Steamで約6万人が遊んだ基本プレイ無料インディーゲーム、「収益は時給1000円分ほど」と開発者がこぼす。課金者はわずか約1%

累計6万人ものユーザーにプレイされたある基本プレイ無料タイトル。そのマネタイズは決して順調なものではないようだ。

ゲーム開発者のMark Arneman氏らが手がけPC(Steam)向けに無料で配信中の、3Dアクションゲーム『SurfsUp』。基本プレイ無料のタイトルとして話題となり、累計6万人ものユーザーにプレイされた本作だったが、そのマネタイズは決して順調なものではないようだ。

FPSゲーム『Counter-Strike』シリーズ作品において、斜面を滑る際に落ちないよう移動キー入力をすると、高速滑走やその勢いに任せた大ジャンプが可能となる挙動「surf」。このアクションを手軽に楽しむことを目的に開発されたのが本作『SurfsUp』だ。

本作では、斜面を高速で滑る「surf」を駆使することで、コースを素早く進むことが可能。プレイヤーは、速度やジャンプのタイミングなどを精密にコントロールして、コースをできるだけ素早く攻略することを目指す。コースは30種類以上あり、日替わりでランダムに選ばれる仕組みになっている。シングルプレイで最速タイムを突き詰めるもよし、マルチプレイで競い合うもよしの、「surf」を楽しむことに特化したタイトルだ。

そんな本作の開発者の一人であるMark Arneman氏が、本作の開発開始からちょうど1年というタイミングに合わせて、これまでの歩みを振り返るスレッドを海外掲示板Redditに投稿した。スレッドは本作に関わる統計データに始まり、成功した点や上手くいかなかった点、そこから得られたヒントなどが詳細にまとめられている。

開発開始からリリースまでを半年間でこなしたという本作は、累計約12万本ダウンロードされ、そのおよそ半数となる6万人が実際にプレイしたとのこと。数字だけ見ると大きな注目を浴び、成功を収めたようにも思えるが、実際には開発陣の懐事情はかなり厳しいものとなっているという。Arneman氏によれば、時給換算で6ドル(約940円)ほどの報酬にしか届いていないそうだ。

というのも、本作のDLCを購入したのは全体の1.15%にしか満たなかったという。本作は無料で配信されていることもあり、マネタイズのほとんどをこのSupporter Bundle(日本向け価格は税込1200円)に頼っている。そんな同DLCの売り上げが芳しくないことで、収益化は難航しているようだ。この問題を解決するため、現在は新しいスキンなどのゲーム内課金の充実やクラウドファンディングといった新しい収益化のアイデアを検討しているとのこと。

また、基本プレイ無料ゲームではコミットメント、すなわち元を取ろうとするユーザーの動機がないという欠点があるといい、本作においてはプレイヤーの70%が30分以内に離脱してしまったそうだ。これを防止するためにはゲーム冒頭の導入が重要となるようで、開発チームはチュートリアルを充実させ、サーフィンのメカニクスにガイドを実装するアップデートをおこなったという。

そのほかの失敗した点として質の高い翻訳を提供できなかったことも挙げられている。Arneman氏によると、本作を取り上げた弊誌の記事によって一時的に膨大な海外プレイヤーベースが生まれたものの、ゲームが未翻訳だったために定着させることができなかったとのこと。同氏は以前手がけたゲームで翻訳管理プラットフォーム「Crowdin」を用いて、機械翻訳も活用しながら翻訳作業をおこなっていたものの、不適切な翻訳が多発したために、たくさんの返金に追われてしまったと述べている。そうした経緯があって、本作は翻訳なしでのリリースとなったものの、今ではLocalessというツールを用いたコミュニティによる翻訳の導入を検討しているそうだ。

一方で成功した施策も多く挙げられており、たとえば公式Discordサーバーへの参加をユーザーに促すこともその一つ。コミュニティを構築することができただけでなく、ユーザーがどこから流入してきたのかを追跡することにも役だったそうだ。また、クローズドのプレイテストよりもオープンプレイテストを開催することや、コミュニティによる創作活動を奨励することなどにも成果があったとのこと。プレイヤーのコミュニティへの帰属意識を高めることは、ゲーム側にとっても良い影響をもたらすのだろう。

今回Redditで語られた体験談からは、Steamにて小規模開発で基本プレイ無料ゲームを展開する際のベストプラクティスや課題も垣間見える。なお直近では、米国においてゲーム市場では二極化が進んでおり、基本プレイ無料ゲームを好んで遊ぶ層が根強く存在するとのアナリストの見解も示されていた(関連記事)。そうした豊富なユーザーがターゲットとなり、プレイするまでのハードルが低くユーザーを獲得しやすいというメリットはありつつ、持続的に収益化するための仕組みを築くことや、プレイヤー離れを防ぐことの難しさは問題となっているのだろう。特に追加の宣伝費やコンテンツ開発のスピードに限りのあるインディー作品では、作品の周知や持続的なプレイヤーベースの確保がいっそう難しい状況はあるかもしれない。

なおスレッドではほかにも、一部のトッププレイヤーには好評だったゲームの高速化アップデートがそれ以外のほとんどのプレイヤーには不評であったこと、どれだけの対策を重ねてもチート使用者は必ず抜け道を見つけてくることなど、ライブサービスゲームである『SurfsUp』の開発に関わる興味深いエピソードも共有されている。基本プレイ無料ゲームの開発の実情を知りたい方は、ぜひ覗いてみてはいかがだろうか。また興味のある人は本作をいちどプレイしてみるといいだろう。

『SurfsUp』はPC(Steam)向けに無料で配信中。有料DLC『Supporter Bundle』は1200円で購入可能だ。

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Daijiro Akiyama
Daijiro Akiyama

ゲームをすることと、ゲームの話をしたり聞いたりすることが同じぐらい大好きです。

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