Steamにて「配信すべきではないコンテンツ」が拡大、“決済会社・クレカ会社の基準”も考慮されるように。成人向けコンテンツは特に
Steamworksドキュメンテーションにて、「Steamで公開すべきではないもの」に新たな例を記載された。

Valveは開発者向けガイドラインであるSteamworksドキュメンテーションにて、「Steamで公開すべきではないもの」に新たな例を記載した。今後はSteamにおける決済代行業者および関連するカード会社・銀行などが定める規則や基準に抵触する可能性のあるコンテンツも、取り締まりの対象になりうることが明記されている。
Steamworksドキュメンテーションにおいては、「登録作業」の項目でSteamでコンテンツを配信する際のフローなどが紹介されている。配信できるコンテンツのガイドラインも定められており、「Steamで公開すべきではないもの」の参考として、これまで14項目が例示されていた。このなかではたとえばマルウェアやウイルス、ヘイトスピーチに関するコンテンツ、実在する人物のヌードや露骨な性的画像、子どもを不当に扱う一切のコンテンツなどが公開すべきではないものとして示されている。
そして今回、英語版のSteamworksドキュメンテーションにおける「Steamで公開すべきではないもの」に15番目の項目が追加されている:
15. Content that may violate the rules and standards set forth by Steam’s payment processors and related card networks and banks, or internet network providers. In particular, certain kinds of adult only content.
Steamにおける決済代行業者および関連するカード会社・銀行、インターネットプロバイダーが定める規則や基準に違反する可能性のあるコンテンツが、新たに公開すべきではないコンテンツとして示された格好だ。このなかでは特に、特定の種類の成人向けコンテンツが対象となりうることが例示されている。
Steam上の成人向けゲームに関して、最近では今年3月22日にリリースされた『No Mercy』が物議を醸していた。同作では公式説明によると暴力を背景とした合意のない性交、つまり強姦を主要なモチーフとしていたほか、近親相姦といった内容も取り扱われていたとみられる。同作のリリース後には、オーストラリアに拠点を置く女性の人権擁護団体Collective ShoutやイギリスメディアLBCなど、複数の団体やメディアが販売中止を求める声をあげていた。イギリスの内務大臣Yvette Cooper氏や科学・イノベーション・技術大臣のPeter Kyle氏もLBCを通じてコメントを発表。Valveに対して販売の差し止めを求めていた。
そうした中で『No Mercy』は4月10日までにイギリス・カナダ・オーストラリアの3か国で販売が中止。その後開発元が自ら販売を取りやめることになった(関連記事)。『No Mercy』については先述したように各国の人権団体が批判を寄せる事態となり、開発元は販売取りやめの理由として「自分たちは世界中と戦うつもりはないし、SteamとValveに問題を引き起こしたくはない(We don’t intend to fight the whole world, and specifically, we don’t want to cause any problems for Steam and Valve.)」といった声明を伝えていた。

ちなみにその後、先述したCollective Shoutは、Steamやitch.ioにおいて強姦や近親相姦をモチーフとした作品が『No Mercy』以外にも数多くあると報告。7月11日には、PayPal、Master Card、Visa、JCBといった決済代行会社・クレジットカード会社に向け、両プラットフォームでの支払処理停止を要請する公開書簡を発表していた。
とはいえ、そうした団体の活動が「Steamで公開すべきではないもの」が追記された直接的な原因となったかどうかは不明。昨年から今年にかけては日本国内でも、DLsiteなど成人向けコンテンツを扱うサイトにおいてMaster CardやVisaといった海外大手ブランドのクレジットカードの決済が停止される事態も相次いでいる(産経ニュース)。『No Mercy』の騒動を含め、世界的な情勢を鑑みて「Steamで公開すべきではないもの」に新たな例が明記されたのかもしれない。
いずれにせよ今後、「Steamにおける決済代行業者および関連するカード会社・銀行、インターネットプロバイダーが定める規則や基準に違反する可能性のあるコンテンツ」がどのように判断され、取り締まられていくのかには関心が寄せられている。すでに配信されている作品にも影響が及ぶかどうかも注目されるところだろう。