“生成AIひっそり使用疑惑”で即開発中止ゲーム『POSTAL: Bullet Paradise』開発元、いちど疑惑を否定するも結局認める。スタジオも閉鎖へ
発表からわずか2日で開発中止となった『POSTAL: Bullet Paradise』について、開発元Goonswarm Gamesが声明を投じている。

パブリッシャーのRunning With Scissorsは12月3日に、Goonswarm Gamesが開発を手がけていた『POSTAL: Bullet Paradise』を発表。そのわずか2日後に同作の開発中止を発表した。Running With ScissorsはGoonswarm Gamesが開発に生成AIを多用しているというコミュニティの疑惑が中止の背景にあると伝えていた。
その後Goonswarm Games側が内部調査の結果、外部委託したプロモーションアートに生成AIが用いられていた可能性があると報告。また開発中止に伴って、同スタジオが閉鎖となることを伝えている。
『POSTAL: Bullet Paradise』は『POSTAL』シリーズのスピンオフとして発表されていたFPSだ。3Dマップを舞台とするFPSでありつつ、敵の大群を相手にしたり3択のアップグレードから強化を選び取っていったりと、『Vampire Survivors』の影響もうかがえる作品となっていた。

なお『POSTAL』の本家シリーズといえば主にRunning With Scissorsが開発・販売してきた。ただ『POSTAL: Bullet Paradise』については、開発をGoonswarm Gamesが担当。独自ツールを用いたクロスプラットフォーム開発を強みとして掲げているスタジオであり、過去作としてRPGローグライク『Sin Slayers: Reign of The 8th』などを手がけていた。
しかしそんな『POSTAL: Bullet Paradise』の発表後には、Redditなどの『POSTAL』シリーズのファンコミュニティにてある疑惑が浮上。タイトルロゴなどの違和感が示され、生成AIが多用されているのではないかという指摘が寄せられることに。本作のSteamストアページには、規約上記載が求められる生成AIを利用していることを示す注意書きがなく、この点にも批判が集まることとなった。
そうした声はRunning With Scissorsにも寄せられていたそうで、同社は12月5日に声明を発表し、コミュニティの声を尊重して『POSTAL: Bullet Paradise』の開発を中止すると発表。Goonswarm Gamesへの信頼を失ったとも綴られていた(関連記事)。
一方で12月6日未明にGoonswarm Gamesも声明を投じ、6年間手がけてきた『POSTAL: Bullet Paradise』が発表後わずか数日で中止になったと報告した。また同スタジオは、生成AIをアートに使用しているという誤った批判を受けたと主張。そうした意見に対して釈明しようとする試みはすべて、かえって状況を悪化させるだけであったとしている。多数の脅迫、侮辱などが集まっており、苦渋の決断としてスタジオ閉鎖を決断することになったと報告した。
しかし12月7日になって、Goonswarm Gamesは再び声明を投稿。内部調査をおこなった結果、プロモーションアートに生成AIによる素材を含んでいる可能性があることを確認したという。声明によれば同スタジオはこれまで何年にもわたって外部のアーティストと共同で制作をおこなっており、これまでそのような兆候は見受けられなかったとのこと。レイヤー化されたpsdファイルにて内部の開発パイプライン上で確認する限りは、生成AIが用いられている可能性を見抜けなかったそうだ。
そのため当初は開発チームを守るため、上述した投稿のようにスタジオの潔白を主張していたとしている。いずれにせよ、生成AIが用いられていることを発見できなかった管理責任を負う点を認識しているという。
なおあくまで生成AIが用いられている疑いがあるのはプロモーションアートのみであり、ゲームプレイにおけるグラフィックやアセット、そのほかの要素に携わったアーティストとは一切関係がないとのこと。無関係なアーティストも脅迫や嫌がらせを受けているそうで、今回の声明がそうした状況を止めることを願っていると伝えられた。
このほかGoonswarm Gamesについては告知されたとおり閉鎖される見込み。残されたリソースが許す限り、過去のすべてのプロジェクトに向けて、問題視されているプロモーションアートを完全に人の手で制作されたアートに置き換えていくとしている。たとえば先述したGoonswarm Gamesの過去作『Sin Slayers: Reign of The 8th』のプロモーションアートにおいても、剣を握るキャラクターの指が4本しかないといった違和感の目立つ部分はあり、そうしたアートについても差し替えられていくのだろう。

商用作品における生成AIの利用においては、特に学習データとなったコンテンツの権利を巡る懸念がつきものになっており、各国で法整備の只中にある。Steamでは現状のAI生成コンテンツに関する暫定的なルールとして、ストアページの「AI生成コンテンツの開示」セクションにて開発者側が自ら説明をおこなう仕組みとなっている。
今回の『POSTAL: Bullet Paradise』については先述したとおりSteamストアページ上に生成AIが利用されているという記載がなかったことも、大きな批判を招いた一因とみられる。Goonswarm Gamesは外部委託したアートに生成AIが用いられていた可能性を原因として伝えているものの、いずれにせよもし生成AIが利用されていたのであればSteamストアページのルールにも反していたといえる。生成AIサービスが多様に広まる中で、Steamでの出品にあたっては外部委託したコンテンツの精査も求められる状況となっているのだろう。
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