『ポケモンレジェンズ Z-A』に“ホームレス対策のベンチがある”と冗談っぽく騒がれる。「ゲーム内NPC無職率調査」研究の進みすぎか、暴走する謎推理

先日公開された「Pokémon Presents」にて、『Pokémon LEGENDS Z-A(ポケモンレジェンズ Z-A)』(以下、Z-A)の新映像がお披露目された。ゲーム映像の中に映っている「ベンチ」が、寝そべることのできない“排除アート”のようなデザインになっているのではないかと、海外で話題となっている。また話題となった背景には、「ゲーム内失業率」を算出する海外ネットミームの影響もありそうだ。
本作は『ポケットモンスター』シリーズの最新作だ。舞台となるのは、『ポケットモンスターX・Y』に登場したミアレシティ。『Z-A』におけるミアレシティでは、都市の再開発が進められているという。本作はアクションRPG形式など、さまざまな新要素が盛り込まれた『Pokémon LEGENDS アルセウス』の流れをくむ作品だ。開発を手がけるのはゲームフリーク。
今回話題となったのは、上記の新映像の1分50秒あたりに映っている「ベンチ」だ。これはポケモンセンターらしき場所の入口左側に設置してあり、一見すると普通のベンチだ。しかしその中心付近には、低い肘掛けが2つ固定されている。海外掲示板Redditのとあるスレッドでは、この肘掛け付きのベンチが“排除アート”なのではないかという推測がされている。
「排除アート」とは、公共スペースや建造物が損壊されたり、あらかじめ想定された用途以外で使われたりしないよう、手が加えられた造形物の通称だ。排除アート扱いされる基準や、明確な設置ルールなどは存在しないものの、主に施設管理者によって犯罪抑止やマナー違反防止の目的で設置されているとみられる。一方で、寝そべりや野宿ができないことを意図した構造のため、ホームレスなど社会的な弱者を排除することに繋がるという指摘もみられ、しばしば議論の的となっている。上記の映像でポケモンセンターの入口隣に設置されていたベンチのように、中ごろに肘掛けが付けられたデザインのベンチもまた、「排除アート」としてみなされることがある。

先述したRedditのスレッドでは、肘掛けの位置や高さにより、このベンチが寝そべることができない形状のように見えることから、「排除アート」として設計されたものなのではないかという推測が立ったという恰好だ。コメント欄には「ポケモンは寝れそう」「カビゴンは無理そう」といった声や、中には「これはミアレシティの再開発に関連したストーリーの一部だ」と憶測するコメントもあり、話題となっている。
とはいえ、もちろんこのベンチが「排除アート」という意図でデザインされたわけではない可能性もあるだろう。ミアレシティはフランス・パリをモチーフにしているとみられ、シンプルに現実のパリの景観が参考にされた結果、肘掛け付きのベンチがゲーム内に盛り込まれたと考えるのが自然かもしれない。対して、海外ユーザーから妙に現実的な目線でベンチに注目が集まった背景には、海外における「ゲーム内失業率」を算出するネットミームの存在が影響しているかもしれない。

「ゲーム内失業率」を考えるネットミームの火付け役のひとりとみられるのは、YouTuberのAny Austin氏だ。同氏はゲーム内の川がどこに通じているかや、電線の行き先など、ゲームのさまざまな事象を妙に現実的に追及する調査をおこなうYouTuberだ。
同氏は「ゲーム内の街の失業率」も計算しており、ゲーム内のNPCの外見や行動により「雇用中(Emproyed)」か「失業中(Unemproyed)」かを判断。たとえば『The Elder Scrolls V: Skyrim』(以下、スカイリム)であれば、番兵のほか、お店を営むNPC、本業として釣りをしていそうなNPCなどは雇用中とみなしつつ、何もせず壁を見つめているだけのNPCは失業中扱いするといった具合だ。やや強引な見立ても交えつつ、さまざまなゲーム内の街における「失業率」を推測する動画が人気を博している。
Any Austin氏は『スカイリム』に限らずさまざまな街の失業率を調べてきた。その中には、『ポケットモンスター』シリーズに登場する街の調査もある。同氏によれば「マサラタウン」は失業率25%、「クチバシティ」は失業率17.4%だ。一方で『スカイリム』におけるホワイトランの失業率は9.4%だそうなので、少なくとも同氏は『ポケモン』世界の失業率は他作品の調査と比べると比較的高い傾向にあるとの考えのようだ。ただ両作ともに、すべてのNPCに職業の有無までは厳密に想定されていないかもしれず、同氏の考える失業率が正確かどうかも不明。とはいえ両作間で“働いていることが明白なNPC”の割合には差があるようで、世界観や作風の違いが表れている要素としては興味深い分析かもしれない。
いずれにせよ、Any Austin氏の動画などを発端とするネットミームは、ゲーム内世界の雇用状況などを現実の尺度で見る風潮に繋がっている可能性はありそうだ。今回『Z-A』の新映像に一瞬しか登場しなかった肘掛け付きベンチが妙に取り沙汰されたのも、そういった背景があるかもしれない。ただ一部ユーザーが深読みしている傍らで、『Z-A』の肘掛け付きベンチはあくまでパリで見られる景観として取り入れられたとも考えられ、「排除アート」といった社会問題は意図されていない可能性はあるだろう。そうした点も含めて、ミアレシティの再開発を巡る物語がどのように描かれるのかは注目される。。
『Pokémon LEGENDS Z-A』は、Nintendo Switch向けに2025年秋に発売予定。