることだ。『Until Dawn: Rush of Blood』は2015年に発売された『Until Dawn』の世界を舞台としたホラーシューゲィングゲーム。ガンシューティング形式になっており、お化け屋敷のような体験が楽しめる作品だ。『Here They Lie』は日本では未発売のホラーアドベンチャー。こちらは陰鬱とした世界を進んでいく、静かな恐怖がプレイヤーを包み込む。
PlayStation公式ブログによると、PSVR発売翌週の日本のPlayStationストアにおける売上は、1位が『バイオハザード7 レジデント イービル』の世界の一端を体験できる『KITCHEN』、2位は『サマーレッスン』、3位は『Rez Infinite』となっている。
HTC Vive
続いてHTC Viveでの各タイトルの売上を見ていきたい。PSVRのランキングと同様に有料タイトルのみを対象としている(長期間無料でキーが配布されていた『Heaven Island Life』も同様の理由で除外する)。なお今回の調査はユーザーのプロフィール情報を収集する非公式ツールSteamSpyをもとに、HTC Viveが発売されてから現在までの各タイトルにおけるOwner(所有者)数を参考とする。
トップをかざったのは、迫りくる敵を撃ち落としていくシューティングゲーム『Space Pirate Trainer VR』だ。同作は盾と銃と使い分ける楽しさや没入感の高さが評価されている。2位にランクインしたのは『Audio Shield』。同作はコントローラーを盾に見立て、BGMに合わせて降ってくる玉を弾き返す音楽ゲームで、自分の好きな音楽を選んでプレイすることができる。3位は海中を鑑賞する『theBlu』で、以下『Water Bears VR』、『Vanishing Realms』、『Raw Data』が続いていく。ちなみにこうした有料のVR専用タイトルで、ユーザーレビュースコアが最も高いのは『SoundStage』となっている。
2. Audio Shield
3. theBlu
4. Water Bears VR
5. Vanishing Realms
Oculus Rift
Oculus Riftの売上に関しては、Oculus Rift公式ホームページで公開されている「ベストセラー」を参考とする。11月15日現在、もっとも売れ行きが好調なVR専用タイトルは『Eagle Flight』。Ubisoftから発売されたフライトアクションゲームで、Oculus Rift版は他プラットフォームに先行してリリースされた。
次点は『The Climb』。同作はCrytekが手がけたRift独占のタイトルで、山を登っていく緊張感が味わえる。3位には同様にOculus Rift独占タイトルである遺跡を探索するRPG『Chronos』でランクイン。以下、『Damaged Core』、『Edge of Nowhere』などが続いている。ゲームタイトルではないが、ViveでもリリースされているVR空間でデスクトップPCを操作できる『Virtual Desktop』の人気も根強い。Oculusは独占タイトルのリリースに熱心であり、そういった特色が垣間見えるランキングとなった。
2. The Climb
3. Chronos
4. Damaged Core
5. Edge of Nowhere
各VR HMDの普及台数は
ハード本体の普及台数については、デバイスごとにまちまちだ。ソニーインタラクティブエンターテインメントヨーロッパのCEOであるJim Ryan 氏は、CNBCに「PSVRは発売日だけで数十万台売り上げた」と語っている。HTCのCEOであるCher Wang氏は中国紙87870 newsに「HTC Viveはすでに14万台売り上げている」と報告している。一方、Oculusのプロダクト・バイスプレジデントであるNate Mitchell氏はPolygonから普及台数について問われたが、具体的なコメントを避けている。PSVRはPS4 Proによってさらに進化し、HTC Viveは無線化するアップグレードキットが、Oculus Riftはスタンドアローンとなる新製品の発売が予定されている。これら3つのVR HMDのほかにもさまざまな新製品の発売が予定されており、2017年もVR一色の1年になりそうだ。