「ポケモン」などのリークに対処していた弁護士が対策例を明かす。「リーク犯少年のお母さんを説得」など特殊事例も

 
『Pokémon TCG Online』

株式会社ポケモン海外法人や『Destiny 2』などで知られるBungieにて法務に携わっていた弁護士が、ゲームにおける「リーク対策」について明かし、話題となっている。「リーク画像から犯人を割り出す」「リーク犯の母親に電話する」など、ユニークな経験が語られている。

今回リーク対策について語ったのは、弁護士のDon McGowan氏だ。同氏は2020年から昨年まで、Bungieにて顧問弁護士を務めていた人物。その前には、株式会社ポケモンの海外法人The Pokémon Company International(以下、TPCi)にて、10年以上にわたって最高法務責任者(Chief Legal Officer)といった要職についていた。さらにはMicrosoftおよびXbox Game Studios Publishingでも弁護士として法務にあたっていた、経験豊富な人物である。

『Destiny 2』


そんなMcGowan氏が「ゲームのリーク対策」について語ったインタビューが7月13日、Bloombergにて掲載された。そちらでは、同氏の業務経験のなかで対処したさまざまなリークの顛末や対処方法について語られている。たとえば、Bungieのリブート版『Marathon』のリークが発生した際にも、McGowan氏が駆り出され、犯人の特定にあたったそうだ。このケースでは、犯人はBungie社内の人間だったという。

McGowan氏によれば、Bungieは社内において情報閲覧の自由度が高く、スタッフであれば誰でも内部情報を閲覧しやすい環境とのこと。『Marathon』のリークの場合においては「元ファンの社員が、自慢のためにクラン内で『Marathon』の情報をリークし、それが拡散した」との顛末だったそうだ。McGowan氏は、この社員が犯人であることをSNSやメールアドレスなどに利用されるIDの追跡により割り出したという。同氏はこういった内部リーク犯を“未来の元社員”と表現しており、厳正な処罰が下されることがうかがえる。

『Marathon』



「ポケモン」ではリーク犯の「お母さん」に電話

また、 TPCiに在籍していた時には、「ポケモン」のカードゲームにまつわるリークに対処したという。これは、海外向けに展開されている「ポケモンカードゲーム」のデジタル版『Pokémon TCG Online』(現在は『Pokémon Trading Card Game Live』)のことだろう。

同作において、ある子どものプレイヤーが、ゲーム内から画像を抜き出す方法を発見してしまったという。このプレイヤーはその中の未公開情報を、「新しいポケモンを発見した」などとして拡散したそうだ。しかし、あっさりとゲーム登録情報から特定。電話番号まですぐさま判明したようである。

『Pokémon Trading Card Game Live』


McGowan氏は番号に自ら電話し、リーク犯である子どもの母親と話すことになったという。同氏が「あなたの息子さんがゲームをハッキングしています」と告げた後、電話の向こうからは「ぼくなにもハッキングしてないよ!」と聞こえたそうだ。McGowan氏は説明しても事態を飲み込めない母親に向けて「ハッキングは連邦犯罪である」といった旨をはっきり告げて、子どもの処遇について相談したという。

そして当の子どもは、その状況をSNS上で実況していたそうだ。「ポケモンが家に電話してきた」「コモンベンゴシってなに?」「悪いことをしたのがわかった、もうしない」といった内容が刻々と投稿されていたとのこと。



「デスクトップのアイコン」で犯人特定

McGowan氏は、Bungieにて動画配信者によるリーク行為にも対処したという。当時Bungieは、動画配信者などを募り、作品の未公開情報などをストリーミングで伝えるイベントを実施していたという。しかし、このストリーミング映像をスマートフォンで撮影した画像が、リーク情報としてネットに出回っていたという。

『Destiny 2』


McGowan氏の捜査線上に12人の動画配信者が“容疑者”として浮上するなか、犯人特定の決め手となったのが「デスクトップ下部のアイコンの配列」だったという。リーク画像に写り込んだアイコン配列と、とある容疑者のうちひとりが配信で放送したアイコン配列がぴたりと一致したそうだ。犯人は「ルームメイトが写真を撮っただけ」と弁明したものの、画角的にルームメイトが密着しないと撮れない写真だったことから、嘘と判断されたようである。

なお、Bloombergの記事ではリーカーがどの人物かは伏せられている。しかし、動画配信者のEkuegan氏が「記事に書かれているリーク犯は自分だ」とX上で自ら主張している。同氏によれば「PC上で録画していたストリーミング映像を、ハッカーに盗まれただけで自分は何もしていない」とのこと。McGowan氏は、リーク犯は「画面をカメラで撮った」としており、やや食い違っている。

ちなみにBungieは、Ekuegan氏と思われるリーカーについて「確固たる証拠がある」と表明し、『Destiny 2』におけるBAN処分を下している(PC Gamer)。McGowan氏による今回の談話からは、実際にリークに対処する人々の業務内容が垣間見えるとともに、リーク行為の虚しさも伝わってくるようだ。