Blizzard Entertainment(以下、Blizzard)は12日、チーム対戦型FPS『Overwatch』(オーバーウォッチ)の新キャラクター「Ana」を発表した。かねてよりSNSやフォーラムサイトで噂されていたとおりのサポートスナイパーで、Blizzardが同日解禁したパブリックテスト環境(以下、PTR=Public Test Region)にて、すでにプレイできる。また、PTRでは、「D.Va」をはじめ多くのキャラクターに大幅な調整が施され、アルティメットゲージやランクマッチの仕様変更も含めて、全体的なゲームバランスが見直されている。次回パッチで適用される予定の主な変更点を、PTRへの参加方法とあわせて紹介する。
死んだはずの“お母さん”が前線復帰
『Overwatch』は、6人ずつのチームに分かれて計12人でオンライン対戦が楽しめる一人称視点のMOBA系アクション・シューティング。BlizzardがWindows/PlayStation 4/Xbox One向けにリリースした十数年ぶりの完全新規タイトルである。未来の地球を舞台に、多種多様な武器や装備、特殊能力を操るヒーローが登場するのが特徴で、キャラクターによって得意分野や役割分担が大きく異なる。ローンチ後初となる新キャラクターに関しては、ゲームマップに散りばめられた複数のヒントから、これまでフォーラムサイトを中心に幾度となく「Sombra」という人物の存在が囁かれていた。今月7日、Twitterの公式アカウントが「Biotic Rifle」なる武器資料を公開。すでに以前から浮上していたサポートスナイパー説が、いよいよ現実味を帯びてきていた。
「Ana Amari」は、エジプト・カイロを拠点に活動する60歳の女性バウンティハンター。特殊なダーツを撃ち出すプライマリウェポン「Biotic Rifle」と、敵を眠らせるサイドアーム「Sleep Dart」で戦うサポートヒーローだ。彼女のスナイパーライフルは、味方を回復するダーツと敵に継続ダメージを与えるダーツの2種類が撃ち分けられる。また、専用ガジェット「Biotic Grenade」は、範囲内の敵にダメージを与えると同時に、味方は回復してくれる。影響下にある味方に対して一定時間全ての回復効果を増幅させると共に、敵に対しては逆に全ての回復効果を無効化する。アルティメットアビリティは「Nano Boost」。味方単体の移動速度と攻撃力を一時的に増幅させ、同時に敵からのダメージも軽減できるという優れものだ。
可憐な老兵「Ana」。その正体はオーバーウォッチ創設メンバーの一人。かつては世界一とまで謳われた凄腕のスナイパーで、司令官の右腕として組織に貢献した人物だ。50代を過ぎても自ら最前線で活躍していたが、ある人質救出ミッションの最中にタロン社のエージェント「ウィドウメイカー」と対峙。狙撃対決に敗れ、死亡したと思われていた。しかし、実際はスコープ越しに右目を撃ち抜かれたにも関わらず、一命を取り留めていた。回復後、人生の大半を戦場で過ごしてきた過去と決別し、世界の紛争から自身を遠ざける道を選択。穏やかな日々を送っていた。そんな中、罪もない人々が脅威にさらされている現実から目を背けることができず、再び銃を手に立ち上がった。なお、Blizzardが同日に公開したストーリー動画の中で、彼女こそが「Jack Morrison」 (後のソルジャー76)と「Gabriel Reyes」(後のリーパー)と共に過去の内乱で死んだはずの、「ファラ」の母親であることが明かされている。その顔立ちやコスチュームは、母親に憧れて戦士になった「ファラ」そっくりである。
実は、この動画には何らかのヒントと思われる暗号が隠されているという。Redditに寄せられた情報によると、2分11秒から2分12秒の間の1フレーム(60分の1秒)に16進数で構成された数列が映し出されているとのこと。これを文字に変換すると、“La que tiene la información; tiene el poder”。スペイン語で「情報を持つ者が力を持つ」という意味だ。16・17世紀の哲学者フランシス・ベーコンが残した「知識は力なり」という格言にも似ている。これが『Overwatch』のストーリーにまつわるメッセージなのか、それとも新たなゲームモードの存在を示唆するものなのか、今のところ真相を知る術はない。一つ確かなことは、スペイン語の解読文が女性名詞を用いて綴られていることだ。もしかしたら、「ソルジャー76」と深い繋がりがあるとされる謎の人物「Sombra」と何か関係があるのかもしれない。ちなみに、「Ana」と「Sombra」が同一人物であるかは定かではない。
