「Steam旧正月セール」でオススメしたいタイトル12選、AUTOMATONライター陣が厳選
Valveは太平洋時間の2月12日午前10時まで、「Steam」にて旧正月セールを実施中だ。昨年からSteamのセールはフラッシュやデイリーセールを廃止しており、今回もほぼすべてのゲームが最初から割引対象となっている。
新作のトリプルA級作品をウィンターセールなどで手に入れた、もう定番の作品はライブラリにほとんどあるという読者も多いだろう。このままでは、謎の猿がモンキーシティなる故郷へ到着する前に、我々が良いゲームにたどり着くことができない。そこで今回は、膨大なラインナップの中からなにを買えばいいのか困っている人たちへ向け、AUTOMATONのライターたちが個人的嗜好と主義にのっとって選んだオススメのタイトルをご紹介する。もしかしたらあなたが見逃していた良作、自身の波長と合う作品に出会えるかもしれない。
Stasis
2015年9月にリリースされた『Stasis』は、世にもめずらしい南アフリカ産のホラーアドベンチャーゲームとして発売以前から注目を集めてきたタイトルだ。開発を担当したのはヨハネスブルグに位置するインディーデベロッパー「The Brotherhood」。同スタジオは2013年にKickstarterでクラウドファンディングを実施し、4298人から13万2523ドルもの開発資金の獲得に成功している。
『Stasis』は1998年に発売されたサイコホラーゲーム『Sanitarium』から強い影響を受けているが、”戦闘が無くなりさらに陰鬱になったポイント&クリックアドベンチャー版『Dead Space』”と説明した方がよりわかりやすいだろう。時間停止冬眠(Stasis)から目覚めた主人公の「ジョン・マーチェック」は、自身が搭乗していた資源採掘船「グルームレイク」から人々の姿が消えていることに気づく。プレイヤーはジョンを操作し、娘と妻を探し求めつつ、このグルームレイク船で行われていたらしき非道な人体実験の真相を突き止めなければならない。
とにかくビジュアルやカットシーンの作り込みが素晴らしく、インディーのホラーゲームとしてはここ数年でもっとも完成度の高い丁寧な作り。プレイヤーの心臓を跳ね上がらせるような衝撃シーンこそ少ないが、その重厚感あふれるホラー感、グロテスク描写はトリプルA級タイトルにもひけを取らない。ゲーム中に登場する英文ログを逐次読む必要がある点、派手さ皆無のゲームプレイは人を選ぶが、気になったのなら公開されている無料デモをぜひ触れてみて欲しい。
Flywrench
どこか毒々しいサイケデリック・レトロなグラフィックを描いてきたMark Essen氏が2015年8月にリリースしたタイトル。格闘ゲーム『Nidhogg』の開発者の、と言うとピンと来る人もいるかもしれない。今作はステージクリア型の2Dアクションパズルとなっており、プレイヤーは空中であっちこっちにふらつく自機を上手く操作してゴール地点を目指す。たとえばAボタンを押すと上へ羽ばたいて赤色になるなど、プレイヤーが取ったアクションによって自機の色が変化するという特徴があり、ステージ中の障害物はその障害物の色をまとったまま突破しなければならない。
次々と現れる障害物に合わせて色を変えるスピーディなゲームプレイと、中毒性の高いサウンドトラックが生みだす高い没入感。ゲームの難易度は非常に高く同じステージを何度も挑戦することになるのだが、ほぼ息継ぎなしで再トライできるためゲームプレイのグルーヴから脱することが無い。一見するとチープな2Dアクションに見えるかもしれないが、『Flywrench』はまるで超お気に入りのアルバムかサントラを延々とリピートして聞き続けてしまうような、2Dドットアクション”ドラッグ”な一品である。
Ben and Ed
とあるマラソン大会で銀メダルに輝いた「エド」は、ある日残念なことに心臓発作で死亡し、歩く死者ことゾンビになってしまった。エドは人間の子供「ベン」と出会い、仲良しという名の餌付け関係を結ぶものの、2人は支配人「ハンズ」に捕まり死と隣合わせの危険なゲームショーの出し物にされてしまう。プレイヤーはエドを操作し、トラップ満載のコースを駆け抜けて、ベンが待ち受けるゴールまでたどり着かなければならない。まあ、『Ben and Ed』で小難しい話を覚える必要は無い。馬鹿馬鹿しいストーリーは頭の片隅に残しつつ、ボタン連打しつつステージをセレクトするぐらいの勢いでいい。
