Blizzard Entertainmentは7月25日、『オーバーウォッチ2』公式サイトにて開発者ブログ「ディレクターの視点」の新たな記事を公開。このなかではコミュニティで白熱する“5v5対6v6の議論”について、本作のディレクターAaron Keller氏の見解が語られている。
本作は、基本プレイ無料の対戦FPSだ。人気を博した『オーバーウォッチ』の続編として、2022年10月にリリースされた。タンク・サポート・ダメージの3つのロール分けがなされたチーム対戦が繰り広げられる点が特徴。前作からの大きな変更として、メインとなる対人戦モードにて前作では6人チーム同士の対戦、つまり6v6であったところが、5人チーム同士の5v5に変更。タンク1:サポート2:ダメージ2が基本の構成となった。人数の変化によりバランス周りにも大幅な調整が実施されている。
6v6の問題点
今回のディレクターの視点では、Aaron氏により『オーバーウォッチ2』にて5v5となった経緯が説明されている。まず同氏は、前作『オーバーウォッチ』から数えて、チーム構成に関わる大きな変更がこれまで3回あったと紹介。1回目におこなわれたのはヒーローの重複を制限するという変更であった。それ以前はチーム内で同じヒーローを重複して使えたため、たとえば前作で初期におこなわれたトーナメント大会では「1人のウィンストンと5人のゼニヤッタ」からなるチームがトップに君臨していたという。
一方でそうした環境では、それぞれのヒーローのアビリティの重複を念頭に置く必要があり、バランス調整を困難にしていたそうだ。このためチーム内でヒーローを重複して選択できなくするヒーロー制限が導入。またその後は2回目の変更として「ロールキュー」が導入。ロール間の人気が極端に異なる状況があり、特にダメージの人気ぶりからチーム内にダメージが5~6人いるという状況が発生していたためだという。ロールキューの導入により、前作ではタンク2:サポート2:ダメージ2が基本構成となっていた。
しかしロールキューの導入により、待ち時間が大幅に増えるという新たな問題が発生。サポートとダメージのプレイヤー数は十分にいても、不人気なタンクのプレイヤーが揃うまでマッチすることができないといった事態を招いていた。
そのため『オーバーウォッチ2』では、この待ち時間問題の解消を主な目的として5v5にチーム人数が変更。また6v6での対戦が抱えていたプレイヤーにストレスを生じさせやすいバランスもチーム人数の変更に繋がったという。たとえば「タンクが2体いる」ことで、アルティメット・アビリティの発動まで戦況がこう着したりする問題もあったとのこと。
『オーバーウォッチ2』での改善と今後
では5v5へのチーム人数変更でそうした問題を解消できたのか。Aaron氏はまず、待ち時間についてロールキュー導入後の前作と今作の各ロールの平均待ち時間を比較するグラフを提示。すべてのロールで待ち時間が減少しており、特にダメージは7.6分から2.9分に大幅に減少している。同氏は考えられる理由として、チームに必要となるタンクの数が2人から1人に減少したことがすべて、といっても過言ではないと説明。同氏によればタンクの人口はほかのロールと比べて少ないため、もし6v6に戻した場合、待ち時間の長さは前作に逆戻りするだろうとしている。
一方でAaron氏は前作の6v6の対戦における良い面についても言及。総勢12人のプレイヤーが生み出す混乱と白熱の対戦模様は、6v6の持ち味であったとしている。また影響力のあるタンクロールのプレイヤーがひとり多い分、苦戦しているプレイヤーをカバーできる余地もあり、個々のプレイヤーにかかるプレッシャーも比較的小さかったそうだ。タンク同士のシナジーも、複雑ながら奥が深い連携を生み出していたとのこと。
そうした魅力もあってか、コミュニティでも6v6を復活させるべきか否かといった議論が生じている状況もある。『オーバーウォッチ2』以降開発チームは5v5のゲームプレイに集中して取り組んできたものの、Aaron氏は今回、フィードバックに基づいてさまざまな可能性を探りながら変更していく方針をとると表明。まずは試験的に6v6で対戦できるイベントを実施する計画だそうだ。
ただ合計12人のプレイヤーでの対戦を復活させるにあたってパフォーマンス面の課題はあるそうで、実施までには時間を要するとのこと。期間限定のイベントであれば比較的すぐ実装できる可能性もあるものの、恒久的にゲーム全体のパフォーマンスを向上させるには数シーズンをかける大規模な取り組みになるとしている。また先述のとおり6v6導入にあたってはマッチ待ち時間の問題もあり、解決するアイデアはあるものの、上手くいく保証はないとのこと。また今作から新規プレイヤーは5v5のルールに親しんでいることもあり、幅広く配慮しながら検討を進めていくそうだ。
このほかAaron氏は、たとえば『オーバーウォッチ2』にて「5v5になったせいでどのマッチ展開も代わり映えしなくなった」といった不満が寄せられていると言及。一方で同氏は6v6復活とは別のアプローチとして、“ロールキューの見直し”をテストを通して模索していくと明かした。「チーム構成を固定してしまう今のルールほど厳しくなく、かといってオープンキューほど緩くもないチーム編成方法」を目指すという。これが実現すれば戦略の自由度をもたらし、ある程度マッチの多様性を取り戻せると考えているとのこと。ロールキューの見直しに関するテストについては、シーズン13の間に最低でも1回、「クイック・プレイ:HACKED」のイベントとしておこなわれる予定だそうだ。
とはいえ6v6にせよロールキューの見直しにせよ、あらゆるアイデアにある程度のデメリットが想定されているという。プレイヤーにはそうした点も踏まえて、今後のテストを見守ってほしいそうだ。
チーム編成を巡ってさまざまな大規模変更が検討されているという『オーバーウォッチ2』。Aaron氏は新規プレイヤーも含めたコミュニティ全体がメリットを享受できるように、変更の導入については慎重に検討していくと伝えている。フィードバックを反映しながら、プレイヤーと共に理想のゲームを目指していくとのことだ。
なお同氏によればディレクターの視点では今後も5v5と6v6に関する話題を取り上げていくとのこと。6v6もロールキューの見直しも、まずは期間限定イベントを通して試験的に実装される見込みであり、続報が注目されるところだろう。
『オーバーウォッチ2』はPC(Battle.net/Steam)/PS4/PS5/Nintendo Switch/Xbox One/Xbox Series X|S向けに基本プレイ無料で配信中。