大人になると「10歳の頃に流行ったゲーム」を再びプレイする傾向が研究で示される。「携帯機はスイッチでも携帯モードで遊ばれがち」などのデータも
「レトロゲーム」と呼ばれる作品群が再評価される中で、人々は「10歳の頃に流行していたゲーム機」を再びプレイする傾向にある、という研究結果が発表された。

近年、リマスター作品やNintendo Switch Onlineの「Nintendo Classics」、PS Plusにおける「クラシックスカタログ」など、過去のゲーム作品を現行ハードで気軽にプレイできる環境が整いつつある。いわゆる「レトロゲーム」と呼ばれる作品群が再評価される中で、人々は「10歳の頃に流行していたゲーム機」を再びプレイする傾向にある、という研究結果が発表された。海外メディアThe Nerd Stashなどが報じている。
この研究は、オックスフォード大学の博士、Nick Ballou氏たちにより実施され、心理学系の査読前論文を掲載するウェブサイトPsyArXivにて報告された。本論文では、1980年代から2000年代初頭にかけて登場した、いわゆる第3世代から第6世代に相当するコンソールを「レトロゲーム」と定義し、それらが人間の心理的幸福感やノスタルジア(懐かしさ)にどう影響を与えるのかを探る内容となっている。

調査の対象となったのは、18歳から79歳までの男女1607名。偏りのない年齢層・性別構成でのプレイヤー群を対象に、Nintendo Switch Onlineで提供されている6種類のレトロゲーム機(ファミコン、スーパーファミコン、NINTENDO 64、ゲームボーイ、ゲームボーイアドバンス、メガドライブ)のプレイデータが収集された。
その結果、調査対象者の約40%、660名が少なくとも一度はレトロゲームをプレイしており、プレイ時間の総計は約1万2000時間に及んだ。これはNintendo Switch全体のプレイ時間の約4%を占めるという。
さらに分析を進めた結果、多くのプレイヤーが「自身が約10歳の頃に流行していたゲーム機」をもっとも頻繁にプレイしていることが判明。この傾向は、幼少期のゲーム体験が記憶に深く刻まれており、それが「個人的なノスタルジア」を呼び起こすためとされている。
一方で、調査データの約29%にあたるプレイ時間は、対象者が生まれる前にすでに製造終了していたゲーム機によるものだった。このことから、直接的な思い出とは無関係な「歴史的なノスタルジア」もまた、レトロゲームプレイの動機となることが示唆されている。

また論文では、レトロゲームを好むユーザー層の傾向も示されていた。年齢が高くなるほどレトロゲームのプレイ率が上昇し、特に40代前後をピークに人気が高まる傾向が見られた。なかでも男性プレイヤーの比率が高いという。そして人気のコンソールはNINTENDO 64とスーパーファミコンで、前者が全体の32.7%、後者が27%のプレイ時間を占めた。いずれも90年代に多くのユーザーを魅了したハードであり、該当世代にとって特に思い出深い存在なのだろう。
また、Nintendo Switch上でのプレイスタイルに関しても調査が行われている。ゲームボーイやゲームボーイアドバンスといった元々携帯機だったタイトルは、Nintendo Switchでも69%が携帯モードでプレイされていた。一方で、据え置き型のゲームハード作品については、携帯モードでのプレイ率は57%に留まったとのこと。研究チームはこれについて、プレイヤーが当時そのハードで遊んだ記憶と同じ操作感でプレイしようとする傾向があると指摘している。またそもそも携帯機向けにリリースされたタイトルでは、携帯モードで遊びやすいという可能性も考えられる。

このようなレトロゲームプレイの傾向は、心理学における「レミニセンス・バンプ」と呼ばれる現象にも通じるという。「レミニセンス・バンプ」とは10〜30代の記憶をより鮮明に思い出すようになる現象。たとえば手がかりとなる語が提示された際に、その言葉に関連する出来事を思い出すと、その年月日は10〜30代の出来事が多いとされる。レトロゲームについても、この現象によって、20代前後を中心とした当時のゲーム体験が記憶に強く残り、プレイ動機に影響を与えていると考えられるわけだ。
なお、レトロゲームのプレイ頻度と、幸福度や人生の満足度との間に有意な相関は見られなかった。ただし、これはあくまで平均的・長期的な傾向に関するものであり、研究者はゲームプレイ直後の感情変化などに注目した研究が今後必要になると述べている。

本研究は「Nintendo Classics」のプレイデータをもとにしており、対象がほぼ任天堂製のタイトルやハードに限定されている点には注意が必要。またPlayStationシリーズやXboxシリーズなどで同様の調査をおこなった場合には、また異なった結果が出ることも考えられる。とはいえ、「10歳の頃に遊んだゲーム機に再び手を伸ばす」という傾向がデータとして示されたのは興味深い。
ちなみに「Nintendo Classics」では今後Nintendo Switch 2向けにゲームキューブタイトルの配信も予定している(関連記事)。また『カービィのエアライダー』といった、ゲームキューブ世代が待望していた続編も発表されている(関連記事)。当時10歳前後でゲームキューブに親しんでいたユーザーにとっては、特に感慨深いニュースだろう。またPS Plusのクラシックスカタログ向けには、3月に1997年にリリースされた初代『アーマード・コア』などが登場。1月にも1997年リリースの『BIOHAZARD Director’s Cut』が登場している。「Nintendo Classics」以外にも、「レトロゲーム」として当時のゲームを改めてプレイする機会は、十分にあるといえよう。
最新ゲームが常に注目を集める現代においても、過去の記憶に根ざした体験は確かにプレイヤーの心を動かし続けている。時には、自身が10歳の頃に夢中になったゲームを再び手に取り、当時の感覚を追体験してみるのもいいかもしれない。