中国業者がNVIDIA GeForce RTX 5090搭載グラボを“AI用に改造して売りさばいている”との報道。非正規仕入れからの魔改造
NVIDIAのGPU・GeForce RTX 5090搭載グラフィックボードが、中国国内の業者により「AI向け」に改造を施され流通しているという。

NVIDIAのGPU・GeForce RTX 5090搭載グラフィックボードが、中国国内の業者により「AI向け」に改造を施され流通しているとのこと。その背景には、同国に向けた機器輸出の制限などがあるようだ。
GeForce RTX 5090(以下、RTX 5090)は、NVIDIAが手がけるGPU「GeForce RTX 50」シリーズの最上位モデルだ。同シリーズは、NVIDIA Blackwellアーキテクチャや第5世代Tensorコア、第4世代RTコアなどを搭載する次世代GPU。ゲーミング用途ではあるものの、AI性能の高さもアピールされている。

今回、そんなRTX 5090を中国国内で“魔改造”するメーカーについて伝える動画が、配信プラットフォームbilibili動画にて公開。同動画について海外メディアTom’s HardwareやWccftechが報じ、注目を集めている。bilibili動画にてテック企業などを取材するインフルエンサーである阿健座谈氏が投稿した動画だ。

動画においては深センに拠点を置く「CT(超泰)」という業者が紹介。動画を見るに、CTではRTX 5090搭載グラフィックボードを大量に仕入れたうえで部品を取り出し、独自の基板に取り付けてAI用途のグラフィックボードに改造する事業をおこなっているとみられる。
なおRTX 5090搭載のグラフィックボードは、本来中国向けには輸出が禁止されている製品である。しかし動画では、ZOTACやINNO3D、PalitといったメーカーのRTX 5090搭載グラフィックボードが山積みになっており、ルートは不明ながら一定規模の仕入れがおこなわれている模様だ。
動画ではそうしたグラフィックボードの動作確認がおこなわれ、良品のみが選定されていく様子を確認可能。選定後に手作業で分解された基板から、RTX 5090のGB202ダイやメモリが取り外されていく。また製造機器によってCT独自の基板が量産されており、そこに取り外されたGB202ダイなどが取り付けられる流れだ。ゲーミング用途ではなくデータセンターなどAI分野での利用が想定されており、ブロワー(外排気)ファンかつ600Wでの連続使用が想定された設計になっている模様。梱包された箱にもAI向けであることが示されているほか、「5090 Turbo」といった名称で販売されているようだ。


不正なルートで中国向けに仕入れがおこなわれているとみられるRTX 5090搭載グラフィックボード。なおAI用途などデータセンター向けには本来、ゲーミング用途のグラフィックボードとは違い、複数のGPUを搭載する専用モデルのプラットフォームが販売されている。ただ米国の商務省産業安全保障局(BIS)は、中国を念頭にした半導体関連製品の輸出管理規則を年々強化しており、データセンター向けの製品は優先的に禁輸品となってきた。
また先述のとおりRTX 5090搭載のグラフィックボードも通常モデルは基本的に中国向けには輸出が禁止。中国向けには性能を制限したモデル「RTX 5090 D」が用意されていたが、これも規制強化を受けて販売停止。さらに性能を制限した「RTX 5090 DD」が販売予定となっている。
そうしてBISによって輸出規制が強まる傍らで、NVIDIA製のデータセンター向けプラットフォームが密輸され、中国国内のブラックマーケットで販売されているという報道もみられる(Financial Times)。とはいえデータセンター向けプラットフォームの密輸はひと際監視の目も厳しいとみられ、ゲーミング用途であるグラフィックボードまで密輸され、AI用途向けに改造されて販売されている状況があるようだ。