Valveが市民虐殺ゲームをSteamで販売拒否 架空の不道徳はどこまで許されるのか

UPDATE[2014/12/18 12:30]: ValveのGabe Newell氏は、みずから Steam Greenlightへ『Hatred』を戻すことを決断したと明らかにした。

 

ValveSteam Greenlightに登録されたアクションシューター『Hatred』をリストから削除した。Steam Greenlightは、Steamでの配信を目指すデベロッパーがコミュニティに向けてゲームを紹介するサービスだ。コミュニティから一定の注目が集まれば、Valveがデベロッパーにコンタクトを取り、Steamでの配信を契約する。今回Valveは、開発元のDestructive Creationsに対し、”もし『Hatred』が注目を集めてもSteamでは売ることができない”と、販売を前もって拒否した。Steam Greenlight登録からわずか2時間での出来事だった。

なお2014年12月17日、Steam Greenlighから削除されていた『Hatred』が突如復活した。ValveがDestructive Creationsに「『Hatred』はSteamで売ることができない」と通達してからわずか1日での出来事だ。Steam Greenlightには、ゲームのコンセプトにユーザーたちがアドバイスを送る側面もあるのだが、Valveがどのような考えで今回の行動を取ったのかは不明だ。詳細は記事下部にて記している。

 


PCゲーム最大のプラットフォームから販売拒否

 

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開発元のDestructive Creationsは、Steam Grenlightから削除された際にValveからメッセージを受けとっている。Valveは「我々はGreenlight上で確認したことに基き、『Hatred』をSteamで販売しないとした。この点を理解してほしい」と通告したという。正式発表以降の騒動を見て販売を拒否したのではなく、あくまでゲーム自体を確認した上で、Steamで販売することはできないと判断したことを暗に示した。

『Hatred』は、Destructive Creationsが今年10月に正式発表したタイトルだ。デザイン自体はよくあるアクションシュータージャンルの作品だが、問題とされたのはそのゲーム内のストーリーである。主人公は社会に憎悪を向ける黒服の男であり、一般市民を素手やナイフで痛めつけ、機関銃で虐殺する。一般社会からアンモラルゲームの代表格として語られる『Grand Theft Auto』よりも、ここ数年で飛び抜けてバイオレンスなアクションシューターだった『Hotline Miami』よりも、さらに過激で不道徳だ。今年10月、正式発表にあわせ『Hatred』のトレイラーを公開すると、無名のインディーデベロッパーDestructive Creationsの名は一晩で海外ゲーマーたちに知れわたった。トレイラーの再生回数はわずか数日で100万回を突破し、賛否両論のコメントが入り乱れた。一般市民の大量虐殺シミュレーターだと糾弾する者も居れば、ゲームという単なるエンターテイメント作品であると擁護する者もいた。

Destructive Creationsは、『Postal』や『Manhunt』といった虐殺や殺人をテーマにしたゲームがSteamで販売されていると前置きした上で、Valveには販売を決定する権利があり、その決定を尊重すると発表した。開発に影響はなく、予定通り2015年Q2にリリースすると予告している。Steam Greenlightでは、わずか2時間で1万3148回も好評価が入り、トップ100リストの7位にランキングした。私も含め、過激なバイオレンスが好きなゲーマーが存在するのは事実である。

 

 


“許されるライン”とは

 

過去にValveは、SteamやSteam Greenlightから何度も問題となったゲームの公開や販売を停止している。『9.11 Simulator』などという、不謹慎の塊のようなゲームを削除したこともある。だが今回の問題はどうだろうか。「現実の事件に基かない」かつ「不道徳なテーマを持つゲーム」が許されるかどうか。Valveは今回、架空の一般人虐殺に対しノーと返答した。

今回のValveの判断を、「倫理的に見て当たり前だ」「Valveに決断の権利がある」などと語るのは簡単だ。ゲームはプレイヤーの気分や性格に多かれ少なかれ影響を与えるのも事実だ。しかし、架空の不道徳がどこまで許されるのか。誰もが納得できる明確な線引きは未だなされていない。現実と架空を混同してしまうプレイヤーへの影響を考えて、そして世論の動向を見据えて、現実世界で同様の事件を受けた人へ配慮して厳しく接するのか。それともゲーム本来のコンセプトを貫き、それを尊重するのか。いちゲーマーとしては後者を望んでしまうが、だからといって配慮を捨てられるわけではない。


突然の復活

 

2014年12月17日、Steam Greenlighから削除されていた『Hatred』が突如復活した。開発のDestructive Creationsは、公式フォーラムに て「なんだこりゃ、ポーランドは午前3時で私は寝ていたところだ。なにが起きているのかわからない、調べてみるよ」と伝えた。開発スタジオよりもファンが先に復活を知ったこの出来事、Valveからの事前通達はなかった模様だ。Valveが誤って復活させたのか、それとも”ライン”を書き変えたのかは不明である。AUTOMATONはDestructive Creationsにコンタクトを取っており、情報が入り次第お伝えする。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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