Steamで発売された歴史ゲーム、人種差別の批判集まり一時販売停止に。黒人を奴隷船に積み上げる“奴隷テトリス”で

ValveのPCゲーム配信プラットフォームSteamから、歴史を学ぶ教育ビデオゲーム『Playing History 2 – Salve Trade』が一時削除された。原因は作品内のミニゲーム「奴隷テトリス(Slave Tetris)」などに批判が集まったためで、のちにデンマークの開発スタジオSerious Games Interactiveが該当部分を削除したバージョンを再リリースしている。

ValveのPCゲーム配信プラットフォームSteamから、歴史を学ぶ教育ビデオゲーム『Playing History 2 – Salve Trade』が一時削除された。原因は作品内のミニゲーム「奴隷テトリス(Slave Tetris)」などに批判が集まったためで、のちにデンマークの開発スタジオSerious Games Interactiveが該当部分を削除したバージョンを再リリースしている。

“奴隷テトリス”に批判集まる

『Playing History』シリーズは、様々な歴史を学ぶことができる8歳から14歳向けの学習ビデオゲームだ。プレイヤーは実際にその時代の登場人物を操作し、ア ドベンチャーパートとミニゲームを繰り返しながら歴史の勉強を続けてゆく。Steamではバイキングをテーマにした第1弾に続き、今回の奴隷貿易を題材に した『Playing History 2 – Slave Trade』がリリースされている。『Playing History 2 – Slave Trade』は、アフリカで奴隷狩りに合った少年ティムを操作し、船長シーハブの使用人としてさまざまな命令や任務をクリアしてゆく。

『Playing History 2 – Slave Trade』自体は2013年9月13日にリリースされていたが、問題となったミニゲーム「奴隷テトリス」がどこからともなく取り上げられると、SNS上 でクローズアップされ一気に拡散していった。「奴隷テトリス」は、奴隷船に黒人たちが描かれたピースを積み込んでゆくというミニゲームで、いびつな形の船 内にできる限りピースを配置することが目的となる。

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人種差別的な表現だといった批判から、子供が歴史を学ぶ方法としては正しくないといった反対意見、さらには奴隷制度の表現を間違えているといった指 摘まで。SNS上での批判は開発のSerious Gamesにもすぐ届き、同スタジオは「奴隷テトリス」を削除した『Playing History 2 – Slave Trade』を再リリースし、謝罪のメッセージを公表している。

Serious Games「ゲームとトレイラーは修正されました。一部の人々に非常に思慮が欠けていると受け止められた“Slave Tetris”は削除されています。この件はゲームの教育的な目標に暗い影を落としていました。非人道的な奴隷制を強調したゲームメカニックにより気分を 害した人々へ謝罪します。人々に伝え学んでもらうことが目標でした、ゲームの15秒ほどの小さなパートで脱線した議論をさせたかったわけではないのです」

実際の歴史では“奴隷テトリス”のようなことは行われていた

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奴隷船の船内図(via Description of Slave Ship)

奴隷制度の表現に「テトリス」を使うという、ブラックジョークのような手法を採用したSerious Gamesの短慮さは責められても仕方ないだろう。だが、Serious Gamesが、単純に面白そうだからといった理由で奴隷船に黒人を積み上げるシーンを描いたわけではない点には注意したい。実際、当時の奴隷貿易では、こ の「奴隷テトリス」のようなことが頻繁に起きていたと言い伝えられている。

奴隷船においては、黒人たちはすし詰め状態で船内に放り込まれ、海洋を進むあいだ何週間も酷い環境下に囚われていた。たとえばイギリスの大英図書館に 貯蔵されている「Description of a slave ship」によれば、高さ25センチメートル(10インチ)の棚のような寝台に寝そべる形で黒人たちは敷き詰められたという。奴隷たちが逃亡したり反乱す ることを防ぐために、2人1組で手足を拘束されることもあった。室内には排泄物や吐瀉物が放置され、さらに食料や水もすぐに底を尽いたため、船内で伝染病 などにかかって死ぬ者が後を絶えなかったともされている。

米国を中心に議論の的となっている「LGBTに配慮した表現」と共に、「レイシズムに関する表現」はビデオゲーム内でも強く意識されているセンシティブな要素だ。2011年にはTIME誌が 『Deus Ex: Human Revolution』に登場する黒人女性のホームレスを挙げ、前時代的な人種差別表現だと主張していた。“すべての人間に配慮したビデオゲーム”を開発 することは不可能だが、SNS上で問題が早急に拡散されるようになった昨今、そういったコンテンツを扱う際にはある程度の覚悟と思慮が必要となりそうだ。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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