老舗オンライン将棋『将棋倶楽部24』今年末になんとサービス終了へ。オンライン将棋の“象徴的存在”が、27年の歴史に幕

有限会社将棋倶楽部24の代表である久米宏氏は10月1日、オンライン将棋『将棋倶楽部24』を2025年12月31日をもってサービス終了することを発表した。

有限会社将棋倶楽部24の代表である久米宏氏は10月1日、オンライン将棋『将棋倶楽部24』を2025年12月31日をもってサービス終了することを発表した。長らく将棋ファンに愛されてきたサイトが、27年の歴史に幕を下ろすことになる。

『将棋倶楽部24』は、インターネット上で対局がおこなえるオンライン将棋サービスである。1998年末にサービスを開始し、多くの改修を重ねながら、インターネットの場で将棋を指せる場所を提供し続けてきた。久米氏は同サービス上に「将棋倶楽部24年内終了について」という文章を掲載。兼ねてより引退を考えていたことや、サービス運営を託せる後任の人材が育っていないことを理由にサービス終了を決定したことが語られた。この発表を受け、多くの将棋愛好家の間で衝撃が広がっている様子だ。

Image Credit: Oliver Orschiedt on Wikipedia Commons

『将棋倶楽部24』がサービスを開始したのは1998年末ごろのことである。当初は富士フイルムビジネスイノベーションの社内ベンチャービジネス事業としてサービスが開始された。2001年5月には有限会社化がおこなわれたが、久米氏1人が従業員という体制で運営をおこなっており、今日に至っている。

同サービスはインターネット上で気軽に将棋を指せる場として長らく将棋愛好家に利用されており、「24」の愛称で親しまれてきた。プロ・アマチュア問わず多くの利用者が存在し、これまでに登録した会員数は30万人以上だという。将棋ファンならずとも名前を知っているであろう藤井聡太七冠(竜王・名人・王位・王座・棋聖・棋王・王将。保持タイトルは記事執筆時点)も、利用していたことを明かしている(将棋情報局)。また、2004年にはインターネット上で正体不明の最強プレイヤーが現れるといったマンガさながらのエピソードもあり、長らく代表的なオンライン将棋サービスとして将棋の歴史とともにあった存在だ。

ちなみに『将棋倶楽部24』では、レーティングシステムによってユーザーの強さを数値化している。レーティングの値により段位・級位が変わっていく仕組みとなっており、腕を磨いてより上の段位を目指すのは、長らく将棋愛好家の中でひとつの目標となってきた。そんなサービスが終了するとあって、SNS上では多くの将棋愛好家がさびしさや感謝の言葉を投稿している様子も見られる

ところで、『将棋倶楽部24』の長期に渡る運営には困難も立ちはだかった。1998年にサービスを開始した当初はJavaアプレットで動作していたが、2015年にはGoogle ChromeやMicrosoft Edgeなど、多くのブラウザで動作させることが不可能となってしまう。一時的にInternet ExplorerなどのJavaが動作するブラウザの使用が推奨され、Javaで動作するデスクトップアプリケーション版も配布されたが、2021年にOracle社がJavaのアップデートを終了することが決まり、大規模な改修を余儀なくされた。現在は2020年に提供が開始されたHTML5版でのサービスがおこなわれている。

また、『将棋倶楽部24』はiOS/Android向けのアプリ版も提供しており、こちらのアップデートもおこなわれてきた。さらに、オンライン将棋に於いてはいわゆる「ソフト指し」(将棋ソフトを利用して対局すること)などの不正行為への対応や、マナーの悪い利用者への対応なども必要となる。1人で運営する負担は計り知れない。

久米氏は『将棋倶楽部24』のトップページで、サービス終了を告げる文章へのリンクの傍らにて、現在は昔と違い将棋対局サイトはたくさんあり、「24」の終了後も自身にあったサイトを見つけて将棋を継続してほしいとの思いを綴っている。たしかに、スマートフォンを中心に気軽にプレイできる『将棋ウォーズ』や、感想戦機能を備えた『81道場』、多くの海外プレイヤーに親しまれている『Lishogi』など、現在のインターネット上で将棋を指せる場所は数多い。必ずしも『将棋倶楽部24』がその役目を果たさずとも良いという判断なのだろう。しかし「24」の終了は、インターネット黎明期から続いたひとつの時代の終焉とも言える。今後多くの将棋愛好家が、次なる安住の地を求めることとなるだろう。

将棋倶楽部24』はサービス中。2025年12月31日にサービス終了予定だ。

Naoto Morooka
Naoto Morooka

1000時間まではチュートリアルと言われるようなゲームが大好物。言語学や神話も好きで、ゲームに独自の言語や神話が出てくると小躍りします。

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