バレンシアCFがe-Sports部門設立を発表、まずは『Hearthstone』と『Rocket League』。相次ぐ名門サッカークラブのe-Sports参入


スペインのリーガ・エスパニョーラ1部リーグに所属するサッカークラブ「バレンシアCF」は6月7日、e-Sports部門の設立を発表した。欧州におけるサッカークラブのe-Sports参入は、トルコのベシクタシュやドイツのVfLヴォルフスブルク、シャルケ04に続いて4例目となる。なお今回の参入は、報道各所への招待状と思われるものからも判明していた。

画像出典:Esports Observer
画像出典:Esports Observer

画像には、バレンシアCFのホームスタジアムであるエスタディオ・デ・メスタージャにて、2016年6月7日の昼にe-Sports部門の設立発表会が行われる旨と、それに際して提携したTwitchのロゴが記載されている。

発表当日に使われたプレゼンテーション資料(※pdf注意)では、世界の各地域におけるここ数年のe-Sports産業の成長がアピールされている。ヨーロッパではその市場規模は2億6300万ユーロに達しており、今後数年間で14%の成長を見込んでいる。韓国ではe-Sportsのプロ選手が、スペインにおけるリーガ・エスパニョーラのトップ選手と同様の名声をもって讃えられているとも言及している。ヨーロッパではe-Sportsの社会的地位は中韓ほど高くなく、バレンシアCFのブランドがヨーロッパのe-Sportsに参入することで、プロゲーマーやプロ志望の若者たちにとっては追い風のひとつになるだろう。

バレンシアCFのマーケティングディレクターであるPeter Draper氏は「著しく成長している最中であるe-Sports分野に参入するというのは、バレンシアCFにとって興味深いプロジェクトであるとともに、挑戦でもあります。ヨーロッパじゅうで最も関心の集まるこの分野で、バレンシアCFは先駆者となるでしょう」とコメントしている。

プロジェクトのジェネラルマネージャーであるSergio Benet氏は発表に際し「我々にとってこれは挑戦であり、バーチャルなゲーム競技においてもバレンシアCFのカラーを守るという大きな責務もあります。この務めを果たし、e-Sportsでも最強のチームになるべく、全力を尽くします」とのコメントを寄せており、e-Sports参入に対するバレンシアCFの力の入れようがうかがえる。

バレンシアCFのe-Sports部門はまず、2つのゲームタイトルからスタートを切る。1つめがBlizzardが開発運営する戦略カードゲーム『ハースストーン(Hearthstone)』。「ハースストーン部門」チームキャプテンのHector “TheFallen” Fuentes Garcia選手は1979年生まれで『Magic: the Gathering』の大会入賞経験もあり、20年以上も競技カードゲームの世界に身を置いてきたベテラン。Diego “Evangelion” Fuentes Garcia選手も、常にランキング上位に位置しているトッププレイヤーのひとりだ。韓国出身のHanuel “NaRa” Lee選手は『Starcraft 2』や『Heroes of the Storm』などのプレイで知られ、メタゲームに熟達している。Jose “Josemi” Miguel Pascual Pina選手もまたランキング上位のプレイヤーとして知られるが、特筆すべきはYouTubeに多くのスペイン語プレイ動画を上げ続けていることだ。以上の4名が、バレンシアCF所属の選手として紹介された。
もうひとつの部門は、車を操縦してサッカーをプレイする『Rocket League』部門だが、こちらは選手募集中となっている。『Rocket League』の競技チームは3名のプレイヤーで構成される。バレンシアCFは提携先であるPlayStationと共同でPS4プラットフォームでの大会を行い、良い成績を収めたプレイヤーを「Rocket League部門」の選手やスタッフとしてスカウトするとのこと。
また今年後半には『League of Legends』部門も設立する予定で、準備が整えば詳細を発表するとのこと。

トルコではサッカーなどのスポーツチームを運営する「Beşiktaş e-Sports Club」が2015年より『League of Legends』のトルコリーグである「Turkish Champions League」に参加するチームを所有している。Redbull.comによれば、今年の2月にはドイツ・ブンデスリーガに参加するサッカークラブ「VfLヴォルフスブルク」が『FIFA 16』のプロ選手を2名獲得。同じくブンデスリーガ参加の「シャルケ04」は5月に『League of Legends』のEUトップリーグ参加チーム「Elements」を傘下とし、e-Sportsの世界に名乗りを上げた。今回のバレンシアCFの動きは、ヨーロッパにおけるスポーツチーム運営組織のe-Sports参入の流れに追随するものであろう。

北米のe-Sports市場規模は既にヨーロッパの2倍近くに達しており、社会での認知度もヨーロッパに比べて高い。そういった中で、『League of Legends』では英語でのコミュニケーションができるヨーロッパ出身の選手たちが次々と北米に渡り、ヨーロッパの競技シーンの空洞化が懸念されていた。しかしながら、豊富な資金と秀でた組織運営能力を持ち、既に社会的な認知度の高いスポーツ組織のブランドが参入したことで、ヨーロッパのe-Sportsシーンは明らかにひとつの転機を迎えている。今後の展開にも大いに期待していきたい。