米国の労働組合SAG-AFTRAは17日、ゲーム業界で活躍する声優および俳優の待遇改善を訴えるインタラクティブメディア協定ストライキの実施に際して、カリフォルニア州バーバンクのInsomniac Games本社前にてピケッティングを実施した。協定見直しの交渉決裂に端を発するストライキは先月21日に決行されたもので、間もなく1か月を迎える現在も継続中。これまでにElectronic ArtsとWB Gamesを対象にピケラインが張られてきた。これで同協定の締結企業をターゲットにしたピケッティングは3社目となる。
これまでのピケには700人以上が参加
SAG-AFTRA(Screen Actors Guild‐American Federation of Television and Radio Artistsの略)は、映画・テレビ・ゲーム業界に携わる俳優や声優、ジャーナリスト、ラジオ番組のパーソナリティを代表するアメリカの労働組合。2012年の発足以来、およそ16万人が加入している。今回のストライキのきっかけになったインタラクティブメディア協定は、まだゲーム業界がプロのパフォーマーを起用し始めたばかりだった20年以上も前に締結されたものであり、これまで組合は市場規模の成長に合わせた待遇の改善を長きにわたって訴え続けてきた。
先月21日、2015年2月からおよそ18か月におよんだ改善交渉が最終的に決裂。Activision PublishingやElectronic Arts Production、Disney Character Voices、Take 2 Interactive Software、WB Gamesなど、ゲーム作品にプロの俳優や声優を起用している締結企業を対象にストライキ状態へ突入した。これにより締結各社が2015年2月17日以降に制作を開始した全てのゲーム作品において、声の演出やモーションキャプチャーに携わる全ての組合メンバーが、待遇が改善されるまで新たなオーディションへの参加はもちろん、現在開発中の作品への出演を一時的に中断することになった。
このストライキ決行を受けて今月はじめ、締結企業9社はVideo Game Companies名義で連立グループを発足。SAG-AFTRAの運営方針と強硬姿勢に反論するキャンペーンサイトを立ち上げた。組合側と企業側が最後まで合意にいたらなかった契約内容の透明性と二次報酬、声優が抱える身体的負担について、新たに提案した内容はほとんど組合の要求どおりだったと主張している。その上で、交渉のテーブルに置かれた提案内容について、組合側がメンバーの投票によって結論を出すべきだと指摘。実際にゲーム業界で働くパフォーマーの意見も取り入れずに不必要なストライキに踏み切ったことは軽率だと批判した。
これまでSAG-AFTRAは、10月24日にロサンゼルスのElectronic Arts関連施設で、11月3日にバーバンクのWB Games本社でピケッティングを実施してきた。また、現地へ集合できない組合メンバーには、#PerformanceMattersというハッシュタグを旗印にTwitterやFacebook、Instagramといったソーシャルメディアを通じた運動への参加を呼びかけている。このハッシュタグは、ストライキにいたる一連のムーブメントの中で、過去には『Deus Ex』シリーズの主人公「Adam Jensen」を演じるElias Toufexis氏や、『バイオハザード』シリーズで「アルバート・ウェスカー」役を務めるD.C. Douglas氏、『Mass Effect』シリーズの「Femshep」役で知られるJennifer Hale氏といった多くの著名人に支持されたことで脚光を浴びた経緯がある。
現地時間で17日11時30分、SAG-AFTRAはカリフォルニア州バーバンクに位置するInsomniac Games本社にてピケラインを張った。Electronic Artsでのピケッティングでは300人以上、WB Gamesの際は700人以上の組合メンバーや親族が参加したと報告されており、今回も相当数が集結したことが考えられる。なお、SAG-AFTRAは企業側のキャンペーンサイト設立について、ゲーム企業がウェブサイトで組合の商標を使って混乱を招いているとして、サイトの運営を直ちに停止するよう督促状を発行していたが、記事執筆現在のところ変化はない。組合がストライキに突入してから間もなく1か月が経過する。2年近くも粘り強い交渉を続ける中で、ビデオゲーム黎明期に築かれた常識を根底から覆そうと執念を燃やしてきた組合側が、容易に引き下がるとは到底考えられない。膠着状態はさらに続きそうだ。