Valveの担当者いわく、“Steam Deck 2”はCPUの世代交代待ち。毎年新型を出すつもりはない方針を改めて明言


Steamを運営するValveは10月11日、携帯型PCゲーム機Steam Deckの発売間隔について、“毎年新型を出していくつもりはない”と改めて明かした。Steam Deckのデザイナーを務めるLawrence Yang氏とYazan Aldehayyat氏が米ハードウェアレビューメディアReviews.orgへのインタビューで語っている。

Steam DeckはValveが手がけた携帯型ゲーミングPC。専用に調整されたSteamOS、AMD製のSteam Deck専用のカスタムAPUを採用。ユーザーは自らのSteamライブラリにアクセスし、互換性のあるPCゲームをどこでも楽しめる。最新型となるSteam Deck OLEDは国内向けには2023年12月12日に発売。HDR対応の7.4インチ有機ELディスプレイが搭載され、バッテリー駆動時間も旧型モデルに比べ30~50%ほど長くなったことが公表されている。


そんなSteam Deck OLEDが豪州地域で今年11月頃に発売されることを受け、米ハードウェアレビューメディアReviews.orgはSteam Deckデザイナーを務めるLawrence Yang 氏とYazan Aldehayyat 氏に対してインタビューを実施。Steam Deckの現状や、今後の展望が語られている。

その中でReviews.orgインタビュアーは、Steam Deck の発売間隔にふれている。旧型となるSteam Deck LCDは北米地域向けに2022年2月25日に発売(国内向けには同年12月より)し、新モデルとなるSteam Deck OLEDは北米地域向けに2023年11月16日に発売(国内向けには同年12月より)している。間隔としては約1年で新型が発売されているかたちとなる。インタビューでは“Steam Deckの競合が、1年後にハードウェアを刷新しようとしている”ことに触れられており、それを受けてSteam Deckにおける今後の新型の発売間隔について、Yang 氏とAldehayyat 氏の両名に質問がおこなわれた。

これについてYang氏は、「Steam Deckについては、毎年のペースで新型を出していく予定はない」と改めて回答。同氏はその理由について、少しのマイナーチェンジで値上げしたものを発売するのは、「顧客に対して公平ではない」からであるとの開発方針を示した。また同氏はSteam Deck OLEDはSteam Deckの“第2世代”ではないことも改めて強調。バッテリー効率を犠牲にすることなく、性能が飛躍的に向上するようなCPUの世代交代を待ってから本当の“第2世代”の出荷に取り掛かりたい、と今後のSteam Deckの展望を語った。


なおAldehayyat氏は、ROG Ally XについてSteam Deckと比較しつつ言及した。同機種は7月24日に発売されたASUSの携帯PCゲーム機「ROG Ally」の最上位機種だ。ROG Ally Xに搭載されているディスプレイは範囲48Hzから120HzまでのVRR(ディスプレイ側での可変リフレッシュレート制御)機能に対応。Aldehayyat氏はそのVRR機能にふれ、「Steam Deckに実現したいことリストの一番上にある」と実装についての意欲を表明した。同氏はSteam Deck OLEDにおいてもVRR機能を実装したかったようで、発売まで技術開発に取り組んでいたものの、時間が足りず実現できなかったという。

また携帯PCゲーム機という市場に多くの企業が参入している状況についても、Yang氏は「軍拡競争(arms race)」のような熾烈な競争であるというようには捉えておらず、非常にエキサイティングな状況であるとポジティブな見方を示した。Steam Deckの発売当初は同機の登場により携帯ゲームPC市場がより活性化し、もっと多くの製品が登場することを期待していたとも述べている。現在各社から携帯PCゲーム機が多数リリースされている状況についても、おおむねValveの期待通りであり、その発展を歓迎する姿勢を示している。

次世代となる“Steam Deck 2”の登場については、過去のインタビューなどにおいても、大幅なスペックアップが見込まれるまで開発に慎重な姿勢を取ることなどがたびたび示唆されていた(弊誌インタビュー記事The Verge)。そんな中、Yang 氏とAldehayyat 氏の両名によって、毎年のSteam Deck新型のリリースは改めて否定されたかたちとはなる。しかしながら新型Steam Deckの構想、開発は引き続き行われていると見え、“第2世代”に該当する新型ではバッテリー寿命のさらなる改善やVRR機能の対応などさまざまな刷新が図られるのだろう。その発表はまだまだ先になりそうではあるものの、今後に期待したいところ。