【UPDATE】稲船氏の新作『RED ASH』が中国企業からの出資により開発資金を確保、Kickstarterキャンペーンは継続へ

7月からKickstarterキャンペーンが開始されていた稲船 敬二氏の新作『RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女編』が、中国の企業FUZE Entertainmentからの出資により、開発決定に至ったことが明らかにされた。

【UPDATE 2015/8/3 12:00】 FUZEによる出資を受け、『Red Ash』のKickstarterキャンペーンにおけるイニシャルゴール達成時の追加コンテンツなどが発表された


 

7月からKickstarterキャンペーンが開始されていた稲船敬二氏の新作『RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女編』が、中国の企業FUZE Entertainmentからの出資により、開発決定に至ったことが明らかにされた。PS4/Xbox One向けの移植も決定している。現在実施されているKickstarterキャンペーンは、予定どおり現地時間の8月4日まで継続して続けられてゆく見込みで、資金が獲得できた場合にはさらなるゲーム内容拡充に投じられる。

中国のエンターテイメント企業より出資

FUZE Entertainmentは中国のデジタルエンターテインメントカンパニーであり、コンソールハードの製造およびコンソールゲームの販売を行っているという。トリプルA級タイトルを展開するために各社とパートナーシップを結んでおり、今回はその流れのなかで稲船氏のスタジオ「comcept」と提携を結ぶに至ったようだ。FUZEの公式サイトでは、同社が据え置き機型と思われるゲームコンソールを開発していることも記されている。

なお『RED ASH』の権利はcomceptが有しており、クリエイティブ(開発)における裁量や決定権も、同スタジオが権限を所有している。

開発チームは「以前からお知らせしておりました通り、私たちはKickstarterキャンペーンの実施と並行して、ハードウェアメーカーさんや開発パートナーとなる企業を求め、交渉を続けてきました。世界観やアート資料、クリエイター達の紹介、そして今回のモックアップ、RED ASHの魅力を伝えるための材料を増やしていく中で、この度ついにFUZE EntertainmentさんがRED ASHを魅力あるコンテンツであると判断し、出資を決意してくださったのです!」と伝え、Kickstarterのキャンペーンを展開している間にFUZEと交渉し、出資が決定したと説明している。

『RED ASH』は、comecptと映像スタジオSTUDIO4℃による複合プロジェクトで、前者が開発するビデオゲーム版と後者が開発するアニメーション版で、異なるストーリーが描かれる予定となっている。タイトル名を「RE DASH」と読み替えることができる点などから、カプコン在籍時に頓挫した『ロックマンDASH』の精神的続編であるという見方が強い。

ビデオゲーム版にあたる『RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女編』は、80万ドルが集まればエピソード1からエピソード3、100万ドルが集まればPS4版に着手、150万ドルが集まればエピソード4からエピソード5が開発される予定だったが、現時点でその計画がどうなったのかは明らかにされていない。Xbox One版ふくむPS4版の発売が今回発表されていることから、少なくともFUZEから100万ドルの出資は受けていると考えてよいだろう。

なおアニメ版にあたる『Red Ash -Magicicada-』プロジェクトは別途15万ドルのKickstarterキャンペーンを実施しているが、こちらにもFUZEからの出資があったのかは触れられていない。

スポンサーとクラウドファンディング

記事執筆時点で残り4日となるなか、『RED ASH 機鎧城カルカノンの魔女編』はまだ48万ドルしか集めておらず、初期目標額である80万ドルには到達していない。80万ドルを突破するかどうかは厳しいラインだっただけに、今回のFUZEの出資はcomceptにとって”またとない話”だったと言えるだろう。

ただ、一体いつ頃からFUZEとcomceptがコンタクトしていたのかは気になるところだ。およそ9600万円(80万ドル)以上となれば、数日や1~2週間で出資契約をスピード締結したというのはいささか考えづらく、Kickstarterが開始した直後、あるいはそれ以前からすでに出資の話があったのではないかという疑念は残る。一体いつ頃からパートナーシップの話があったのか、また今回の出資によりどれだけのコンテンツを開発することができるのかは、あらためてcomceptがユーザーたちに説明しなければならないだろう。

スポンサーがすでについているうえで、さらにクラウドファンディングで資金を集めるという形式自体は珍しくはない。たとえば五十嵐孝司氏の『Bloodstained』では、すでにパブリッシャーが決定しており、KickstarterではPC/PS4/Xbox One向けディスクの制作予算を集めることが明らかにされていた。また先日発表された『Skullgirls』開発元Lab Zeroの新作『Indivisible』に関しては、505 Gamesとのパブリッシング契約がIndiegogoでのキャンペーン前に事前に発表されており、505 Gamesがプロトタイプ開発に出資していることなどが明かされている。

参考記事: ドラキュラ五十嵐氏の新作アクション『Bloodstained』Kickstarter開始1日目で1億円以上を獲得

一方で今回のFUZEとcomceptの提携は、Kickstarterキャンペーン終了間際に発表されており、集まった資金の使用用途も「開発スタート」から「ゲーム内容の拡充」へと変更されている。そもそも初期目標額への到達が厳しく、プロモーション費用が二重に必要となることは理解できるが、前提となっていたさまざまな目的や条件が崩れていることを考えれば、Kickstarterキャンペーンを再出発か中止させることも視野に入れるべきではないだろうか(ただしユーザー側でPledgeをキャンセルすることはできる)。

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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