「D.Va」と「マーシー」を大幅に強化
Blizzardは12日、『Overwatch』の最新アップデート内容をテストできる専用サーバー、PTRを解禁した。今回、新たに追加される予定の新キャラクター「Ana」がプレイできるほか、以前ゲームディレクターのJeff Kaplan氏がインタビューで示唆していた「D.Va」の大幅調整が適用されている。大きな変更点は、「ディフェンス・マトリックス」のクールダウン時間が10秒から1秒に短縮されたこと。これに伴い、新たにリソースメーターが追加された。シールド展開中に減少し、未使用の際にリチャージされる仕組みだ。空の状態からフル充填に要する時間は10秒。最大で4秒間まで展開できる。加えて、アルティメットアビリティの「自爆」が強化された。使用コストが15パーセント減ったほか、起爆までの時間が4秒から3秒に短縮。また、「D.Va」本人は爆発のダメージを受けない。これで自分も巻き込まれて死亡してしまうことがなくなった。
ほかにも、「マクリー」の有効射程距離が伸ばされたり、不人気だった「ゼニヤッタ」の「調和のオーブ」「不和のオーブ」が今までの4倍速く飛ぶようになったりと、全体をとおしてパワーバランスが見直されている。中でも、人気ナンバーワンのサポート役「マーシー」の調整に注目したい。「リザレクト」のチャージコストが30パーセント引き上げられる一方で、発動中に自身が硬直しなくなった。それだけでなく、「ガーディアン・エンジェル」のクールダウンが即座にリセットされる。混戦状態の前線に飛び込んで味方を蘇生しても、自分を犠牲にすることなく退避できる確率が高くなったということだ。加えて、「カデュケウス・スタッフ」のダメージブースト率が3割から5割へ増加。その代わりに、複数人の「マーシー」で重ねがけしても効果が上乗せされることがなくなった。「マーシー」の活躍シーンがさらに増えるのは間違いないだろう。
特筆すべきは、アルティメットゲージの仕様が変更された点だ。これまでは主に時間経過や敵への攻撃で蓄積していたゲージが、自分を回復するスキルの使用でもチャージできるようになった。それに伴い、対象キャラクターにおけるアルティメットアビリティの使用コストが、軒並み増加している。「バスティオン」「ルシオ」「ソルジャー76」は10パーセント、「ロードホッグ」にいたっては45パーセント増だ。発動までにより多くのゲージが必要になったとはいえ、回復する度にチャージしていく効果は大きいといえる。
ゲームプレイのルールにも若干の変化がみられる。勝敗を決する際のオーバータイムが20秒以上続いた場合、残り時間を示すフューズがより速く燃え尽きる仕様に。また、オーバータイム中は、プレイヤーがリスポーンに要する時間が2秒長くなる。また、ランクマッチにも大きな仕様変更がなされた。同じチーム内で複数人の同一キャラクターは選べなくなった。誰かがすでに選択したヒーローを、他のプレイヤーが重複してピックすることはできない。このほか、アップデートの内容はユーザーインターフェースやバグ修正と多岐にわたる。
これらの変更点は、PTRを導入すれば今すぐ体験できる。テストサーバーで遊ぶには、製品版を所持していることに加えて、Battle.netのアプリケーションからPTR用のゲームデータをインストールする必要がある。『Overwatch』タブの“REGION/ACCOUNT”選択欄から“PTR”を選択して、インストールをクリック。完了後、“Play”をクリックするだけだ。なお、PTRはPC版のみに対応。注意したいのは、PTRが参照するアカウントデータは、少し前の情報であることだ。最近アンロックしたコンテンツや、現在のプレイヤーレベル・ランクが、そのまま反映されるわけではない。加えて、PTR内で獲得した経験値やゲーム内マネーは、PTR以外のサーバーに引き継がれることはない。次回のパッチが適用される時期は今のところ未定だが、PTRに適用された内容は基本的に変更されることはないため、近日の解禁が期待できるだろう。