「誰もクリアできないゲーム」がSteam上で発売停止へ、未完成ゲームであることを隠すためゲームを攻略不可に?

2015年5月22日からSteamにて発売されていたパズルアドベンチャーゲーム『Journey Of The Light』の販売が停止された。

2015年5月22日からSteamにて発売されていたパズルアドベンチャーゲーム『Journey Of The Light』の販売が停止された。『Journey Of The Light』は、発売してからクリアできた者が一人も登場せず注目が集まっていた作品である。現在は開発者に詐欺の嫌疑がかけられている状況だが、当人は行方をくらませており真相は闇の中だ。Valveは『Journey Of The Light』の購入者に対し、無条件で全額返金する旨を発表している

開発者すら最後までクリアせず

『Journey Of The Light』は全7チャプター(実際にはボーナスを含む8チャプター)で構成されるパズルアドベンチャーゲームだ。プレイヤーは光る玉を操作して暗い森のなかを移動し、ヒントを集めつつ青や赤に光るライトを点滅させて正しい道筋を探すことになる。開発者のLord Kres氏いわく、『Journey Of The Light』は「どっぷりと座りながらリラックスして遊ぶスローペースのゲーム」あるいは「Steam上でもっとも難しいゲームの一つ」であるという。わずか498円のパズルアドベンチャーゲームだが、プレイボリュームはおよそ17時間に相当するらしい。

Kres氏は「たぶんところどころ難しいので、コミュニティハブのガイドをチェックしてみよう。あるいはそれを書く最初の人になろう!」と同作を紹介している。しかし発売から数週間が経っても、攻略ガイドを書くどころか、最初の章であるチャプター1をクリアしたと報告する人すら登場しない状況が続いていた。一部の購入者たちは公式フォーラムでなんとかゲームをクリアしようと模索し、一部の購入者たちは返金要請と共にレビューにて酷評を叩きつけていた。

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Kres氏がチャプター2に関するヒントを提示し、プレイヤーが「まだチャプター1をクリアできてないんだよ」とツッコむなか、ついに一人の購入者が業を煮やし、『Journey Of The Light』の解析に取り組むことになる。

きっかけはSteamの実績情報を検索できる外部サイト「AStas」だった。購入者dpuza氏が『Journey Of The Light』の実績解除率を探ると、チャプター1からチャプター3をクリアしたのが開発者のLord Kres氏のみ、さらにKres氏すら後半のチャプターをまったく攻略していないことが明らかとなったのだ。Steamプロフィールの実績を公開していないユーザーは「AStas」の検索に引っかからないため、そういったユーザーがひそかに攻略していた可能性は残るものの、ほとんどの購入者、そして開発者すらがゲームを全クリアしてないない実態が浮き彫りになった。

チャプター1がクリア不可状態に

続けてdpuza氏がインストールされた『Journey Of The Light』を解析すると、レベル0からレベル12と呼ばれるファイルが存在し、レベル5からレベル11まではロードすると「チャプター1」と同じレベルが始まることが明らかとなった。レベル9からレベル11、そしてレベル6の4つのファイルサイズがまったく同じである。レベル5からレベル11のファイルには「Chapter 1」のワードが含まれており、「Chapter 2」のワードは含まれていなかった。さらに調べると、「Load Chapter 1」という名でチャプター1をロードするコードや、Eキーを押すとライトの状態が変化されるというコードが確認された。

つまりここで浮上したのが、Kres氏が『Journey Of The Light』を完成させていないまま販売していたのではないかという疑惑である。商品説明ではチャプター8まで存在すると紹介されているものの、実際には一つのチャプターしか完成しておらず、そしてチャプター1に細工をしてクリア不可にすればゲームが未完成であることは誰にもわからない。

これに加えて、Kres氏が購入者に対して「Steamカードがヒントになる」と何度か伝えていたことも判明した。Steamカードはそのゲームを2時間プレイしないと出現せず、そして2時間プレイしたゲームはSteam返金システムから返金することができなくなる。このことから、Kres氏が未完成の『Journey Of The Light』を売り逃げようとしたのではないかという詐欺疑惑が一気に拡散した。

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Kres氏の真意は

このdpuza氏の暴露のあと、Lord Kres氏は今回の件は自分が意図したことではなく、第1弾のバグフィックスをリリースしたあとに問題が起きたようだと釈明した。Kres氏は“失われたレベル”について修復することを約束したが、その前にValveはいかなる理由であっても『Journey Of The Light』の返金に対応することを発表し、さらにSteamストア上での販売を停止した。

現在Kres氏は自身のTwitterアカウントを削除しており、何度かコンタクトを取ったという海外メディアKotakuのメッセージにも反応していないという。Kres氏は『Voxelized』という名の『Minecraft』ライクな作品をSteam早期アクセスにて2015年3月に98円でリリースしているが、こちらも6月末以降、目立った続報は出ていない状況だ。

はたしてKres氏は詐欺行為をするつもりだったのか、あとでゲームを完成させるつもりで先に販売してしまったのか。本当になんらかの問題が発生していたかもしれないが、氏が表舞台に再登場して事情を説明し、ゲームが再販される可能性は低そうだ。「誰もクリアできない伝説のゲーム」という泊が付き、Steamのゲームコレクターたちは『Journey Of The Light』によだれを垂らすことになるだろう。

Jim Sterling氏によるレビュー動画

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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