Ubisoft、『スプリンターセル』シリーズ新作をひっそり中止にしていた。その後開発元は『エックスディファイアント』を手がけるもすぐサービス終了、閉鎖に

Ubisoftは2024年12月に、傘下スタジオのひとつUbisoft San Franciscoの閉鎖を発表した。同スタジオは、FPS『エックスディファイアント(XDefiant)』の開発を担当したことで知られるが、その直前には未発表の『スプリンターセル(Splinter Cell)』シリーズ新作を手がけていたという。海外メディアBloombergが報じている。
Ubisoft San Franciscoは、2009年に米国・カリフォルニア州に設立され、初期は音楽ゲーム『Rocksmith』シリーズを手がけていたスタジオだ。その後いくつかのタイトルに携わり、2024年5月に基本プレイ無料のオンライン対戦FPS『エックスディファイアント』をリリース。ただ、同年12月にスタジオの閉鎖が決定し、同作もサービス終了となった。

海外メディアBloombergは11月15日、Ubisoft San Franciscoの元ゲームデザイナーNick Herman氏へのインタビューを掲載した。同氏は、『エックスディファイアント』につながるプロジェクトの開発初期まで在籍していた人物で、2018年に退職し、Telltale Games時代の同僚らとAdHoc Studioを設立。そして今年10月にデビュー作となるスーパーヒーロー管理ゲーム『Dispatch』をリリースし、10日で100万本を売り上げる大ヒットを記録している(関連記事)。
インタビューの冒頭では、Herman氏がAdHoc Studio設立に参加するまでの経緯が語られた。そこで明かされたのは、ステルスアクションゲーム『スプリンターセル』シリーズの新作の存在だった。2017年にUbisoft San Franciscoに入社した同氏は、2013年発売の『スプリンターセル ブラックリスト』以後長らく休眠状態にあった同シリーズの復活に携わることになり、ファンに向けて素晴らしい物語を紡げることに興奮したそうだ。

ただ『スプリンターセル』新作プロジェクトは、開発開始から数か月経った頃に、幹部の気まぐれ(executive whims)によって中断させられたという。当時Ubisoftは、リリース後も継続的な収益が見込める運営型タイトルの展開に軸足を移しつつあり、Herman氏のチームもその新作を作ることになった。そうした中で同氏は、会社はもはや『スプリンターセル』新作への興味を失っていると感じたそうで、業界ではよくあることだとしつつ、落胆した旨を語っている。これをきっかけに同氏はUbisoft San Franciscoを離れ、AdHoc Studioを設立するに至ったようだ。
一方、Ubisoftの運営型タイトル開発プロジェクトは、結果的に『エックスディファイアント』として形になった。ちなみに同作は、Ubisoftの人気タイトルとのクロスオーバー作品でもあり、勢力のひとつには『スプリンターセル』のエシュロンも登場する。しかし、一部で「『Call of Duty』キラー」とも呼ばれた同作は2024年5月のリリースからわずか半年後に、サービス継続に十分なプレイヤー数を獲得できなかったとして開発中止に。同時にUbisoft San Franciscoの閉鎖も決定した(関連記事)。
なお、『エックスディファイアント』のエグゼクティブプロデューサーを務めたMark Rubin氏は今回のインタビューに触れ、『エックスディファイアント』を開発するために、Nick Herman氏らが取り組んでいた『スプリンターセル』新作プロジェクトが中止された訳ではないとSNS上でコメントしている。Infinity Wardで『Call of Duty』シリーズに携わったRubin氏がUbisoftに入社したのは2019年で、『スプリンターセル』新作が開発されていたのは2017年のことであるが、同氏の知る範囲では直接的な因果関係はないということのようだ。
ちなみに『スプリンターセル』シリーズの直近の動きとしては、シリーズ1作目のリメイク版『Splinter Cell Remake』が2021年に発表されている。発売時期は未定。『ディビジョン』シリーズや『エックスディファイアント』などに採用された内製ゲームエンジンSnowdropを用いて、Ubisoft Torontoが開発している(関連記事)。また今年には、アニメシリーズ「スプリンターセル: デスウォッチ」がNetflixにて放映中だ。




