Ubisoftは8月27日、『スター・ウォーズ 無法者たち』を発売。一方、同作発売後には同社の株価が下落を見せており、9月3日には2014年ぶりとなる15.50ユーロまで下降を見せた。また株価がさらに下がり続けるなかで、同社の少数株主であるヘッジファンドが、Ubisoftの取締役会や投資家向けに同社の経営方針の改善案を提案したことも報じられている。
Ubisoftは直近では先述の『スター・ウォーズ 無法者たち』を発売。「スター・ウォーズ」シリーズを題材にしたオープンワールド・アクションアドベンチャーゲームだ。「スター・ウォーズ」の世界観が細やかに表現された広大なワールドや、多彩な探索要素などが一定の評価を獲得。一方でゲームプレイについては単調とする批判もあり、レビュー集積サイトMetacriticのメタスコアやユーザースコアなど、評価面で苦戦も見せている(関連記事)。
そして同作発売後Ubisoftの株価は下がり続け、9月3日には2014年ぶりとなる15.50ユーロまで下落。要因としては、『スター・ウォーズ 無法者たち』の評価の伸び悩みのほか、また5月にリリースされた基本プレイ無料FPS『エックスディファイアント』の人気が想定を下回っていることが要因になったとのアナリスト見解も報じられている(Reuters)。いずれも売上やプレイヤー数は公表されていないものの、そうした見立ても株価の下落に繋がっているのだろう。
そして9月9日には株価がさらに大きく落ち込み13ユーロ台に突入し、本稿執筆時点でも約13ユーロで横ばいとなっている。こうした中で、1%未満ながらもUbisoftの株を保有しているヘッジファンドAJ Investmentsが、同社の取締役会および投資家向けに「戦略的および構造的変革の緊急要請(Urgent Call for Strategic and Structural Changes at Ubisoft Entertainment)」とする公開文書を通達。The Wall Street Journalなどが報じており、注目を集めている。
AJ Investmentsの文書では、同社やパートナー企業がUbisoftの現在の業績や戦略的方向性に深い懸念を抱いていると表明。懸念の背景には、7月の投資家向け発表にて明かされた『レインボーシックス モバイル』および『ディビジョン リサージェンス』のリリース延期のほか、2024年第2四半期の収益見通しが下方修正されたことなどがあるという。またUbisoftの株価が昨年だけでも40%以上下落を見せたことにも言及された。
そうした状況もあり、AJ Investmentsはさまざまな方面からUbisoftの戦略の転換や構造改革を求めている。このなかでは、たとえば同社を適正な価格で非公開会社化することが要請された。投資家向けに四半期ごとにより良い決算を報告することを求められない体制で、長期的な視野でIPに新たな風を送り込む必要があるとの考えだそうだ。また文書では、包括的なコスト削減プログラムを実施して人員を最適化することや、収益を見込めるコアIP(人気シリーズ)の開発にさらにリソースを集中させることなども求められている。
このほかAJ Investmentsは、UbisoftをCEOのYves Guillemot氏やその家族が主要株主となり会社を率いている現状では、ゲームのリリース延期や機会損失が多く発生していると、さまざまなデータで懸念を示しつつ指摘。Guillemot兄弟はアドバイザーとして不可欠であるとしつつも、新たなCEOの採用を検討することを求めている。
『スター・ウォーズ 無法者たち』の発売後、株価が大きな下落を見せているUbisoft。近年株価の値下がりが続いていた同社の取締役会に向けて、一部投資家から厳しい指摘や提案も寄せられているかたちだ。とはいえ、あくまで一少数株主であるAJ Investmentsからの提言であり、今後のUbisoftの経営方針に影響を与えるかどうかは不明である。
なおUbisoftの今年の注目作としては、11月15日に『アサシン クリード シャドウズ』が発売予定。人気の『アサシン クリード』シリーズの最新作であり、戦国時代の日本が舞台となることからも、さまざまなかたちで注目を集めている。同作発売に際して、下落が続く同社の株価が変化を見せるかどうかも注目される。