SIEとテンセントの“『Horizon』そっくりゲーム”訴訟、いきなり「秘密の和解」で決着。テンセントは“将来の協業”にも前向き、円満解決か

『LIGHT OF MOTIRAM』を巡ってSIEがテンセントを相手取り提起していた訴訟が、当事者間で「秘密の和解」に至ったことが明らかとなった。

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)は今年7月、テンセント傘下スタジオが手がける『LIGHT OF MOTIRAM』について、『Horizon』シリーズ作品の著作権および商標権を侵害し、消費者の混同を招いているとして提訴。テンセントは裁判所に対し訴状の却下を求めて申し立てたものの、SIEからはそれに対する反論などもおこなわれてきた。2026年1月に審理がおこなわれる見込みであったが、このたび当事者間で「秘密の和解」に至ったことが明らかとなった。海外メディアThe Vergeなどが報じている。

『LIGHT OF MOTIRAM』は、テンセント傘下のPOLARIS QUESTが手がけるマルチプレイ対応のオープンワールドサバイバルゲームとして、2024年11月に発表された。文明崩壊後の世界をメカが野生生物のように闊歩するという舞台設定であった。発表後すぐさま、そうした世界観のほか、キービジュアルまでSIE傘下のGuerrilla Gamesが手がけた『Horizon Zero Dawn』に似ていると物議を醸していた。

その後SIEは今年7月、カリフォルニア州北部地区連邦裁判所にて、テンセント関連企業による著作権および商標権の侵害を主張。「slavish clone(独創性のないクローン)」であり、消費者を混乱させる恐れがあるとして、『LIGHT OF MOTIRAM』のリリース差し止めや損害賠償を求めた。ちなみに裁判所に提出された文書のなかでは、2024年にテンセントからSIEに対し、『Horizon』の新作ゲームについての協業提案があり、SIE側がこれを拒否していた経緯があったことも明かされていた(関連記事)。

これに対しテンセントは訴状の却下を求めて申し立てたものの、SIEからはそれに対して反論。またSIEは仮差し止め命令の申し立てを提出し、著作権および商標権についての訴訟が決着するまでの間、テンセントに対して『LIGHT OF MOTIRAM』を含む、『Horizon』シリーズに類似したあらゆる作品の利用禁止や、同シリーズの主人公アーロイのキャラクター商標と紛らわしい表示の使用禁止などを要請していた。その後両社の合意に基づき、「訴状の却下を求める申し立て」および「仮差し止め命令の申し立て」を2026年1月29日にまとめて審理するように裁判所への要請もおこなわれていた(関連記事)。

一方で今回、12月17日付で裁判所に提出されたとみられる文書によると、SIEおよびテンセント側の当事者全員が「秘密の和解(the confidential settlement)」に至ったという(資料pdf)。つまり訴訟とは別に、当事者間で非公開の条件で和解に至ったということだろう。結果として本訴訟において係属中の申立てはすべて取り下げられ、本件訴訟は以後同一の請求項で再提起できないかたちで却下となる。また各当事者はそれぞれ自己の弁護士費用および訴訟費用を負担するかたちで決着となるそうだ。また本稿執筆時点で、『LIGHT OF MOTIRAM』のSteamとEpic Gamesストアのストアページは閲覧できず、取り下げられたとみられる。

審理を前に突如和解に至った『LIGHT OF MOTIRAM』を巡る訴訟。なおThe Vergeの取材に対してTencent Americasの広報責任者であるSean Durkin氏は、「SIEとテンセントは秘密の和解に至ったことに満足しており、本件についてこれ以上公にするコメントはありません」と返答しているという。また『LIGHT OF MOTIRAM』とは別の話という可能性もあるものの「SIEとテンセントが将来的に一緒に仕事をしていけることを楽しみにしています」ともコメントを寄せており、和解に至ったことで今後協業する可能性もあるのかもしれない。

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Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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