Steamをめぐる集団訴訟で、「一般人の書き込み」が証拠扱いされ困惑広がる。原告側弁護団いわく“Valveが公表した事実”

米国にて提起された、Valveを相手取った集団訴訟にて、原告側が「一般人の書き込み」をValveの公式発表として誤認したのではないかという疑念が生じている。

現在米国では、Steamを運営するValveを相手取った集団訴訟(クラスアクション)が提起されている。本訴訟についてValveは棄却するよう裁判所に申し立てており、それに対して原告側は今年10月に異議申し立てをおこなった。その異議申し立ての内容において、原告側弁護団が墓穴を掘ってしまったのではないかと注目を集めている。

この集団訴訟は、ValveがSteamで作品を販売するメーカーに課している30%という手数料の設定や、Steamと他ストアで併売する際に販売価格などの条件を同等にするよう求める規約の存在について、デベロッパーのWolfire Gamesが独占禁止法および不正競争防止法違反を訴えて、2021年に提訴したことを発端とする。同訴訟は一度は棄却されたものの、修正訴状が提出され、類似の訴訟と統合された上で継続されている(関連記事)。

本訴訟において原告側は、PCゲーム市場においてSteamが独占的な地位にあると主張し、その背景のひとつとしてValveがWON(World Opponent Network)を“買収”したことを挙げた。WONは、1990〜2000年代にSierraが運営していたオンラインゲーム用サービスで、当時Valveも採用していた。

その後ValveはSteamをローンチさせ、オンラインサービスも自社製に移行。その際にValveがWONを買収し、『Counter-Strike』などの人気作が抱える膨大なユーザーベースを引き継いだことで、Steamは当初から市場で独占的な地位を占めていた、というのが原告側の主張である。

ただしValveは、WONを買収あるいは所有していた事実はないと、原告側の主張を否定した。これに対し原告側は、WONの買収については“Valveが自ら認めている”ことだと反論し、異議申し立てを通じてValve側が提出した証拠の却下を裁判所に求めた。

この原告側の異議申し立ての内容について、Redditにて注目が集まっている。というのも、ValveによるWON買収の証拠として原告側弁護団が提示したのは、とあるSteamユーザーがValveのアクションゲーム『Ricochet』のコミュニティページに投稿したインストールガイド(現在は削除済み)と、Sierra関連の情報がまとめられたWikiページだったためだ。そこには、2001年にValveがWONを買収したと記載されている。

特に前者について、Steamウェブサイト内のValve製タイトルのページに記載されていたことから、Valveが公表した情報だと原告側弁護団が誤認したのではないかと注目されているわけだ。実際には、いずれもValveとは無関係の一般ユーザーによる記述であり、Valve自身は買収を否定していることもあって、Redditにて困惑が広がり失笑を買っている状況である。

本訴訟において、ValveによるWON買収が事実か否かがどのように影響するのか現時点でははっきりしないが、原告側としてはこの主張を軸として訴訟を展開しているわけではないとしている。裁判の行方には引き続き注目が集まりそうだ。

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Taijiro Yamanaka
Taijiro Yamanaka

国内外のゲームニュースを好物としています。購入するゲームとプレイできる時間のバランス感覚が悪く、積みゲーを崩しつつさらに積んでいく日々。

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