『Skyrim』開発者いわく「今のオープンワールドは開発規模大きすぎて大変そう」。規模が大きくなるほど抱えるジレンマ


Bethesda Softworksから販売されている『The Elder Scrolls V: Skyrim』(以下、Skyrim)の開発に携わった開発者などが、近年のオープンワールドゲームについて言及。同作と近年の作品の開発規模のちがいに触れつつ、大規模開発の問題点などを語っている。海外メディアRock Paper Shotgunが報じている。

『Skyrim』はBethesda Game Studiosが手がけ、2011年11月に発売されたオープンワールドRPGだ。舞台となるのは北方のスカイリム。名もなき囚人の主人公は処刑を免れ、ドラゴンを巡る冒険を繰り広げることになる。発売から13年ほど経った現在となっても、多くのユーザーに愛され、Mod制作なども盛んな人気作だ。

Nate Purkeypile氏はそんな『Skyrim』の制作に携わったデザイナーだ。同氏は過去にレトロスタジオやBethesda Game Studiosに在籍していた経験があり、同作のほかにも『メトロイドプライム3』『Fallout 4』などの作品に、アーティストとして開発に参加している。そして現在Nate氏は独立してJust Purkey Gamesを設立。オープンワールドホラーアクション『The Axis Unseen』を開発している。

『Skyrim』


海外メディアRock Paper Shotgunは7月3日、オープンワールドのジャンルについてのインタビューシリーズを公開。第一弾として、Nate氏らにインタビューを実施したかたち。記事では、近年のオープンワールドゲームでは指定地点を順に移動させられるいわゆる“お使いクエスト”や、同じようなコンテンツが広大な土地に散りばめられているとの論を展開。Nate氏に対し「オープンワールドゲームはなぜこれほど退屈になったのか(how did the open world game get so boring?)」という問題提起をおこなった。これに対しNate氏は、開発規模の大きさも関係しているのではないか、と自身の経験を交えつつ見解を示した。

まずNate氏が指摘したのは、チームの規模が大きくなったことによる開発費の増加だ。AAA級と呼ばれるタイトルは、大規模なチームや高額の開発費などを費やして制作される。しかしそうした作品は、膨れ上がった開発費の回収のために、リスクを軽減し“失敗しない”ことが求められるとしている。加えて、開発に携わる人員が多くなると、開発している部分を小分けにしてセクションごとに区切る必要が出てくるという。そうした場合、制作物の確認やバランスの調整を経ない状態の開発は非常に難しい、との考えを述べている。つまりゲーム世界における“びっくりするような要素”が盛り込みづらいというのだ。

Nate氏は自身が『Skyrim』の開発に携わっていた際、担当箇所を100人くらいのチームで制作していたと述べた。そのような比較的小規模での進行ではチーム内での信頼関係がちゃんとあり、「自分自身で作り上げたものを組み込むことができるかもしれない」といった雰囲気すらあったという。たとえば『Skyrim』の北部に位置する洞窟エリア「ブラックリーチ」は、もともと当初の開発計画にはなかったそうだ。しかしこの暗く深い場所に広がるエリアは、スタッフたちには好評だったようで、同作にそのまま収録されたとのこと。

『Starfield』


一方Nate氏によると、『Skyrim』と同じくBethesda Game Studiosが手がける『Starfield』では、「4つのスタジオにわたって500人規模のスタッフがいたような」開発環境だったという。実際に『Skyrim』と『Starfield』のスタッフクレジットを比較しても、後者の方がはるかに開発スタッフを多く抱えていたことが確認できる。

当然チームごとによって人数比率は異なるだろうが、『Starfield』ではNate氏が先述の形容を用いるほどまでに規模が大きく、細かなコミュニケーションが難しい環境だったのかもしれない。Nate氏は、『Starfield』にも物語やちょっとした“発見”をもたらす機会はまだあるだろうとしつつも、規模が大きくなるにともなって、そういった要素を差し込むことは難しくなるだろうと語っている。

『Skyrim』が開発された2000年代と、現在のオープンワールドゲームの開発現場を取り巻く環境はおそらく大きく変化しているだろう。とはいえ、実際にオープンワールドゲームの開発に携わった人物から、開発者目線で近年のオープンワールドが抱える問題点が指摘されたのは興味深い。規模の増大によるデメリットについての見解が、実際のエピソードも交えて具体的に示されたかたちだ。