SteamのLinuxゲーマーが世界で400万人以上との推計。“Steam Deck以外”のLinuxユーザーも増加中か

PCゲームプラットフォームSteamを利用するユーザーのうち、Linuxユーザーが初めて3%を超えた。世界で400万人以上が利用か。

PCゲームプラットフォームSteamを利用するユーザーのうち、Linuxユーザーが初めて3%を超えた。Linux上のゲームに関するメディアGamingOnLinuxが報じた。

Linux(リナックス)は、幅広い機器で使われているオペレーティングシステム(OS)の1つである。厳密にはCPUなどのデバイスとアプリケーションを連携する「カーネル」の1つ「Linuxカーネル」のことを指すが、カーネルとしてLinuxカーネルを用いたOSそのものを指すことも多い。Linuxは、オンラインゲームやWebサービスのサーバーなど多くの場面で利用されているが、家庭用PCにはそれほど多く普及していなかった。

ところが今回、Steamユーザーの利用しているOSのうち、2025年10月時点で初めてLinuxが3%を超え、3.05%を記録した(Steamハードウェア&ソフトウェア 調査)。Valveが最後に月間アクティブプレイヤー数を発表した2021年のデータから計算しても、3%という数字は400万人超のユーザーが存在することを意味している。Steamの市場が現在は大きく成長していることを考えると、現在はそれ以上の人数がLinuxからSteamに触れていることになる。

Steamでは、ユーザーが使用するコンピューターハードウェアおよびソフトウェアの種類に関する月次調査を行っている。GamingOnLinuxは、Steamを運営しているValve社が公開した統計データを記録し続けており、調査に関する不具合のあったデータを取り除いた2018年9月以降についてグラフにまとめている

同グラフによれば、SteamユーザーのうちLinuxユーザーの割合はわずかに増加しながらもほぼ横ばいで推移し、2020年ごろまでは1%にも満たなかった。初めて1%を超えたのは2021年の7月。それから約半年後の2022年2月にLinuxベースで開発されたSteamOS搭載の携帯ゲーム機「Steam Deck」が発売され、以降は増減しながらもLinuxユーザーの割合は増加傾向へ転じる。2022年2月のLinuxユーザーの割合が1.02%だったことを踏まえれば、約3年半で3倍という伸びを記録したかたちだ。

ところでLinuxと言っても、その種類はさまざまである。Linuxとして分類されるOSの多くは「ディストリビューション」という形でパッケージ化されて配布されており、先述のSteamOSをはじめ、本稿内で紹介しきれないほどの数が存在している。身近なもので言えば、スマートフォンに採用されているAndroid OSなどもLinuxの1種である。

GamingOnLinuxによれば、Steamユーザーが利用しているLinuxのうちもっとも多いのは、Steam Deckに採用されているSteam OSだという。2025年10月の時点では27.18%で、約4人に1人にあたる割合だ。ところが昨年10月の36.91%からは約10%減となっており、Steam OSの割合はLinux内ではむしろ減少傾向であることが読み取れる。つまりSteam Deckユーザーの増加を上回るペースで、LinuxをインストールしたPCでゲームをしているユーザーが増えていることになる。

実はValve社は、Windows用のゲームをLinux上で動作させる「Proton」というソフトウェアの開発をCodeWeavers社との協働でおこなっている。CodeWeavers社は、Windows用ソフトウェアをLinux上で動作させる「Wine」というソフトウェアの開発をおこなってきたことで有名だ。ProtonはSteam Deckにも採用されており、そのソースコードは公開されている。つまり、ほかのディストリビューションにProtonをインストールすることもできるのだ。Steam Deckを支えてきたProtonの開発が進んだことで、多くのLinuxマシンでゲームをプレイする環境を整えることにつながり、結果としてSteamのLinuxユーザーが増加した可能性も考えられる。

ちなみにProtonが初めて公開されたのは2018年8月のことである。Steam上のLinuxユーザーの割合がわずかながらも上昇し続け、2021年7月に初めて1%を超えた背景として、Protonの存在が影響していたのかもしれない。

これまでPCでゲームをプレイすると言えば、ほとんどがWindowsマシン上でのことを指していた。今回Steam全体でLinuxユーザーが3%を超えたことで、そんな当たり前の状況が少しずつ変わり始めている可能性が示された。現状、Linuxを家庭用PCで使うためにはハードウェアやドライバーの対応状況、ゲーム開発側の最適化、ディストリビューションによっては日本語環境構築の難しさといったさまざまな障壁もある。そのため、すぐにLinuxがWindowsに取って代わることはないだろうが、PCゲーマーの選択肢のひとつにLinuxが入ってくる未来も遠くないのかもしれない。

Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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