初代PlayStationが登場した1990年代のシンプルな3Dアクションゲームのファン、特に『クラッシュ・バンディクー』や『ラチェット・アンド・クランク』が好きなプレイヤーならチェックすべし。ゾンビの不死パワーとUnreal Engine 4のエンジンパワーのお陰もあり、派手に吹っ飛んだり切り裂かれたりするエドの物理演算リアクションは見ているだけで面白い。仕掛けが一通り出終えた中盤から後半にかけてややゲームプレイはダレ始めるが、1000円以下で1人ニヤニヤしながらエドを猟奇的な目で見つめたり、あるいは友人たちのポップコーンを食べながら遊ぶには、最適の作品に仕上がっているといえるだろう。
Kingdom
2015年10月にリリースされた2D横スクロール型のリアルタイムストラテジーゲーム。開発は数年前から進んでおり、2016年のIndependent Games Festivalのデザイン賞など、様々なアワードにノミネートされてきた作品だ。プレイヤーは亡国の王/王女となり、住民たちを引き連れて一度は滅亡した王国を拡張し、夜な夜なやってくるデーモンたちを返り討ちにしなければならない。プレイヤーが出来るのは、馬で移動して集めたコインを落としたり投資したりするだけ。コインを落として住民を仕事に就かせたり、城壁や監視塔などのアップグレードを進めてゆく。美麗なビジュアルとサウンド、極力排除されたUI、恐怖に包まれる夜の世界観などが魅力。
ノロノロと動くお馬鹿なAIに苛立つことはあるものの、とにかく美しいほどにシンプルで熱中できるストラテジーゲームだ。コインをどう集めるのか、集めたコインを何に投資するのかは、ストラテジーゲームのリソース管理の根幹そのもの。ルールがシンプルなので、ユニットの性能表やオーダー表とにらめっこせずすぐに遊ぶことができるし、何日間生き残れるかといったやり込み要素も豊富に用意されている。少なくともセール価格の637円分は遊び尽くすことができるだろう。ストラテジーゲームファンにはもちろん、普段こういった作品に触れたことが無いという人にもオススメしたくなる作品だ。
Pony Island
2016年1月5日に突如リリースされ、一部の海外メディアの話題をかっさらったサスペンスパズルゲーム。プレイヤーは可愛らしいポニーのゲームをプレイするはずが、知らず知らずのうちに”世にも奇妙な事態”へと巻き込まれてゆく……。『The Stanley Parable』のようなゲーム対プレイヤーの視点、さらには『Undertale』のような2Dゲームのバグの恐怖体験を描いた本作において、ネタバレは厳禁だ。もしちょっとでも気になったのなら、昼飯を抜きにした500円を握りしめさっさと買ってしまうのが正解だろう。
参考記事: 『Pony Island』レビュー、かわ縺いポニーを操作すアア楽しモアクシモョ?ー引!あなたを縺ゅ>殺縺・て縺? ・魂撰托抵シ?
7 Days to Die
2013年12月にリリースされ、早期アクセスとしては大ヒットを飛ばしたゾンビ・サバイバルゲームゆえ、何でいまさら『7 Days to Die』をピックアップ?と疑問に思う読者も多いだろう。
実はアップデートAlpha 13から本作は劇的な変化を遂げている。それ以前のバージョンを生き抜いたベテランサバイバーですら戸惑うほどの大胆なUI改善、スキルシステムの導入、新種ゾンビの登場、トイレからの水汲み不可、さらにバイオームごとの気温と天気の概念など挙げればキリがないほどの大胆なアップデートだ。
従来のバグ技を利用した“ほぼ無敵の拠点”も修正で対応されており、全体的にプレイヤーに対して厳しくなった感はあるが、その分クラフトに必要な資源バランスは優しくなり遊びやすくなった部分も多い。すでにさんざんやりつくして「飽きちゃった」というプレイヤーでも、新鮮な気持ちでプレイできることは間違いない。50%オフというこのチャンスにぜひ、未プレイの友人を誘って1日でも長生きしていただきたい。
Rising World
『Minecraft』は大好きだけどリアル系グラフィックの世界が欲しい。『7 Days to Die』のクラフト要素も愛してるけど、怖いゾンビや荒廃した街並みは望まない。日の出とともに畑を耕し、美しい理想のマイホーム造りに精を出し、日没とともに眠りにつく穏やかな日々をゲーム内で過ごしたい……そんなクラフターの夢を叶えてくれるのが『Rising World』だ。
