Steamでは2024年、新作ゲームが史上最高に売れた。さらに季節の大型セールも過去最高収益、Valveが絶好調ぶりをレポートで報告

Valveは3月14日、同社の運営するゲームプラットフォーム「Steam」について、2024年の取り組みを振り返るレポートを公表した。グラフなどを示しつつ、昨年Steamがどのように成長したのかを報告している。

Valve Corporation(以下、Valve)は3月14日、同社の運営するゲームプラットフォーム「Steam」について、2024年の取り組みを振り返るレポートを公表した。レポートでは、Steamに導入された新機能や同社の新たな試みに触れつつ、昨年Steamがどのように成長したのかをユーザーに報告している。数年後までを見据えたSteamの今後の展望が語られた。

Steamは、大人気FPS『Half-Life』シリーズなどを手がけるValveによって2003年から運営されている、PC向けゲームプラットフォームだ。PCゲーム市場ではトップクラスのシェアを獲得しているとみられる。インディーからAAAタイトルまで、パブリッシャー・デベロッパーやユーザーによって幅広く利用されており、PCゲーム界におけるその“独占的”ともいえる立場は確固たるものとなっている。これまでにはAmazonがSteamの牙城を崩そうとして失敗していたことなども伝えられてきた(関連記事)。

レポートではそんなSteamにおける、2024年の目覚ましい収益増加がメイントピックの1つとして据えられている。まず、2024年12月にピーク時の同時接続ユーザー数が初めて3900万人を超えたことが報告された。なお2月28日の『モンスターハンターワイルズ』発売後、3月2日には同時接続ユーザー数が4000万人を突破したことが非公式データベースSteamDBによって明らかになっており、今回のValveのレポートでもこのことに触れられている。レポートによればコロナ禍によるオンラインでのアクティビティ急増を機に、そこからぐんぐんと2倍にまでピーク時の同時接続ユーザー数を伸ばしているという。

さらにValveはそうした好調ぶりを証明するかのように、2024年はSteamで新作ゲームを購入したユーザー数が突出して史上最高だったとのデータを示した。Valveは各タイトルのリリース日から1か月間の収益に絞って、年度別推移をグラフとともに分析している。縦軸のスケールは不明ながら、昨年に比べておよそ1.5倍の大幅な増加となっているようだ。昨年には『パルワールド』や『黒神話:悟空』など、Steamの同時接続プレイヤー数の歴代ランキングに新たに名前を連ねるゲームも見られた。そうした作品も新作の売上増加を後押ししたのだろう。

なお、1か月間の収益が25万ドル(約3700万円・レートは本稿執筆時点)を超えたタイトルは500本以上、100万ドル(約1億5000万円)を超えたタイトルは200本以上あるとしており、どちらも2023年から増加している。一部の人気タイトルが大きな利益をあげるだけでなく、しっかりとプラットフォーム全体が活性化していると言えそうだ。

ちなみにSteamでは現在スプリングセールが実施中(関連記事)。Steamではテーマ別でさまざまなセールが実施されているが、2024年は過去最大の年になったという。四季に応じておこなわれる季節のセールも過去最大の収益を記録し、2023年と比べて収益が10%増加したそうだ。

また、同社はSteamにおける新規ユーザー獲得における影響を検証するため、2023年まで遡り、その年の最も人気のある20本のゲームで初めてSteamを使い始めた170万人のユーザーを追跡したという。当該ユーザーらはそれ以外のゲームを1億4100万時間以上プレイし、ゲームやDLCの購入には7300万ドル(約108億円)を消費。ゲーム内購入に2000万ドル(約30億円)を使っていることがわかった。同社は、Steamを発展させるにあたっては「相乗効果」を重視しているという。Steamで初めてゲームを購入したプレイヤーが、興味をもった他のタイトルを手に取る。単なるゲーム購入の窓口としてではなく「ゲームに出会う場所」として、ユーザーに定着してもらえるプラットフォーム構築を目指したいとの姿勢を示した。

さらに、レポートでは同社の開発する携帯型ゲーミングPC「Steam Deck」の成功についても触れられている。Steam Deckは2022年に発売されたゲーム用デバイスで、Linuxをベースにした独自のオペレーティングシステム「SteamOS」を採用していることが特徴。Steamだけではなく、他のゲームランチャーやストアのゲームも遊べる。2023年には改良版「Steam Deck OLED」を発売。液晶パネルだったディスプレイがHDR対応の有機ELパネルに変更され、バッテリー容量などが向上した。また、Steamにおける対応状況を表示する「Steam Deck互換性プログラム」を推進しており、現時点で約1万7000本のゲームが「プレイ可能」または「確認済み」のレーティングを受けているという。

Valveによると、2024年のSteamにおけるSteam Deckを使用してのプレイ時間は計3億3000万時間であり、2023年と比べて64%も増加しているという。よく遊ばれているゲームとしては、2024年の新作である『Balatro』『黒神話:悟空』などに加えて、『グランド・セフト・オートV』『Stardew Valley』といった人気定番作品も並んでいる。ユーザーの間で堅実に携帯型ゲーミングPCの普及が進んでいるようだ。同社はこのような結果を受けて、Steam Deck・SteamOS・ディスプレイ・バッテリー効率などに対して10年間にわたる投資を続けてきたことが、今日の自社ハードウェア普及に繋がっているとしている。ハードウェアとソフトウェア、さらにはゲーム作品までもを開発するValveの強みだろう。

そのほか、デベロッパー向けのツールやユーザーのための新しい仕様など、2024年にSteamに導入された新機能についても紹介されている。詳細は公式サイトページを確認されたい。既にPCゲームプラットフォームとして確固たるポジションを確立しながら、数年後を見据えて新たなチャレンジを続けるSteam。これからどのようなステージへ進むのか、今後の発展に期待したい。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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