「Steamにて最近のウィッシュリスト登録数が多いゲームランキング」の調査報告。“新鮮な期待”が集まるゲームの傾向とは

GameDiscoverCoは8月16日、Steamにおける各タイトルのウィッシュリスト登録数の推定値をランキングとして公表した。

ゲーム開発者向けのマーケティング調査機関GameDiscoverCoは8月16日、Steamにおける各タイトルのウィッシュリスト登録数の推定値をランキングとして公表した。登録数の多い作品の傾向などが分析されている一方で、GameDiscoverCoは、作品の評価を発売前のウィッシュリスト登録数だけで測ることができないとする見解を示した。

ゲーム販売プラットフォームのSteamでは、ウィッシュリストという仕組みが存在する。ゲームをウィッシュリストに追加したユーザーは、そのゲームがリリースされた際やセール時などに通知を受け取ることができる。Steamを運営するValveによると、「人気の近日登場」タブなどの例外を除けば、ウィッシュリストへの追加によってストアページにおける露出が影響されることはないという(Steamworksドキュメント)。一方でウィッシュリスト登録数は、その作品が発売前にどれだけ注目を集めているかを表す指標としても用いられることもあり、先述した通知機能による販売促進効果も狙ってか、多くの開発者が発売前にウィッシュリストへの登録を呼びかけている。

GameDiscoverCoによれば、ウィッシュリストの総登録数と直近のウィッシュリストの勢いはどちらも重要な意味をもつという。しかし、ウィッシュリスト登録数が多いからといって、作品が売れるとは限らない様子だ。たとえばSteamではさまざまな基準に基づいてストアページに取り上げられることがあり、本来の(オーガニック流入による)ウィッシュリスト率がそこまで高くなかったとしても、5万件から7万5000件程度のウィッシュリスト数でランキングに滑り込める可能性はあるという。ほかにも、発売中止となったサバイバルゲーム『The Day Before』を例に挙げ、有力なトレイラー映像による期待ばかりを集め、実際には実現する能力がないといったパターンも存在すると述べている。

Image Credit: GameDiscoverCo on Web

そのため、同社ではまず独自の推定に基づいて、Steamの発売前のゲームのうち、現在ウィッシュリストにもっとも多く登録されている上位10本のタイトルを列挙。上から順に『Hollow Knight: Silksong』『Deadlock』『Subnautica 2』と続いている。

ただたとえば『ARK2』のようにランキング内のタイトルの中には延期が続いたり、長期間にわたって続報がないことなどから、高い期待が集まりつつも懐疑的な見方が広がっているタイトルもあるという。一方ではプレイテストやデモ版などを通してすでに遊ぶことができているものも多いほか、人気シリーズの最新作といったゲームプレイが想像にたやすい作品なども存在する。なおこれらはそれぞれSteamが公開しているウィッシュリストランキングとほぼ同様の結果となったようだ。同ランキングは、上位タイトルが発売を迎えるまで変動しづらい傾向もみられる。

そこでGameDiscoverCoではより「新鮮な」リストとして、過去90日間にウィッシュリストにもっとも多く追加されたタイトルのランキングを作ってみたという。すると先ほどの累計のランキングとは大きく違った顔ぶれになったそうだ。上から順に『Battefield 6』『バイオハザード レクイエム』『ILL』と続く。

Image Credit: GameDiscoverCo on Web

しかし各作品の背景をそれぞれ詳しく見てみると、実はそこまで傾向に変化はないということがわかったという。たとえば、4位のゾンビサバイバルゲーム『Quarantine Zone: The Last Check』は、5月に配信開始されたデモ版で注目を集め、100万件を超えるウィッシュリスト数を獲得したことが報告されたタイトル(関連記事)。一方、3位のゴアホラーアクション『ILL』は、今年6月に約4年ぶりとなる新トレイラーが公開。ただし発売に向けた具体的な道筋などはまだ明らかになっていない(関連記事)。

このように人気シリーズの新作、デモ版で好評を得たゲーム、そしてトレイラーや事前情報で注目を浴びたタイトルなどがそれぞれウィッシュリスト登録されやすく、累計で見たときと同じ傾向にあるようだ。逆に言えば、これからヒットを目指す開発者であれば、発売前に大きな注目を浴びるためには、完成度の高いデモ版やインパクトのあるトレイラーを用意することは欠かせないのだろう。

ちなみにGameDiscoverCoは、ウィッシュリスト登録数のランキングに入るためにはどれほどの数が要求されるかを推定している。トップ10入りするためのウィッシュリスト登録数はおよそ184万件で、100位に入るのには39万4000件、1000位では4万4000件が必要となる模様。なお現時点で同社が把握している限り、Steamの発売前のゲームは3万3000本以上存在するといい、1000位ですら相当上位ということがわかる。あくまでも目安ではあるものの、これをある程度の基準とすることもできるだろう。

Image Credit: GameDiscoverCo on Web

しかし先述したように、たくさんウィッシュリストに登録されたからと言って、その作品が実際に成功するかはわからない。GameDiscoverCoによると、どんなゲームもウィッシュリスト数が多いからといって本当に売れるかどうかにはリスクをもち、特にトレイラーによって注目の的となった作品ではその危険性が高いという。具体的なゲームプレイがどのような感じなのかまだユーザーに伝わっていないため、実際にリリースされた時のギャップで評価を落としかねないという側面はあるのだろう。

つまり開発者はウィッシュリストの登録数で安心することなく、自身の作品がウィッシュリスト登録数を伸ばした背景をきちんと捉え、期待に応えられるような作品づくりを目指す必要がある、ということだろう。

いずれにせよ、これまでの累計ウィッシュリスト数ランキングと直近90日間のランキングでラインナップに大きな違いがある点は興味深いところ。反面、ランクインした理由はある程度共通しているようで、ウィッシュリスト数を集める手法にはセオリーがあることもうかがえる。ユーザー側としては、報告されたウィッシュリスト登録数だけで作品を判断するのではなく、その作品が注目を集めている経緯などとあわせて購入を検討することも重要かもしれない。

Shion Kaneko
Shion Kaneko

夢中になりやすいのはオープンワールドゲーム。主に雪山に生息しています。

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