土・木・鉱石のシンプルな素材からカラフルな建築ブロック、モダンなキッチンやお風呂も簡単に作成でき、素材集めにばかり時間を取られることもない。野生動物の肉をBBQグリルで焼いて食べ、家庭菜園のトマトでおなかを満たす日々。熊とトラ以外に危険な生物はいないため戦闘要素はほぼ皆無で気持ちはすっかり世捨て人。俗世のしがらみもストレスも忘れ、心ゆくまでクラフトに打ち込めるのがたまらない。
雪原・砂漠バイオームと新たな野生動物、生産アイテムも少しずつ増えており、昨年にはついに待望のマルチプレイも実装。「戦闘が嫌いなわけじゃない、でも美しい景色の中で生活したいんだ!」そんな悩みを抱えてきた人には、ぜひこの機会に筆者イチオシの『Rising World』に触れてほしい。
Galak-Z
ガラクズィー、ギャラクズィー、ギャラクシー――『Galak-Z』は宇宙を舞台とするシューティングゲームだ。どうして「難しい」タグがついていないのか不思議になるほど、本作の難度は高い。戦闘シーンの見事な板野サーカスは「マクロス」のエッセンスをうまく取り込んでおり、キャラクターのビジュアルからは「マジンガーZ」を想起せずにいられない。開発元の17-Bitは京都にも拠点を構えており、過去作『Skulls of the Shogun』と同様に、本作も日本愛にあふれている。しかし残念なことに日本語には対応していない。
ゲームは最序盤からキツめであるが難度の上昇具合は美しいカーブを描いており、「もう無理だ」と「もしかしたらいけるかも」を交互に感じさせてくれ、トライアル&エラーの醍醐味をたっぷり味わえる。トレイラーでは伝わりにくい本作『Galak-Z』が高難度である理由のひとつは、独特の操作感だろう。宇宙船を操縦するわけだから当然舞台は宇宙であり、その空間は無重力で空気抵抗もない。噴射で加速したら、止まるときには逆噴射しなければならない。ぴたりと停止することはできず、その場から動きたくない場合は噴射と逆噴射を同時におこなう。的確にきびきびとした動きができないため、敵の攻撃が見えていてもそう簡単には避けられない。そして、こちらの攻撃をあてることも難しい。また敵は優れたAIで制御されており、プレイヤーを確実に迎撃しようと向かってくる。
自動生成される宇宙区間には特定の攻略法というものが通用しないが、『Rogue Legacy』や『Spelunky』のようにプレイヤーの腕前の成長がゲームプレイに直結するので、そこにやりがいを感じられる方であれば『Galak-Z』はお気に入りの作品になるだろう。
Sproggiwood
見た目のかわいらしさとは裏腹に、『Sproggiwood』は非常に歯ごたえのあるローグライクである。開発を手がけたFreehold Gamesは現在、より初期のころのローグライクを意識した『Caves of Qud』を制作している。そちらもなかなか楽しいのだが、とっつきやすさという点で『Sproggiwood』をおすすめする。
プレイヤーは農夫や戦士といったクラスのなかからキャラクターを選択し、数々のダンジョンに挑戦していくことになる。クラスはそれぞれ攻撃手段やスキルがまったく違うので、どれを選ぶかによって戦術もがらりと変わる。たとえ農夫で行き詰まったとしても、戦士で挑めば容易にクリアできることもある。モンスターもやっかいな特徴を持つものが多く、なかでも一見すると弱そうなゼリーには注意を払ったほうがいいだろう。
ダンジョン内で入手できるアイテムは、武器・防具・アクセサリ・消耗品の四つのカテゴリに分かれている。手に入れたアイテムはダンジョンをクリアする、もしくは途中で死んでしまうとリセットされる。しかしショップに商品として並ぶようになるので、お金を使って購入することができ、永遠に消えることはない。ダンジョンは毎回自動生成されターンベースで進行していくが、「死はすべてを奪う」というシステムではないので、ローグライクというよりも、最近よく耳にするローグライトというほうがしっくりくる。
ローグライクは好きだけどASCIIはちょっと……という方は、『Sproggiwood』の購入を検討してみてはいかがだろうか。
Stronghold HD
