海外の主要ゲームメディア、「オンラインゲーム」の ローンチ前レビューを”保留”にする動き

[UPDATE 2015/2/12 15:00]

海外メディアEurogamerは、今後のレビューにてスコアを記述することを取りやめ、新たに3段階の評価方式でゲームをレビューすることを明らかにした。新たな評価方式は「Essential」、「Recommeneded」、「Avoid」。これにともない、オンラインゲームはローンチ後にのみレビュー、ゲームは製品版のみレビューするなど、レビューの基本ルールの変更も実施されている。Eurogamerでは今後、同様のゲームのビューを発売初日に掲載する変わりに、ファーストインプレッションを公開するとしている。

 


現地時間2月10日、海外でマルチプレイヤー対戦アクション『Evolve』が発売された。本作は『Left 4 Dead』を生みだしたTurtle Rock Studiosの最新作で、1匹のモンスターと4人のハンターが戦う変則マッチが売りの作品である。ローンチに合わせ、海外ではゲームメディアによるレビューが一斉解禁されたが、今回はそのほとんどがスコアを付けておらず、「Pending(保留中)」としている。多くのメディアが、ローンチ後の『Evolve』を踏まえてレビューする姿勢を見せている。

海外メディアではGameSpotが10点中8点、またShackNewsが10点中7点を付けた一方で、ほとんどのサイトがローンチ後の様子を見てからレビュースコアを付けると発表した。IGNEurogamerGameInformerに始まり、PCゲーム専門メディアPC Gamerや、映像特化のゲームメディアGameTrailersもローンチ後にスコアを公表する。普段は「買うべきか買わないべきか」を記すKotakuは、レビューではなくインプレッションを掲載している。Polygonも10点中8点のスコアを付けたものの、ローンチ前の暫定的なスコアであると明記している。

 


オンラインゲーム、ローンチ後の問題発生

 

『Diablo III』
『Diablo III』

多くの主要メディアが取った今回の「ローンチ後レビュー」は、ここ数年で徐々に形成されつつあったものだが、今回の『Evolve』でほとんどのサイトが一気に足並みを揃えた形だ。この動きの背景には、昨今発売された一部のオンラインゲームのローンチ問題がある。

2012年に発売された『Diablo III』は、ローンチ後にサーバー障害や進行不能バグなどが露見し、リアルマネーオークションの開始延期が発表された。2013年に発売された『SimCity』も、ローンチ直後はログインできない状況が続き、パブリッシャーのElectronic Artsは購入者へお詫びにゲーム1本を無料で進呈している。2014年を見ても、『Halo: The Master Chief Collection』や『DriveClub』といったタイトルで、ローンチ直後にログインできない問題が発生した。

一部の海外メディアは、こういったローンチ後の問題に対し、独自にローンチ後のレビューを発表するか、問題の発生や修正と共にレビュースコアの変更を発表してきた。そして今回の『Evolve』では、マルチプレイヤー対戦がメインの要素ということもあってか、ほとんどのメディアがローンチ前にレビュースコアを掲載しない方針を取っている。

 


広大なオンライン要素を発売前にレビューできるか

 

『Destiny』
『Destiny』

ログインできないといったローンチ後に発生する問題以外にも、MMOのようなRPG要素やコミュニティ性があるオンラインマルチプレイヤーゲームの場合、メディアが発売前にすべての要素をチェックできるのかという疑念がある。

昨年、BungieのCEOであるPete Parsons氏は、海外メディアGames Industryに対し、この件について話している。Parsons氏は「疑り深かった人たちが今もなおプレイしている事実がある。『Destiny』のようなゲームの登場でわかるはずだ、9時間や11時間だけ座って本作のようなゲームのレビューを書くのはあまりにも難しいだろう?」とコメント。また「もし自分がレビュワーなら、ほぼ不可能に近い挑戦だ。体験する方法がないからだよ。キャンペーンやPvPをわずかに体験できるかもしれないが、ゲーム内のすべてのアクティビティを体験する方法は無い。だから”『Destiny』のようなゲームが将来的にどうレビューされるべきか?”は、重大な疑問なんだ」と続けている。

海外メディアによるレビューを参考にしている日本国内のプレイヤー、あるいは開発者も存在するだろう。だが今後、広大なオンラインマルチプレイヤー要素のある作品のレビュースコアは、発売後しばらく待つ必要があるかもしれない。プレイヤー側も、発売後すぐに公開された速報レビューに飛びつくのではなく、ある程度の時間をかけて批評したレビューをチェックしてみよう。恐らく後者の方が”健全なレビュー”であるはずだ。

 

Shuji Ishimoto
Shuji Ishimoto

初代PlayStationやドリームキャスト時代の野心的な作品、2000年代後半の国内フリーゲーム文化に精神を支配されている巨漢ゲーマー。最近はインディーゲームのカタログを眺めたり遊んだりしながら1人ニヤニヤ。ホラージャンルやグロテスクかつ奇妙な表現の作品も好きだが、ノミの心臓なので現実世界の心霊現象には弱い。とにかく心がトキメイたものを追っていくスタイル。

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