『Phantom Blade Zero』開発元が「『黒神話:悟空』成功のおかげで多額の資金調達に成功した」と現地記者が伝える。中国ゲーム業界に“黒神話ビッグウェーブ”到来か
PS5/PC向けアクションゲーム『Phantom Blade Zero』を開発するデベロッパーのS-GAMEが、多額の追加出資を受け取ったとの情報が関係者より寄せられているという。この追加出資には、別スタジオGame Scienceのタイトル『黒神話:悟空』の成功が関わっているとのこと。
『Phantom Blade Zero』は、中国拳法やオカルト、スチームパンクなどの要素をもつカンフーパンク・アクションゲームだ。エリートアサシンである主人公は、所属する組織の家長が殺され、その犯人に仕立て上げられる。彼は真犯人捜索の過程で重傷を負い、一命を取り留めたものの、治療の効果は66日経つと失われてしまうため、時間切れになる前に事件の黒幕全員を探し出すことを目指す。
『Phantom Blade Zero』を手がけるS-GAMEは中国に拠点を置くインディースタジオ。同スタジオは2023年5月にPS5/PC向けとして『Phantom Blade Zero』を発表。複数のゲームイベントに出展するなどして注目を集めていた。なお本稿執筆時点では、発売日は未定となっている。
そんなS-GAMEが追加の資金を獲得したとの情報が、深セン在住で中国の業界を専門とするゲームコンサルタント兼ゲームメディアライターのDaniel Camilo氏によって伝えられている。Camilo氏がS-GAMEのゲーム開発に携わる2人の関係者証言として伝えるところによると、同スタジオへの多額の出資は『黒神話:悟空』成功の影響もあるのだという。
『黒神話:悟空』は、S-GAMEと同じく中国に拠点を置くデベロッパー、Game Scienceが手がけるタイトルだ。同作は2024年8月20日、PC/PS5向けにリリースされると爆発的な人気を博し、発売後3日で1000万本の売上を達成。さらにSteamアワード2024などで各アワードを受賞するなど、大きな注目を集めるタイトルとなっている(関連記事1、関連記事2)。
ちなみにSteamユーザーレビューの約9割が漢字(簡体字)であるほか(SteamScout)、初動売上の多くを中国ユーザーが占めていたことも伝えられており、特に中国で絶大な人気を誇っていることがうかがえる(関連記事)。
Camilo氏によると中国では『黒神話:悟空』が発売前から大々的にい宣伝され、高い売上指標が見込まれていたという。そうした状況もあってか、S-GAMEにもさっそく追加投資が舞い込んでいたそうだ。そして『黒神話:悟空』発売後の大成功を受けて、中国発のAAA級ゲーム開発という“新たな波”に乗ろうと、(S-GAMEに)非常に多くの投資家が殺到。S-GAMEは一部の投資を断る必要さえ生じたとのこと。
なおCamilo氏によると『Phantom Blade Zero』は、『黒神話:悟空』がリリースされた時点でかなり開発が進んでいたそうで、“黒神話効果”だけがすべての融資がおこなわれたわけではないとのこと。『Phantom Blade Zero』もかねてより注目されていたタイトルであり、『黒神話:悟空』発売後にはあくまで「追加」の融資が殺到したということだろう。
とはいえ、『黒神話:悟空』の成功で、大型タイトルを開発する中国国内ゲームスタジオに対する投資家たちの注目度が急上昇しているという現象は興味深い。『黒神話:悟空』が先駆けとなった「中国発AAA級タイトル」の波が、『Phantom Blade Zero』以降もさらに続いていくかどうかも注目されるところだろう。