『Stronghold HD』は、中世ヨーロッパを想定した世界観を持つ、いわゆる戦争ゲームである。特徴はなんといっても内政にフォーカスしている点だろう。城を建設し、その周囲を強固な防壁で囲み、塔を建てて弓兵を配備するといった一連の流れは、2001年に発売された作品であるにもかかわらずいま遊んでも楽しい。とくに木の伐採と加工や野生動物を弓でしとめて精肉するといったアニメーションの表現力は高く、動きを見ているとついつい牧歌的な街づくりゲームと勘違いしてしまうほど。
難度は高めで、序盤からスピーディな内政が求められる。狼の群れはあっというまに村人を食いちぎってしまうし、たとえ防壁を建てて守りを固めたとしても敵の矢は壁を越えて飛んでくる。この手のゲームに不慣れな方は挫折してしまうかもしれない。しかし公式で日本語に対応しており、ミッション開始前には目的の詳細や建物の説明などが表示されるので、学ぶことをサボらなければ問題ないはずだ。
低価格で世界観を大切にしたリアルタイムストラテジーを探しているのであれば『Stronghold HD』をおすすめする。同時に『Stronghold Crusader HD』もセール対象になっているので、ふたつあわせて394円という低価格で名作RTSを同時購入するのもいいだろう。これからSteamという名の底なし沼に足を突っ込もうとしているあなたにうってつけの作品だ。
Road Redemption
わたしは子供のころ、レースゲームというものをどうしても好きになれなかった。車酔いしやすい体質というのもあるのだが、真面目に競争するということに楽しさを感じなかったのだ。しかし友人たちとゲームセンターに行くと、嫌でも一度はレースゲームにコインを投じなければならない。そんなときは、いつもほかの車両に体当たりをして、勝つことよりも妨害することに悦びを感じていた。大人になったいま、子供のころに求めていたゲームにめぐり合えた。それが『Road Redemption』だ。
『Road Redemption』はレースゲームでありながら、ライバルたちを蹴落とす仕組みに重点が置かれている。レース開始前にどの武器を持っていくか選べる時点で普通ではない。切れ味のするどいマチェーテか、それとも離れた敵を仕留めるAK-47か、そのときの気分によって装備を変更できる。もちろん誰よりも早くゴールすることが目的なのだが、こんな世界観で真面目に走るほうが難しい。『Carmageddon』を交通ルールを厳守して走れと言っても無理だろう?それと同じだ。追い越される前に殺る。これが本作の鉄則である。
「親父にも釘バットでぶたれたことないのに」という平穏な人生を歩んできたあなた、日ごろのストレスを本作にぶつけてみてはいかがだろうか。来るオンラインマルチ対応の日まで、今から腕を磨いておくことをおすすめする。『Road Rash』以上のカオスなレースを求めているなら迷うことはない。
Distance
『Distance』を一言で表現するならば「ヤバイ」である。最初にトレイラーを見たとき、「EDMを聞きながらSteamライブラリでほこりをかぶったレースゲームを楽しむだけ」で同じ体験ができるのではないかという疑問を感じた。もしかすると前世は蛾だったのかもしれないと思うほどネオンカラーが好きなわたしでも、派手なビジュアルと低音のきいたBGMを合体させただけの、どこにでもありそうなゲームだろうと踏んでいた。しかし本作が『Nitronic Rush』の精神的後継作であることを説明文から知ると、その先入観はどこかに消え去った。
コースの種類はそう多くないがどれも未来的で、重力に喧嘩を売りながら走るねじれたコースや、車体を切断するレーザービームが張りめぐらされたコースなどさまざま。ときには宙を飛び、ときには『VVVVVV』のように重力を反転させ、色気のあるネオンの光のなかを疾走する。ただのレースゲームかと思いきや、まるでジャンプアクションを遊んでいるような気分にもなれる。個人的にはグリッチ演出のあるステージがお気に入りで、ほかの同ジャンル作品では味わえない興奮がここにある。
プレイヤー数の少なさからか、オンラインでの競争は滅多に実現できないのが残念。もしもBGMが気に入らないのであれば、オプションから自身が所持する音楽ファイルを読み込ませるといいだろう。本作『Distance』は現在アーリーアクセス中であり、正式リリースは2016年Q1~Q2を予定しているという。レベルエディタはSteam Workshopに対応しているので、今後もこのままコミュニティが活性しつづければ、息の長いタイトルになる可能性を秘めている。