Steamにて発売目前で削除されたホラー『VILE: Exhumed』、なんと公式サイトで無料公開。“検閲”への抗議として
Cara Cadaver氏は8月6日、『VILE: Exhumed』を公式サイトにて無料配布した。本作はSteamのストアページが削除されており、その対応への抗議として無料配布対応をおこなうようだ。

ゲーム開発者のCara Cadaver氏は8月6日、『VILE: Exhumed』を公式サイトにて無料配布した。本作はもともと7月22日にSteamにてリリース予定であったが、審査が通らずに延期された末に「実在の人物を描写した性的コンテンツ」と認定されストアから削除されていた。
『VILE: Exhumed』はホラーゲームだ。プレイヤーは古いPC内を探索し、アダルト映画女優のCandy Corpse失踪事件の手がかりを追うこととなる。本作の開発はDreadXPのQA部門に在籍するゲーム開発者Cara Cadaver氏が担当している。
PCには画像やメール、動画、文書など、さまざまな媒体による記録が残されている。CandyとPCの持ち主の間に何があったのか、Candyがどういった状況に陥ったのかが描かれていく。本作では古いPC上を探索する設定としてUIが構築されているが、なかには画像ファイルとして、実写の写真を用いたシーンも登場する。Candyに関する暴力や執着などが、実写写真も交えリアルに描かれる。

本作はDreadXPのパブリッシングで7月22日にSteam向けにリリースされる予定だったものの、ビルド承認について、Steamからの連絡が1か月ほどなかったとのこと。そのためリリースを延期していたが、SteamDBで確認できる限りでは、7月25日にSteam側によってストアページごと削除されたとみられる。
Cara氏によれば、『VILE: Exhumed』はSteamの開発者向けガイドラインであるSteamworksドキュメンテーションにおいて「公開すべきではないもの」として指定されている、実在の人物を描写した性的コンテンツと認定され、ストアページが削除されたようだ。Cara氏は7月29日、このことに対し深い失望を表明した。本作では性的暴行や暴力といった要素が含まれるものの、それらはすべて暗示的なものであると説明。実写の写真は登場するものの、無修正のポルノなどが掲載されているわけではない。Cara氏はこの“検閲”に反対し、作品のテーマを理解できない人が楽しめるように作り変えたりはしないとして、抵抗する構えを見せていた。
そして8月6日、Cara氏は『VILE: Exhumed』の公式サイトにて本作の無料配布を開始した。サイトの声明では、別のストアでのリリースも考えたとのことだが、今回のSteamストアページ取り下げと同様の問題に直面する可能性も鑑みて、サイトでの直接の配布にしたという。同氏はこうした検閲は、女性や周縁化されたアーティストのみならず、最終的にはすべての人から物語を形作る権利を奪うことになると批判。Steamの対応への抗議のため、ゲームの無料配布に至ったようだ。
また配布にともなっては『VILE: Exhumed』への支援をおこなうことも可能だ。寄付は専用ページから可能で、収益はすべてDVの被害を受けた女性や子供、難民などの支援をおこなうRed Door Shelterに送られるとのこと。
なお直近では今年7月に「Steamで公開すべきではないもの」の例が新たに追加。Steamにおける決済代行業者や関連するカード会社・銀行などが定める規則や基準に違反する可能性のあるコンテンツ、なかでも特定の種類の成人向けコンテンツが、「公開すべきではないコンテンツ」として指定された(関連記事)。
一方で『VILE: Exhumed』は、「Steamで公開すべきではないもの」の2項、「実在する人物のヌードや露骨な性的画像」が削除事由とされており、これは以前から存在していた項目だ。そのため、『VILE: Exhumed』のストアページ削除については決済代行業者などによる抗議・圧力が要因になったと断定することはできない。少なくともSteam側では、既存のルールに基づいて削除対応がおこなわれたと考えられるだろう。ただ、既存のルールの運用も厳格化している可能性も垣間見える。
いずれにせよ、Cara氏が述べるように、Steamに向けては『VILE: Exhumed』の削除対応も“検閲”にあたるのではないかという指摘、批判は寄せられている。Collective Shoutによる抗議活動を皮切りとした成人向けゲーム規制問題については議論が過熱していることもあり(関連記事)、ゲーム開発における検閲や規制に関する動向は、今後も注意深く見守っていく必要があるだろう。