テンセントの取締役2名が、兼任していた「Epic Gamesの取締役」をやめる。米司法省からの取締役兼任に対する懸念を受けて
米司法省は現地時間12月18日、テンセントおよびEpic Gamesの取締役を兼任していた2名が、Epic Gamesの取締役を辞任したことを発表した。背景には同省の反トラスト局が、両社を兼任する取締役の存在に懸念を示したことがあるという。
テンセントは中国・深圳に本拠を置く、大手IT企業だ。『League of Legends』『VALORANT』開発元のRiot Gamesや、『Warframe』の開発元Digital Extremesを抱えるLeyouなどを傘下にもつ。また世界中の数多くのメーカーに出資しており、Epic GamesやActivision Blizzard、Ubisoftなどがその対象となっている。このうちEpic Gamesは、Unreal Engineの開発やEpic Gamesストアの運営元として知られる米国の企業である。
今回米司法省は、テンセントおよびEpic Gamesの取締役を兼任していた2名が、Epic Gamesの取締役を辞任したことを発表した。同省の反トラスト局が、取締役の兼任についてクレイトン法第8条を侵しているという懸念を示したことが、両名の辞任に繋がったとされる。なお同省の声明では、辞任した2名の名前は明かされていない。またテンセントは、この辞任対応にあわせ、Epic Gamesとの株主間契約を変更し、将来にわたって、Epic Gamesの取締役会に取締役やオブザーバーを一方的に任命できる権利を放棄することを決定したという。
クレイトン法第8条は、競合する二社に一定の資本金などがあり、かつ競合する売上高が一定額以上の場合、役員の兼任を原則禁止する法律だ。2021年1月より、対象となる競争事業者の資本金などや競合する売上高の基準値が引き下げられ、基準がより厳しくなった経緯がある。反トラスト局は今回、Epic Gamesと事業が競合するRiot Gamesをテンセントが擁していることから、テンセントとEpic Gamesの役員兼任がクレイトン法第8条に違反すると判断したそうだ。
なお米司法省反トラスト局はこれまでに少なくとも20社以上の企業が関与する競争事業者間の取締役兼任に対して、クレイトン法第8条に基づき、懸念を解消してきたとしている。兼任役員を通じた反トラスト法違反の可能性を、先手を打って封じる目論見があるようだ。そうした活動の一環として、今回はゲーム業界の大手といえるテンセントとEpic Gamesの兼任取締役に対して懸念が示された格好だろう。
ちなみにReutersがEpic Gamesの広報担当者のコメントとして伝えるところによると、辞任した2名は司法省の指摘に基づき、あくまで自主的に同社の取締役を退いたとのこと。今後新たな2名の独立した立場の取締役が、株主委員会から指名される予定だという。