Valveには「『Half-Life』の前に“平凡なゲーム”を出そう計画」があった。当時の重役が「会社を潰す気か」ときっぱり阻止
ゲーム開発者の国際会議GDC2025にて、Valveの元重役が『Half-Life』開発当時について述懐。“平凡なゲーム”を作る計画があったものの、計画を中止させたとの経緯を明かしている。

ゲーム開発者の国際会議・Game Developers Conference(GDC)2025にて、Valveの元重役が『Half-Life』開発当時について述懐。“平凡なゲーム”を作る計画があったものの、計画を中止させたとの経緯を明かしている。GamesRadar+が伝えている。
Valveは、PCゲームプラットフォームSteamを運営する企業だ。Valveは1998年に、Valve初作品にしてFPSゲームの金字塔ともいわれる『Half-Life』をリリース。その後も数々の傑作を手がけてその名を轟かせた。そのValveの黎明期に、同社の最高マーケティング責任者(CMO)を務めたMonica Harrington氏がGDC2025に登壇。Valveの方針を決定づけた選択について振り返った。

Harrington氏がValveにてCMOを務めていたのは、創業当時の1996年から2000年まで。まさに『Half-Life』の誕生と成り行きに関わった人物なわけだ。同氏によれば、当時のValveは『Half-Life』開発のため、世界中から開発者をヘッドハンティングして拠点に呼び寄せていたという。
そうした中で、社内では「『Half-Life』リリース前に、別のゲームを発売する」との計画が持ち上がっていたという。そうすれば、開発チームをさらに拡大する助けになるとの発想だったそうだ。この“『Half-Life』ではない方のゲーム”は社内で仮に「B title」と呼ばれ、「平凡なゲーム(mediocre game)」となる予定だったそうだ。

ところが、Harrington氏がこの“平凡ゲーム開発計画”にストップをかけることになる。同氏は計画を唱える者たちにビジネス的分析を説き、「まず上手くいかないし、会社は潰れるだろう」と断言したとのこと。またHarrington氏らは当初から、全力で開発にかかりTOP10に入る作品にする必要があると認識していたそうだ。同氏はValve共同設立者であるGabe Newell氏に対しても「ゲーム・オブ・ザ・イヤーになるしか、『Half-Life』を成功させる道はないと考えている」と明言したとのこと。
なおGDCでは、“平凡なゲーム”がどのような作品となる見込みだったのかまでは明かされなかったという。Harrington氏が計画を止めず、開発リソースが分散していたら、Valveが失敗し倒産していた未来もあったかもしれない。一方でさらなる成功を収めていた可能性もあり、「しなかった選択」の結果を知る術はない。しかし、Harrington氏が計画を阻止しなければ、「初作から伝説の作品を世に出した」というValveのブランドイメージは違うものになっていただろう。