NVIDIA最新GPU「RTX 50」シリーズには“かえってパフォーマンスが下がる”旧作ゲームが存在。『ボダラン2』などで採用された物理演算エンジン、ひっそり「実質サポート対象外」に

2010年前後に発売された一部のゲームでは、NVIDIAの最新GPU「GeForce RTX 50」シリーズを採用する環境でパフォーマンスが著しく低下する設定項目があるという。物理演算エンジン「PhysX」がRTX 50シリーズにて実質サポート終了となったことが、背景としてあるようだ。

GeForce RTX 50シリーズは、NVIDIA Blackwellアーキテクチャや第5世代Tensorコア、第4世代RTコアなどを搭載する次世代GPUだ。1月7日に発表され、RTX 5070・RTX 5070 Ti・RTX 5080・RTX 5090の4モデルが順次販売開始されている。


パワフルな性能が注目されているRTX 50シリーズながら、過去に販売された一部ゲームに採用されていた「PhysX」は実質的にサポート対象外だという。PhysXは、NVIDIAが開発・提供しているリアルタイム物理演算エンジンだ。主に、CUDAを搭載するNVIDIA製GPU向けの機能となっており、GPUなどによるハードウェアアクセラレーションでCPUの負荷を軽減しつつ、複雑な物理演算を処理することが可能とされる。対応するゲームでは基本的に設定にて有効化することでPhysXを利用可能。衣服の揺れや、パーティクル表現といった、物理演算による表現を強化することができる。

一方でRTX 50シリーズを搭載する環境では、PhysXを設定で有効化しても、GPUでの処理がおこなわれないようだ。そのためPhysXにてGPUアクセラレーションがおこなわれるように設定されたゲームでも、GPUではなくCPUにPhysXの処理が割り当てられ、著しいパフォーマンス低下を招くという。

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たとえばあるユーザーは、NVIDIA GeForce RTX 5090 Founders EditionおよびAMD Ryzen 7 9800X3Dを搭載するPC環境で『ボーダーランズ2』をプレイしたところ、物理演算処理が関わるシーンではフレームレートが60fpsを下回ったことを報告している。同ユーザーはRTX 4090搭載の環境では120fpsを下回ることがなかったと述べており、RTX 5090にグレードアップしたにもかかわらずパフォーマンスが大きく低下したようだ。同作では武器のエフェクトや布の揺らめきなど、さまざまな物理演算にPhysXが用いられているとみられる。

ちなみに海外フォーラムResetEraではユーザーにより、PhysXによるGPUアクセラレーションがおこなわれるゲームがリストアップされている。2007年~2013年に発売された約40作品が対象となるようだ。『ミラーズエッジ』『アサシン クリード IV ブラック フラッグ』『バットマン アーカム・シティ』といった人気作も含まれている。

なおNVIDIAの公式フォーラム上でもこうした現象が報告され、スタッフが回答。回答によると、PhysXがRTX 50シリーズのGPUで演算されない背景として、RTX 50シリーズのCUDAでは、32ビット版Windows向けのソフトウェアがサポートされていないことがあるようだ。そしてPhysXが採用されたゲームは発売された年代もあってか、基本的にほとんどが32ビット版Windows向けソフトウェアとみられる(Tom’s Hardware)。実質的にRTX 50シリーズにおいてPhysXはサポート終了といえる状況となったわけだ。

『ボーダーランズ2』


主に2010年代のゲームにて採用されていた物理演算エンジン「PhysX」。作品によってはリッチな物理演算表現をもたらしていたものの、最新のRTX 50シリーズを搭載する環境ではその恩恵を受けづらい状況となった模様だ。昨今ではElectronic Artsのゲームランチャー「Origin」など、32ビット版Windows向けソフトウェアのサポートが終了される様子もみられる(関連記事)。Windowsの64ビット版への完全移行が進む中で、過去のゲームには思わぬ弊害も生じているようだ。

Hideaki Fujiwara
Hideaki Fujiwara

なんでも遊ぶ雑食ゲーマー。『Titanfall 2』が好きだったこともあり、『Apex Legends』はリリース当初から遊び続けています。

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